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2022.09.05

メディア・コミュニケーション学科

授業紹介: 公害を身近な問題として考える

メディア・コミュニケーション学科の集中講義「メディア・コミュニケーション特論B」では公害の歴史と現状を知り、私たちの日常とそれがどのようにつながっているかを学びます。

三日目の授業ではカネミ油症の認定患者三苫哲也さんをお招きし、特別講義をしていただきました。

カネミ油症は、カネミ倉庫製の食用米ぬか油にポリ塩化ビフェニール(PCB)やダイオキシン類の一種であるポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)等が混入し、油を口にした人たちに深刻な健康被害をもたらした大規模な食品公害で1968年に発覚しました。全身の黒い吹き出物、内蔵系や生殖器への疾患など様々な症状に苦しむ被害者が続出しました。
たまたま近所の米屋から薦められて購入した米ぬか油が原因で発症し、三苫さんのご両親は認定患者となります。三苫さん自身は生まれながらに先天性心疾患を抱えた「二世患者」として育ち、幼少期から胃腸の弱さや、幻覚・幻聴などの様々な症状に苦しみました。

自身の体験を語る三苫さん

様々な症状や不安に苦しみながらも、血中に含まれるPCB等の濃度が認定基準に満たないことを理由に患者と認められていない多くの人が今でもたくさんいるそうです。
「国が定めた基準で、患者だ、患者じゃないと色分けするとしても、『毒を体に取り入れてしまった』という事実がある限り、僕らは社会的に阻害されてしまう。人権を侵害されてしまったっていう状態は、濃度なんかでは測れない。僕らが置かれている状況はこういうことなんです。」
油症患者の存在と現状を知ってほしいという思いで、「カネミ油症被害者全国連絡会」の事務局長として被害者の救済を三苫さんは訴えています。

三苫さんのお母さまの育児日記を見つめる学生たち

現在もさまざまな理由から声をあげることすらできない人たちの存在があり、そういった理由から被害の実態が見えにくくなっているという問題もあります。三苫さんのお話の中に「本当に辛いことはなかなか話ができないけど、そういったところに想いを馳せて欲しい」との言葉がありました。
「僕も、父も母もごくごく普通の幸せな生活を送っているみなさんと同じで、たまたまカネミ油を口にしただけです。誰の身にも起こりうることだし、僕たちの生き方によって、誰しもが加害者にも被害者にもなるっていうことを身近な問題として考えてほしい」と三苫さんは話します。

「ごく普通のおじさんです」との挨拶から始まった三苫さんの講義は、私たち一人ひとりがこれから公害とどう向き合っていくべきかを深く問いかけられるものでした。

三苫さん、本当にありがとうございました。

「メディア・コミュニケーション特論B」次回の授業の様子も是非ご覧ください。
授業紹介:ボランティアガイドとともに北九州を歩くフィールドワーク

(学科Today編集担当)