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2021.11.10

国際キャリア学科

(授業紹介)「Current Business」2021年度④:製造業-HITOYOSHI株式会社の竹長取締役工場長による講義

国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、世界とつながるビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。


 先日の講義には、日本の高度経済成長を支えた繊維・ファッション産業の歩みと現状、課題について、高品質のシャツの製造で知られるHITOYOSHI株式会社の竹長一幸取締役工場長をお招きして、ご講義いただきました。同社は2009年に大手シャツ・メーカーだったトミヤアパレルが経営破綻したことに伴い、吉國代表取締役と竹長取締役工場長が企業再生ファンドの支援を受けて設立された企業で、メイドインジャパンにこだわった丁寧なシャツ造りが評価され、人吉発のブランドとして注目を集めています。

講義では、同社の所在地である熊本県人吉市について故郷愛溢れるご紹介をいただいたのに続き、人件費等製造コストの上昇と最新トレンドを採り入れながら低価格に抑えた衣料品を短い商品サイクルで大量に販売するH&MやZARA、GAP、GU、ユニクロなどに代表されるファストファッションの伸張で、日本の繊維産業が生産量、企業数、従業員数とも縮小を続けてきたこと、中国、ベトナム、インドネシア、最近ではバングラデシュ、カンボジアなどからの低価格の製品の流入で、1988年頃には国内で販売されているシャツの半分を占めていた日本製品が2020年にはわずか2.1%にまで低下していることなど、日本の繊維・アパレル産業を取り巻く厳しい状況について解説いただきました。

HITOYOSHI株式会社については、当初、100%OEM生産(*)からスタートしたものの、販売店との直接取引により中間マージンを省き、価格帯を抑えたことなどが奏功し、現在では年間約15万着のシャツを生産し、その2割から3割が自社ブランドでの販売、残る7割から8割がビームスやシップス、ポールスミス、ユナイテッドアローズなどセレクトショップ向けのOEM生産になっていることをご説明いただくとともに、2016年に工場を訪問されてから毎年、オーダーメイドのシャツを注文されている小泉衆議院議員など、同社の製品を愛用している著名人についてもご紹介いただきました。

*OEM(original equipment manufacturer):他社ブランドの製品を製造すること、ないしはそうした製造を行う企業のこと。

続いて、納期が短い(海外工場は通常、3か月だが、同社では1か月から対応)、ロッドが小さい(同社ではミニマムで30着から受注)、仕様が複雑など、海外のメーカーが嫌がる仕事をあえて積極的に受注するなど、価格競争に対抗するために日本ならではのきめ細かいモノづくりに注力されている現状について解説いただきました。また、従業員の6割を50歳以上が占めるなど高齢化が進むなかでの人材の確保、若手の育成と技術の継承、多能工の育成など、現在、抱えておられる経営課題、さらにはベトナム企業との協力体制についてもお話しいただきました。今後の同社の目標については、旅行用トランクの工場からスタートしたルイ・ヴィトンやカバンの修理からスタートしたグッチなどの例をあげながら「モノづくりをベースにして、世界に通用する一流のファクトリーブランドになることです」と語られました。

 

講義後には、家庭でもできるシャツの上手なアイロンのかけ方を実演しながらご教示いただき、学生の代表としてS.Kさん(福岡県立武蔵台高等学校出身)が登壇し、アイロンがけに挑戦しました。

学生たちはソフトに、にこやかに情熱を込めて話される竹長工場長の臨場感溢れる講義に真剣に耳を傾けていました。なお、これまで竹長工場長の講義を聴いた国際キャリア学科の卒業生、現4年生からはユナイテッドアローズ、リンク・セオリー・ジャパン、アダストリア、アーバンリサーチ、サマンサタバサジャパンリミテッドなどのアパレル・メーカーに就職、内定する学生が出ています。

以下は講義を聴講した学生の感想(代表)です。

H.Nさん(福岡県立朝倉高等学校出身)

今回の講義を聞いて、まず国産のシャツはたった2%弱しかないということに驚きました。確かに、持っているシャツのタグを見ると中国産と書かれているのが多く、本当に輸入品が市場を占めているのだなと実感しました。竹長工場長は輸入品の増加の理由として国内での人件費等製造コストの上昇とファストファッションの伸張をあげられましたが、そうした厳しい状況のなか、親会社が経営破綻したにも関わらず、社長とお二人で新会社を立ち上げ、ここまで大きくされたことは本当に素晴らしいと思います。今回の講義から困難な状況にあってもそれを嘆くのではなく、現状を打破するために動くべきだということを学びました。これから自分もそういう姿勢を持っていきたいです。

R.Mさん(福岡県立香椎高等学校出身)

親会社の経営破綻という困難な状況のなか設立されたHITOYOSHI株式会社がここまで大きく成長を遂げられているところがとても素晴らしいと思いました。同社ではシャツ製造にあたり、伝統から学び、また現代の要求と美意識に沿い、大量生産、大量消費ではない持続可能なものづくりを行われており、その精神や技術を次の世代に継承していくという考え方にとても感銘を受けました。時代に合わせて変化し続けるところやそれを未来にまで受け継いでいくところがHITOYOSHIの素晴らしい魅力であると感じました。私はアパレルに興味があるので、もっと視野を広げて衣料・ファッション産業について学びを深めていきたいと思います。竹長先生の講義を聴き、将来に向けた新たな目標を持つことができました。何よりとても楽しい講義でした。

