「はてなのてん」、ご覧になりましたか。博多弁の強調の副詞「ばり」(とても)を博多の視点から見ての番組作りがされていました。
ここでは、全国的な視野から考えてみたいと思います。
方言に対する人々の評価は時代によって変化します。明治から戦前あたりまでは、マイナス評価が続き、方言の使用が避けられる時代でした。ところが、1960,70年代あたりからは各地で方言大会が開催されたり、ドラマでも方言が出現するようになりました(NHKドラマ「おしん」など)。方言がプラス評価されるようになったのです。その傾向は今に続いています。
1990年代には方言ラップがはやりました。日本語ラップ『DA.YO.NE』(EAST END×YURI)をもとに、北海道『DA.BE.SA』、仙台『DA.CHA.NE』、名古屋『DA.GA.NE』、大阪『SO.YA.NA』、広島『HO.JA.NE』、福岡『SO.TA.I』と次々に各地の方言ラップが生まれていったのです。
方言「ばり」が生まれたのは、この頃でした。
強調の副詞「とても」が面白いのは、高年層にはあまり地域差がなく(そーとー(相当)、ものすごなど)、下の世代には地域差があることです。山口「ぶち」、熊本「たいぎゃ・まうごつ」、長崎「いじ」、佐賀「がば・がばい」、鹿児島「わっぜ」、宮崎「てげ」、大分「しんけん」。福岡県内も北九州「でたん」、福岡「ばり・ちかっぱ」、久留米「がば・がばい」、大牟田「ぎゃん・くー」など様々です。年配の人たちよりも、その下の世代のほうが地域ごとに様々な方言を使うという面白い現象です。
「ばり」もこうした流れのなかで生まれ,広がっていった言葉なのです。
方言ブームの支えもあり、この「ばり」は次の世代に定着し引き継がれていくのではと予想していましたが、最近、思わぬ動きが生まれてきました。「めっちゃ」の全国的拡大です。
関西出自のこの言葉は、あっというまに世代や場を越えて広がりつつあります。テレビでも出演者がごく普通に使っています。番組内でも、MCの村重さんが何回か「めっちゃ」を使っていました。原因は何とも言えないのですが、これは「ばり」の危機でもあります。このままいくとラーメン店での「ばりかた」にしか残らないということもあるやもしれません。
今後の博多の人々の話しぶりを見守っていきたいと思います。
参考 井上史雄『日本語の値段』2000・10 大修館書店
学科ブログ「秘密のケンミンSHOW極」報告 博多弁「好いとー」(2023・10・10)
https://www.fukujo.ac.jp/university/today/archives/5859
二階堂 整



