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2021.12.07

国際キャリア学科

(授業紹介)「Current Business」2021年度⑨官公庁:農林水産省九州農政局の小林地方参事官、大窪管理官、道辻事務官による講義

国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、世界とつながるビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。 

 

先日の講義には農林水産省九州農政局より小林地方参事官、総務部総務課の大窪管理官、そして輸出促進課の道辻事務官を講師にお迎えして、官民を挙げての輸出促進が奏功し、近年、拡大基調にある農産物輸出の状況と農林水産省の取り組み、農林水産省と九州農政局の業務、求められる人材像などについてご講義いただきました。

前半では、小林参事官より「日本の農産物輸出の状況と輸出促進施策について」と題する講義をいただきました。初めに少子高齢化で国内の市場が縮小する一方で、世界的な日本食ブームの広がりとアジア諸国を中心とする人口増加や経済発展に伴う所得水準の向上により海外には拡大が見込まれる有望なマーケットがあるという日本の農産物・食品産業を取り巻く状況から説き起こしていただき、農産物の輸出拡大に取り組む意義について、①輸出入バランスの改善、②日本の食文化の海外への普及による対日理解の増進という「国民全体にとってのメリット」と、①新たな販路拡大と農家の所得の向上、②国内価格が下落した時のリスクの軽減、③輸出を通じた国内ブランド価値の向上、④経営に関する農林水産業者の意識の改革、⑤地域経済の活性化という「産地・地域にとってのメリット」に分けて解説いただきました。

続いて、2020年には9217億円に達した農林水産物・食品の輸出の状況について、①日本全体としては品目別では水産物やアルコール飲料の輸出が多い、相手国・地域別としては地理的に近く、食文化も近い東アジア諸国が多い、②人口に比して香港向け輸出が多いのは動植物検疫などの規制が少ないためである、③九州の港等からの輸出産品としては畜産品や丸太が多い、このうち丸太は中国向け輸出が多いが、製品の梱包資材の材料などとして伝われている、④九州からの輸出産品には福岡、佐賀はいちご、ぶどう、みかんなどの果実類、長崎、大分からは水産物、宮崎、鹿児島、熊本の南九州三県からは牛肉など畜産品が多く、それぞれの地域の強みのある産品が輸出されているなど、具体例を交えながら解説いただきました。

 

農林水産省を中心とする農産物の輸出促進施策については、まず2030年までに農林水産物・食品の輸出を現在の5倍以上の5兆円とするという食料・農業・農村基本計画で示されたオールジャパンでの目標に向けての取り組みについて解説いただきました。日本政府は海外で評価される日本の強みを有し、輸出拡大余地の大きい牛肉、米、清涼飲料水など27の農林水産物・食品を輸出重点品目に定め、それぞれ目標値を設定して輸出産地への集中的な支援等を行っています。

小林参事官からは①農林水産省が推進している農林水産物・食品輸出プロジェクトとして実施されている生産現場での輸出に関する情報不足を解消するための専門家による輸出診断・訪問診断(2021年9月末時点で九州では86件実施)や産地でのグローバル対応を確立するためのグローバル産地づくり推進事業、②事業者間の連携促進のためのネット上でのマッチング、③海外の日本レストラン等を日本産食材の輸出拠点として活用する日本産食材サポーター店の展開、④日本貿易振興機構の輸出促進事業などについて、ご紹介いただきました。あわせて、動植物検疫協議や原発事故による日本食品等の輸入規制の撤廃・緩和など、農産物・食品輸出の阻害要因の除去のために行っている外国政府との交渉などについてもその進捗状況を含めご説明いただきました。そのなかで輸出拡大に取り組んでいる九州の事業者として熊本の株式会社イチゴラスと鹿児島の大吉農園の事例をご紹介いただきました。

後半には、総務部総務課で人事・採用を担当されている大窪管理官より農林水産省と九州農政局の機構や業務、公務員における職種などについてご紹介いただいたうえで、農林水産省、九州農政局で求められる人材像として、現場に寄り添った農業政策を行うためには①コミュニケーション能力(受け答えが的確にできるか、指示が伝わるか)、②主体性、積極性(仕事を自ら吸収し、発信していけるか)、③発想力、創造力(アイデアを生み出し、具体化できるか)が求められ、行政担当者としては①協調性(組織人として周囲の人とうまく連携がとれるか)、②勤勉さ(複雑な制度を理解して的確に事務を遂行できるか)、③論理的思考力(困難な課題に対して正しい結論にたどり着けるか)、④柔軟性(農林水産省の幅広いフィールドにすぐに馴染めるか)が求められるとご説明いただきました。講義の最後には今年、入省された輸出促進課の道辻事務官より農林水産省を目指した経緯や公務員試験の内容、若手職員から見た仕事のやりがいや職場の雰囲気などについてお話しいただきました。

学生たちは豊富な具体例をあげながら分かりやすく農林水産行政について解説いただく講師の方々の講義に聴き入っていました。お忙しいなか、熊本から講義にいらしていただいた九州農政局の皆様、本当にありがとうございました。以下は講義を聴講した学生の感想(代表)です。

C.Wさん(福岡県立春日高等学校出身)

農林水産省と九州農政局のビジョンを知りました。それは、生命を支える「食」と安心して暮らせる「環境」を未来の子供たちに継承していくことです。食と環境が整うことは安心につながり、そこから経済を発展させることができると思います。こうした目標に向けて農林水産省の皆様は時代の変化を見通して政策を立案し、その実現に向けて日々、業務に取り組まれていることがよくわかりました。どの職業でも時代の変化に応じて、新たなモノやコトを発見しながら成長していくことが大切だと改めて思いました。また、質疑応答での講師の方のお答えからこれから本格化する就職活動では飾ることなく、自分をみせることが大切であることも学びました。