R.Hさん(福岡県立春日高等学校出身)

HITOYOSHI株式会社の竹長工場長の講義を聴いて、お客様が商品を購入された後のことを考えてモノづくりをされていること、伝統を受け継ぎながらも今の時代のニーズに合わせた製品を供給されていること、可能な限り価格帯をおさえて販売されていること、そして環境に配慮した生産をされていることが印象に残りました。この授業では実際に働かれている方のお話を聞くことで働くことに対する「思い」を知ることができます。インターネットで企業情報を得ることはできますが、実際に話を聞かないと、社員の方々がどのような思いでその事業に取り組んでいるのかは分かりません。これからも業界研究をしていくなかで、興味を持った会社があった時は実際に働かれている社員の方のお話を聞きに行って、「思い」の部分を知りたいと思います。この度は貴重なお話をありがとうございました。

K.Mさん(福岡県立筑紫丘高等学校出身)

受講後、家庭でHITOYOSHI株式会社の方の講義を聴いたと話したら、父も何枚か同社のシャツを持っていて、「HITOYOSHIのシャツは手の届く価格帯で、質もとてもいい」と褒めていました。購入者にこのように褒めてもらえる会社で働けることは素晴らしいことだと思います。私もぜひそのような会社で働きたいと心の底から思いました。今回の講義では、これまであまり知らなかった製造業について知り、またアイロンのかけ方も教わり、学ぶことがたくさんありました。私もいつかHITOYOSHIのシャツを着て働きたいと思います。

S.Kさん(福岡県立武蔵台高等学校出身)

今回の講義ではHITOYOSHI株式会社の竹長先生より繊維・アパレル産業についての講義を聴き、国内生産の現状と海外メーカーとの競合、そしてこれからの業界の課題や同社が目指されている方向性など、とても具体的な内容を学ぶことができました。製造業と聞くと、多種多様な機械に囲まれた工場勤務という印象がありましたが、この講義でイメージが大きく変わりました。講義後には、学生を代表してアイロンの掛け方を実習しながら教わり、アイロンがけひとつでも今まで知らなかったことばかりで、とても面白く、有意義な時間となりました。これを機に視野を広げ、業界研究を深めていきたいと思います。

M.Sさん(大分県立大分雄城台高等学校出身)

大量に作って、低価格で提供するファストファッションが流行している時代に、量より質にこだわり続けているHITOYOSHIにとても魅力を感じました。また、流通チャネルを工夫することで可能な限り価格をおさえて商品を提供されていると聞き、顧客に寄り添う魅力的なブランドであると感じました。私はアルバイトでファストファッションのブランドで働いているので、今回の講義を聴き、繊維・アパレル業界について関心をより深めました。これから自分でも調べていきたいと思います。

Y.Kさん(福岡工業大学附属城東高等学校出身)

私はゼミの研究テーマとして日本の伝統的なものの衰退について調べています。日本人ならではの職人技には世界的にも認められているものが多く、やはり日本人の丁寧さ、正確さというものは国民性で、そうした文化は大切にするべきだと思います。最近になりそのような伝統を守り続けようという活動が増えてており、その甲斐あってか日本製の良さが改めて見直されているのではないかと感じます。こうしたなか、HITOYOSHI様は「伝統から学び、現代の要求と美意識を見出し、大量生産・大量消費ではない持続可能な”ものづくり”の精神や技術を次の世代の継承する」ことを掲げ、モノづくりをベースにして、世界に通用する一流のファクトリーブランドを目指されており、とても興味を持ちました。

A.Yさん(福岡大学附属若葉高等学校出身)

今回の講義を通して日本の繊維・アパレル業界の現状と課題について学ぶことができました。授業の最初のところで竹長工場長が話された親会社の経営破綻を乗り越えて会社を立て直されたという設立の経緯はとても感動的でした。モノづくりに対する深い愛情を持っているからこそ、日本の繊維・アパレル業界は厳しい状況下でも、成長し続けているのではないかと思いました。私も愛情を持って働けるような会社で働けたら幸せだと思います。そのためにも業界研究、企業研究を進めて、就職活動を頑張っていきたいです。

A.Nさん(筑紫女学園高等学校出身)

竹長工場長の講義では、最初に人吉の観光名所などの魅力を教えていただいたので、同社がどんな町に立地して事業をされているのかイメージしやすく、地域に誇りをもって事業を行われている様子も感じることができました。今回の講義で一番、印象に残ったことは親会社が経営破綻しても諦めるのではなく、社長と竹長工場長のお二人で事業を再建されたというお話です。シャツづくりに対する思いが強いからこそできる行動だと思い、感動しました。私が就職活動をする際にもそれぞれの会社の歴史を丁寧に調べていきたいと思います。大規模な工場が多く、生産コストが低い海外メーカーと競争するために、納期が短いものやロッドが小さいもの、仕様が複雑なものなどの生産を行われているというお話も丁寧に解説していただいたおかげで、とても納得することができました。やはり日本独自の複雑で綺麗な仕様はこれから先も多くの人を引き付けると思うので、ぜひ受け継いでいっていただきたです。