学科 Today

  1. HOME
  2. 学科 Today
  3. 人文学部
  4. メディア・コミュニケーション学科
  5. 授業紹介:共に育てる公害資料館

2022.08.29

メディア・コミュニケーション学科

授業紹介:共に育てる公害資料館

メディア・コミュニケーション学科の集中講義「メディア・コミュニケーション特論B」では公害の歴史と現状を知り、私たちの日常とそれがどのようにつながっているかを学びます。

二日目の授業では「みずしま財団(公益財団法人水島地域環境再生財団)」の林美帆さんをお招きし、特別講義をしていただきました。
岡山県倉敷にある「水島」という地域で発生した公害の話を伺う前に、水島にまつわる写真を見て感じたことや気付いたことを話し合う「フォトランゲージ」に学生たちは取り組みました。住宅地のすぐそばに林立するおびただしい数の工場群や、海に流れ出した油をスコップでドラム缶にすくい入れる異様な写真を見ながら、これがいつ写されたものなのか、中に写る人びとの暮らしや心情はどのようなものであったか、想像を膨らませながら意見を交換し合いました。

瀬戸内海に面した自然豊かな農漁村に、戦争のために工場が「疎開」してできたのが水島で、比較的新しい街だそうです。埋立地に誘致された多くの工場がコンビナートを形成し高度経済成長の一翼を担いますが、工場から排出された大気汚染物質や工場排水などにより、地域住民の暮らしは蝕まれていきました。まさに近代日本を凝縮したかのような街に思えます。フォトランゲージで扱った油は三菱石油水島製油所の事故により流出したもので、その量は瀬戸内海の東半分を覆い尽くすほどのものだったと聞き、「途方もない量で、手作業で回収ができたのか」「かつての姿を取り戻すまでにどれほど多くの時間と労力が必要だったのか」と学生からは驚きの声があがりました。

人々の意識も時代と共に変化し、かつての水島にあったような目に見える公害は影を潜めつつあるように見えますが、今だからこそ各地の「公害資料館」に足を運んで現在の課題について考えてほしいと林さんは話します。公害をめぐってさまざまな立場があるように、公害資料館もその運営主体や立場によりそれぞれ主義、主張が異なり、被害者に寄りそったものもあれば、「公害を克服した」とアピールするものなど多種多様なものがあるそうです。「それぞれの考えや主張が異なっても良い。一方的に情報を得るためだけに公害資料館を利用するのではなく、異なる価値観を持つ人と対話し交流するための場として活用することで『みんな』の資料館が育ち、公害が『みんな』の歴史になる。それが公害のない社会にむけての一歩に繋がっていく」と林さんは話します。

私たちは来月北九州市環境ミュージアムでのフィールドワークに参加します。
「誰が、どのような立場で、私たちに何を伝えようとしているかを見てきてくださいね」と力強いメッセージを頂きました。この目で現地をしっかりと見てきます。

林さま、本当にありがとうございました。

「メディア・コミュニケーション特論B」次回の授業の様子も是非ご覧ください。
授業紹介: 公害を身近な問題として考える

授業紹介:ボランティアガイドとともに北九州を歩くフィールドワーク

(学科Today編集担当)