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2022.09.20

国際キャリア学科

(授業紹介)「Current Business」2022年度①:製造業(アパレル)-HITOYOSHI株式会社の竹長取締役工場長による講義

国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、世界とつながるビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。


 今年度最初の講義には、戦後の日本の高度経済成長を支えた繊維産業の歩みと現状、課題について、高品質のシャツの製造で知られるHITOYOSHI株式会社の竹長一幸取締役工場長をお招きして、ご講義いただきました。同社は2009年に大手シャツ・メーカーだったトミヤアパレルがリーマンショックによる景気悪化の影響を受けて経営破綻したことに伴い、吉國代表取締役と竹長取締役工場長が企業再生ファンドの支援を受けて設立された企業で、MADE IN JAPANにこだわった丁寧なシャツ造りが評価され、人吉発のブランドとして注目を集めています。

講義では、同社の所在地である熊本県人吉市についてふるさと愛溢れるご紹介をいただいたのに続き、人件費等製造コストの上昇と最新トレンドを採り入れながら低価格に抑えた衣料品を短い商品サイクルで大量に販売するH&MやZARA、GAP、GU、ユニクロなどに代表されるファストファッションの伸張で、日本の繊維産業が生産量、企業数、従業員数とも縮小を続けてきたこと、中国、ベトナム、インドネシア、最近ではバングラデシュ、カンボジアなどからの低価格の製品の流入で、1988年頃には国内で販売されているシャツの半分を占めていた日本製品が2020年にはわずか2.1%にまで低下していること、同じく1988年頃は約900あった国内のシャツ工場が現在では40くらいに減少していることなど、日本の繊維・アパレル産業を取り巻く厳しい状況について解説いただきました。

HITOYOSHI株式会社については、当初、100%OEM生産(*)からスタートしたものの、販売店との直接取引により中間マージンを省き、価格帯を抑えたことなどが奏功し、現在では年間10万~15万着のシャツを生産し、その2割から3割が自社ブランドでの販売、残る7割から8割がビームスやシップス、ポールスミス、ユナイテッドアローズなどセレクトショップ向けのOEM生産になっていることをご説明いただくとともに、2016年に工場を訪問されてから毎年、オーダーメイドのシャツを注文されている小泉衆議院議員など、同社の製品を愛用している著名人についてもご紹介いただきました。

*OEM(original equipment manufacturer):他社ブランドの製品を製造すること、ないしはそうした製造を行う企業のこと。

続いて、納期が短い(海外工場は通常、3か月だが、同社では1か月から対応)、ロッドが小さい、仕様が複雑など、海外のメーカーが嫌がる仕事をあえて積極的に受注するなど、価格競争に対抗するために日本ならではのきめ細かいモノづくりに注力されている現状について解説いただきました。また、従業員の半数を50歳以上が占めるなど高齢化が進むなかでの人材の確保、若手の育成と技術の継承など、現在、抱えておられる経営課題、さらにはベトナム企業との協力体制についてもお話しいただきました。今後の同社の目標については、旅行用トランクの工場からスタートしたルイ・ヴィトンやカバンの修理からスタートしたグッチなどの例をあげながら「モノづくりをベースにして、世界に通用する一流のファクトリーブランドになることです」と語られました。

 

講義後には、家庭でもできるシャツの上手なアイロンのかけ方を実演しながらご教示いただき、学生の代表としてM.Iさん(聖和女子学院高等学校出身)が登壇し、アイロンがけに挑戦しました。

学生たちは終始、ソフトに、にこやかに情熱を込めて話される竹長工場長の臨場感溢れる講義に真剣に耳を傾けていました。なお、これまで竹長工場長の講義を聴いた国際キャリア学科(ICD)の卒業生からはユナイテッドアローズ、リンク・セオリー・ジャパン、アダストリア、アーバンリサーチ、サマンサタバサジャパンリミテッドなどのアパレル・メーカーに就職する学生が出ています。

以下は講義を聴講した学生の感想(代表)です。

M.Oさん(西南学院高等学校出身)

竹長様の講義を聴いて、最も印象に残ったのは、HITOYOSHI株式会社では自社にしかないこだわりがあり、それを非常に大切にしていらっしゃるということです。シャツの仕立てに関して、具体的にどのような特徴があるのか調べてみたところ、私の想像を超えるこだわりがあることがわかりました。まず、HITOYOSHIのシャツは立体で仕上げられているという点です。特に、襟の形状に関しては、襟の表地と裏地の大きさを変えて裁断していらっしゃるそうです。大きさが違うものを縫い合わせることで、襟が自然なR形状になるようです。表と裏で大きさが異なるときちんと縫製できるのか疑問に思いましたが、かえってそれが立体的な仕上がりになる秘訣だと分かりました。アイロンがけの講習の際にピシッと綺麗に仕上がっている印象を受けましたが、その秘訣は襟にフラシ芯を使用している点にあるのだと分かりました。ファストファッションで出回っているようなシャツの襟の多くは接着芯を使っているようで、クリーニングを重ねることで接着芯が溶けて、襟が縮んでしまいます。対するHITOYOSHIのシャツは身生地と芯地を接着しないフラシ芯を使用しているからこそ、綺麗な状態がより長く続くようです。袖口のカフに関しては手に向って細くなる形状に仕上げており、着る人をより綺麗に見せるための工夫が為されています。一見しただけでは気がつかないところにもこだわりがあることが分かり、だからこそターゲットであるアッパー層に愛され続けているのだと感じました。ファストファッションが主流になっている今だからこそ、HITOYOSHIのような独自のこだわりを持つ唯一無二の企業が愛されていくのではないかと考えています。手作りの自社生産、立体的な襟の仕立てや肌触りの良い生地など多様な強みを持っていらっしゃるHITOYOSHIのシャツが、今後も様々な人から愛され続ける存在であってほしいと思います。

