「サウンド制作演習」は、録音技術の原理や歴史を学ぶ4日間の集中講義科目です。
最大の特徴は、授業の期間中は一人一台ずつICレコーダーをつねに携帯し、レクチャーの合間や授業時間外にさまざまな方法での録音を実践することです。自分の声を自分で録ることからはじまり、複数名でしゃべってみたり、環境音を録ったりと、ひとつの録音機材でも使い方次第でさまざまな音が録れることを学びます。
最終課題では、「百年後の人にむけて自分たちの〈いま&ここ〉を伝える」をテーマにした、音のタイムカプセルづくりに挑戦しました。制作にあたっては、アプリやソフトウェアは一切使いません。あらかじめ編集した音源を流すのではなく、制作のプロセスそのものを受講生同士の前で披露する「公開収録」風の形式をとります。
収録本番では、事前にICレコーダーで収録した音声を、ポッドキャスト制作用のミキサーにインポートし、音量のバランスを意識しながら番組構成にそって再生しつつ、合間をナレーションでつなぎながら番組を仕上げます。その様子を、受講生同士でお互いに聴きあいます。
やり直しの効かない一発録りならではの緊張感と、自分の声に集中してくれる聴き手がいる安心感は、画面の中で何度でもやりなおせてしまう現代的な音や映像の編集環境では生み出せないトーンを作品にもたらします。
制作テーマも、メイク、コンビニ、散歩など多岐にわたり、全員が他の受講生の音に深く聴き入っていました。録音がうまくいかず歯がゆい思いをしている場面も多々みられましたが、そうしたエラーこそ、ふだん耳にしている「音」の当たり前を考えなおすきっかけになります。
シンプルな手法の録音体験を通じて、世にあふれる音のメディアがいかに緻密なデザインやアレンジで成り立っているかに気づくとともに、話し方や聴き方そのものをつくりかえていく録音メディアの力についても理解を深められたのではないでしょうか。
(忠聡太)


