国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、世界とつながるビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。
先日の講義には、戦後の日本の高度経済成長を支えた繊維産業の歩みと現状、課題について、高品質のシャツの製造で知られるHITOYOSHI株式会社の竹長一幸取締役工場長をお招きして、ご講義いただきました。
講義では、同社の所在地である熊本県人吉市についてふるさと愛溢れるご紹介をいただいたのに続き、竹長工場長ご自身のキャリアの歩みと重ねながら日本の繊維・アパレル産業の変遷や近年の動向についてわかりやすく解説いただきました。竹長工場長は18歳で地元の大分県に工場を持つアパレル企業に就職されました。当時は日本で販売されているシャツの5割は日本製で、竹長工場長が勤められていた企業も大分県内に多くの製造拠点を持っていました。入社3年目に竹長工場長は人吉市に新設された工場に移られます。そのころから人件費等製造コストの上昇に伴い、繊維・アパレル産業では海外への製造拠点の移管が進みます。竹長工場長も中国の北京近郊にある工場に何度も長期出張し、技術指導に当たられました。
その後、プラザ合意(1985年)以降の急速な円高や最新トレンドを採り入れながら低価格に抑えた衣料品を短い商品サイクルで大量に販売するH&MやZARA、GAP、GU、ユニクロなどに代表されるファストファッションの伸張に伴う価格競争の激化で、日本の繊維・アパレル産業は生産量、企業数、従業員数とも縮小を続けます。中国、ベトナム、インドネシア、最近ではバングラデシュ、カンボジアなどからの低価格の製品の流入で、国内で販売されるシャツに占める日本製の比率は2020年にはわずか2.1%にまで低下しました。同じく1988年頃は約900あった国内のシャツ工場の数も約40にまで減少しました。竹長工場長が勤務されていた大手シャツ・メーカーのトミヤアパレルもリーマンショックによる景気悪化の影響を受けて2009年に経営破綻します。そこで、竹長工場長は吉國代表取締役とともに企業再生ファンドの支援を受けて同社の人吉工場を買収して、HITOYOSHI株式会社を設立されました。
HITOYOSHI株式会社は、MADE IN JAPANにこだわった丁寧なシャツ造りが評価されるようになり、また納期が短い(海外工場は通常、3か月だが、同社では1か月から対応)、ロッドが小さい(同社では一色、一サイズ5枚から対応)、仕様が複雑など、海外のメーカーが嫌がる仕事をあえて積極的に受注するなど、価格競争に対抗するために日本ならではのきめ細かいモノづくりに注力された結果、今日では人吉発の高級シャツ・ブランドとして注目を集めるようになっています。創業当初は100%OEM生産(*)からスタートしたものの、販売店との直接取引により中間マージンを省き、価格帯を抑えたことなどが奏功し、現在、年間10万~15万着のシャツを生産し、その2割が自社ブランドでの販売、残る8割がビームスやシップス、ポールスミス、ユナイテッドアローズなどセレクトショップ向けのOEM生産が占めています。
*OEM(original equipment manufacturer):他社ブランドの製品を製造すること、ないしはそうした製造を行う企業のこと
講義後には、家庭でもできるシャツの上手なアイロンのかけ方を実演しながらご教示いただき、学生の代表としてH.Sさん(福岡県立糸島高等学校出身)とM.Kさん(福岡市立福岡西陵高等学校出身)の二人が登壇し、アイロンがけに挑戦しました。
なお、これまで竹長工場長の講義を聴いた国際キャリア学科(ICD)の卒業生からは、ユナイテッドアローズ、リンク・セオリー・ジャパン、アダストリア、アーバンリサーチ、サマンサタバサジャパンリミテッドなどのアパレル・メーカーに就職する学生が出ています。以下は受講した学生の感想(代表)です。
H.Gさん(沖縄県立読谷高等学校出身)
H.Kさん(長崎市立長崎商業高等学校出身)
HITOYOSHI株式会社は、国内及び海外での生産体制を備え、伝統的な技術と革新的なビジネスモデルを組み合わせて成功を収めている会社であり、その挑戦と成長の姿勢からは大きな学びがありました。特に、日本国内での生産の重要性や顧客ニーズに応じた柔軟な対応力、コスト削減に向けた工夫といった点は、今後のビジネスにおいても重要な要素であり、非常に参考になると感じました。
K.Uさん(福岡県立筑紫中央高等学校出身)
HITOYOSHI株式会社の竹長工場長の講義からは、地域との強い結びつきや製造業における伝統と革新の両立を目指す姿勢が伝わってきました。日本の製造業が直面する様々な課題に対して、人材育成を重視する姿勢を示されている点、そして持続可能な成長を目指されている点が非常に印象的でした。
A.Sさん(福岡県立武蔵台高等学校出身)
M.Oさん(福岡県立光陵高等学校出身)
私たちは「人生100年時代」と言われる社会を迎えており、長い人生の中でどのように働き続けていくかが重要なテーマとなっています。竹長様はこの時代に働いていくうえで、特に「前に踏み出す力」「チームで協力して働く力」、そして「考え抜く力」が大切だと教えて下さいました。私も特に「考え抜く力」をどうやって養うかという点に大きな関心があり、講義を通してその重要性を改めて認識しました。考え抜く力があれば、予測困難な時代でも柔軟に対応し、課題を乗り越えることができると感じました。また、講義の最後に実際にシャツのアイロンがけとたたみ方を実践的に学んだことも印象に残りました。私はアルバイトでシャツを着ることが多く、アイロンをかける機会もありますが、これまでなかなか上手くいかず、シワが残ったりしていました。しかし、講義で教えていただいたように実践してみると、まるでお店に売っているような完璧な仕上がりになっていて、とても感動しました。ありがとうございました。
A.Rさん(福岡雙葉高等学校出身)
M.Yさん(九州国際大学付属高等学校出身)
今回の講義では、HITOYOSHIブランドのシャツを生産されているHITOYOSHI株式会社の竹長工場長が同社の仕事とは何かを説明して下さいました。HITOYOSHIは熊本県人吉市に本社工場を構える日本のシャツファクトリーで、ホームページには「伝統から学び、現代の要求と美意識を見出し、大量生産、大量消費ではない持続可能な“ものづくり”の精神や技術を次の世代に継承する」と書かれていました。講義からも同社がこれまで培ってきた技術や知識を大切にされるとともに、大量生産に頼らないで、こだわりを持ってひとつひとつの製品を生産されていることがよく伝わってきました。また、竹長工場長はこれからの課題として人材の確保と若手の育成をあげられました。若手の育成により、技術者の技を次世代に引き継ぎ、持続的なものづくりを実現させることが求められていることを知りました。
Y.Yさん(久留米信愛高等学校出身)
M.Mさん(佐賀清和高等学校出身)
R.Tさん(佐賀県立神崎高等学校出身)
今回の講義では、日本のアパレル業界の現状と課題について考えることができました。講義の最後にいただいた社会人基礎力に関するお話からは私たちが今後、活躍するためにどう行動していくべきなのか考えることができました。社会で求められる人材となるために、自分自身が社会の一員であるとの意識を持ち、自主的な行動を心がけていこうと思います。