S.Kさん(福岡県立武蔵台高等学校出身)

国家公務員にはとても固い職業であるというイメージを抱いており、働く上での楽しさについては想像もつきませんでした。しかし、農林水産省九州農政局のお仕事は地域に根ざしたお仕事や農家の方々と協力して成し遂げるお仕事などがたくさんあり、とても温かみのある職業であると感じました。生産者の方々が丹精込めて作られた産品をより多くの人に、世界の人に楽しんでいただくように、生産者の方々とタッグを組んで様々な取り組みを行なわれていることを知り、社会にとって農林水産省の方々の存在意義の大きさを実感しました。たいへん興味深い講義でした。ありがとうございました。

Y.Mさん(福岡県立福岡高等学校出身)

今回の講義を通して、日本の農林水産品・食品の輸出促進の必要性とそのための課題について理解することができました。また、九州農政局の方々が国家公務員として、国民生活に欠かせない行政サービスを提供され、スケールの大きいお仕事に携わっていらっしゃることを知ることができました。私は民間企業への就職を考えていますが、やはりスケールが大きく、かつ海外との関わる業務に携わりたいと考えています。微力ながらも日本経済を支える一員となるべく、残りの学生生活、様々なかたちで多くの学びを吸収できるよう励んで参ります。

N.Yさん(福岡県立小郡高等学校出身)

これまであまり知らなかった官公庁のお仕事についてのお話を聞かせていただき、とても新鮮でした。幅広い分野をカバーするそのお仕事にとても興味が湧きました。最後にお話をいただいた女性職員の方はもともと大学で異文化を学ばれたと聞き、より一層、身近に感じました。貴重なお話をありがとうございました。

R.Mさん(福岡県立香椎高等学校出身)

小林参事官と大窪管理官、道辻事務官の講義を聴いて、国家公務員のお仕事について理解を深めることができました。農林水産省と九州農政局のビジョン・ステートメントには「わたしたち農林水産省は、生命を支える"食"と安心して暮らせる"環境"を未来の子どもたちに継承していくことを使命として、常に国民の期待を正面から受け止め、時代の変化を見通して対策を提案し、その実現に向けて全力で行動します」とありました。講義からも農林水産省の方々の食や国民に対する熱い思いを感じることができ、とても感銘を受けました。

Y.Kさん(福岡県立浮羽究真館高等学校出身)

日本の美味しい農水産物・食品の魅力を世界に向けて発信していくことでその良さを知ってもらうことは相互理解の促進にも繋がることがわかりました。まだまだ日本には多くの潜在的な輸出産品があると思います。日本と世界を農水産物・食品で繋ぐ仕事は本当にやりがいのある仕事だと思いました。

S.Kさん(福岡大学附属若葉高等学校出身)

今回の講義で、国家公務員の仕事、特に農林水産省九州農政局の仕事について詳しく学ぶことができました。講義を聴いて農林水産省が私たちの生活に不可欠な食料の安定供給の確保、農林水産業の発展や生産者の所得や生活の向上、農林漁村及び中山間地域等の振興など幅広いお仕事をされていることがわかりました。講義の最後には就職活動やこれから働いていくうえでのアドバイスもいただきました。人事を担当されている大窪管理官は「面接ではやる気を持って自分をつくることなく、自分の素を出すことが大事だ」とおっしゃいました。また、仕事において大きな壁にぶつかったときには自分だけで抱え込まずに同僚や先輩、上司などに相談することが大事であることも教えてくださいました。この度は貴重なお話をありがとうございました。

Y.Uさん(鹿児島県立川内高等学校出身)

講義を聴き、農林水産省は農林水産業の振興のために海外におけるマーケット拡大に目を向け、生産者の支援を多角的に行われているほか、消費者に安全・安心して食品を手に取っていただけるような施策も実施されていることがわかり、非常に大切な役割を担っていると感じました。

M.Tさん(大分県立大分舞鶴高等学校出身)

農林水産省の方々とお会いする機会はとても貴重で、日本を背負ってお仕事されている方々のお話を生で聞けて、とても光栄でした。今回の講義を聴かなければ、日本産品を世界に売り出すことがいかに大変か、理解できなかったように思います。この度は貴重な講義をありがとうございました。

M.Sさん(大分県立大分雄城台高等学校出身)

農林水産省の方々から詳しくお話を伺い、国家公務員のお仕事や農林水産業の振興など今まで知らなかったことについて学ぶことができました。コロナ禍により大きな打撃を受けた企業のお話はよく聞きますが、小林参事官からは離れた場所にいる生産者の方々ともオンラインで繋がることができ、プラスになった面もあったと聞き、環境の変化に柔軟に対応されたことは素晴らしいと思いました。今回、お話を伺うことで、国家公務員の仕事や農林水産省について理解を深めることができ、本当に良かったです。

M.Tさん(長崎県立島原高等学校出身)

私は国家公務員を目指しているので、今回の講義は特に勉強になり、これからの進路の参考になりました。講義を聴いて、農林水産省は生産者に寄り添った様々な取り組みをされており、その取り組みが日本の農林水産業、食品産業を未来へ受け継ぐことにも繋がっていることがよくわかりました。講義の後も私達の質問に詳しく答えていただいたので、通常の説明会よりも深く公務員のお仕事や求められる人材について学ぶことができました。とてもいい経験になりました。ありがとうございました。