M.Iさん(聖和女子学院高等学校出身)

日本のものづくりやMADE IN JAPANの技術の素晴らしさを学ぶことができた講義でした。MADE IN JAPANが今もなお世界から高い評価を受けている理由として技術力や品質の高さが評価されているからだと理解できました。繊維・アパレル産業の現状から海外の協力工場などのグローバル展開まで学ぶことができ、知識を増やす機会になりました。講義後には、シャツの上手なアイロンのかけ方を実演していただきました。私も竹長様にご指導いただきながらアイロンがけにチャレンジしました。苦戦しましたが、明らかにこれまで自分が行ってきた時と仕上がりが違うなと感じました。教えていただいたやり方をこれから実践していきたいと思います。

R.Kさん(熊本県立第一高等学校出身)

竹長先生がおっしゃった「時代の流れに適用しないと、会社は生き残れない」という言葉に感銘を受けました。HITOYOSHIは輸入品が増えるなかで、日本製のシャツを作り続けています。その背景には様々な経営上の工夫があり、企業経営というのは目の付け所と知識が大切なのだと感じました。講義を通して、竹長先生のシャツ作りへの熱い思いを感じ、私も熱意を持てる仕事をしたいと思いました。たくさんのことを知り、就職活動にも役立つ講義で、楽しかったです。なお、会社名にもなっている人吉は熊本の南にあります。私は熊本市出身なので親近感がわき、また今、『夏目友人帳』というアニメをよく視ているので、その舞台が人吉市であると知り、嬉しくなりました。

Y.Hさん(福岡県立須恵高等学校出身)

学生からの「これからシャツ以外の商品を作る予定はありますか」という質問に対して、竹長様は「シャツだけでもまだまだ満足はしていないので、今のところありません」と答えられました。私はその言葉に竹長様、そしてHITOYOSHIのものづくりに対する姿勢と誇りを感じました。消費者として、人や環境に優しく、持続可能な会社やものを見極め、購入選択をすることが、日本の文化や技術を守る一つであると考えます。今回の講義で、仕事に対する姿勢だけでなく、私たちに求められていることについても考えることができました。

K.Fさん(福岡県立福岡中央高等学校出身)

親会社の経営破綻という困難を乗り越えて努力を重ね、人々から愛されるブランドへと成長されたHITOYOSHIは素晴らしい会社だと思いました。私ももっと広い視野を持ち、自分の知らない業界について多くのことを学び、業界研究・企業研究をしっかりと行なって就職活動に活かしていきたいです。

Y.Eさん(福岡県立山門高等学校出身)

ファクトリーブランドを目指すHITOYOSHI株式会社にはたくさんの魅力があり、これからも大きな成長の可能性がある企業であるということを講義を通して感じることができました。私もぜひ同社のような大きな可能性がある会社に就職し、人生100年時代である今、自分の人生を豊かにできる本質的な判断力を養っていきたいと思います。

M.Mさん(福岡県立京都高等学校出身)

HITOYOSHI株式会社は顧客のニーズに応え、世の中の傾向に合わせ、他方面から工夫をしてビジネスをされています。同社の成功は固定概念に縛られることなく、柔軟な考えを持つことによって成し遂げられたと思います。

R.Mさん(九州国際大学付属高等学校出身)

アパレル業界に関心を持っているため、今回の講義はとても興味深く、もっとこの業界について詳しく知りたいと思うようになりました。商品完成までの実際を知ったことで、工場から始まるブランドとして、HITOYOSHIのシャツがさらに多くの人々に知られるような存在になってほしいと思いました。

A.Iさん(中村学園女子高等学校出身)

竹長様による講義では、初めて知ることがたくさんあり、貴重な時間になりました。質疑応答の際に竹長様がおっしゃっていた大量生産にはできない、細かい作りや手作業が同社の強みであり、それが評価されているのだと思います。これは、これからの就職活動で自分をアピールしていくのに必要なことだと思います。私も他の人にはない強みを見つけ、伸ばしていこうと思います。また、講義の最後に教えてくださったアイロンがけの仕方は忘れないように自分でも定期的にアイロンをかけていきたいです。これからシャツを買うときは、HITOYOSHIの製品を買ってみようと思います。本日は貴重なお時間をありがとうございました。

M.Nさん(福岡女学院高等学校出身)

親会社の経営破綻から再スタートし、現在の成功を収められるまでには様々な困難があったと思います。そうした過程があったからこそ、信頼され、発展するブランドとしての今のHITOYOSHIがあることがよくわかりました。知らなかったことばかりで、日本の紳士シャツ・ブランドを支える企業様の貴重なお話を聴くことができて、本当に良かったです。ありがとうございました。父の日や誕生日など、何かプレゼントする機会がある際はぜひHITOYOSHIのシャツを購入したいと思います。