国際キャリア学科 (ICD)では、1年生を対象とした「Freshers Seminar」のなかで、世界とつながる仕事で活躍されている方々による特別講義を開催しています。先日は後期の特別講義として、国際連合人間居住計画(UN-HABITAT、国連ハビタット)福岡本部の本部長補佐官の星野幸代様をお招きして、国連ハビタットの概要と活動、そして国連ハビタット福岡本部が進めている開発途上国におけるゴミ問題解決に向けた取り組みを中心にご講義いただきました。
日本には約30の国連機関がありますが、そのうち唯一、九州にあるのが国連ハビタット福岡本部です。国連ハビタットは「すべての人に適切な住まいを提供し、都市のより良き未来のために成立された国連機関」で、SDGs(持続可能な開発目標)のうち11番の「住み続けられるまちづくりを」を担っています。具体的には、自然災害や戦争・地域紛争の後の住まいの復興やまちづくり、貧困の削減やスラムの改善、都市計画・政策・法律の整備などの支援、気候変動などに対応するための環境プロジェクトに携わっています。
講義の初めに星野様は、開発途上国が抱えている問題として、①貧困と格差の拡大、②自然災害の多さ、③戦争・地域紛争、④気候変動(地球温暖化)の深刻な影響、⑤都市の人口の増加(都市化)をあげられ、特にアジア・太平洋地域は自然災害の発生件数やその被害が多く、しかも住居やインフラストラクチャーが災害に弱い構造になっているなど、他地域よりも深刻な問題を抱えていること、またこうした諸問題は複合的に絡み合っており、社会において最も弱い立場にいる貧困層の人々に重くのしかかっているという現実についてわかりやすく解説して下さいました。
続いて、ご自身が担当されている開発途上国におけるゴミ問題の解決に向けた国連ハビタット福岡本部の取り組みについてご説明いただきました。人口の増加や都市への集中、インフラストラクチャーの不足などから開発途上国におけるゴミ問題は深刻化しています。都市から川に流れ込んだゴミが排水溝を塞いで洪水の原因となったり、デング熱など汚染した水に起因する伝染病が発生するなど、様々な問題が派生しています。
分別されないまま積み上げられたゴミが大きなゴミ山となり、それが崩落したり、溜まったメタンガスが爆発したり、火災が発生したりして、エチオピアやウガンダではゴミ山で生活しているウェストトピッカーと呼ばれる人々が犠牲になる深刻な事態も発生しています。ゴミ山から発生するメタンガスは、温室効果ガスの約1割を占め、地球温暖化の一因ともなっています。星野様は、エチオピアにおけるゴミ山の例をご紹介いただき、日本では想像もできないショッキングな現実を知ることができました。首都アジスアベバの近郊に30年以上にわたって積み上がったゴミ山は高さ50メートルに達し、多くの人々がゴミ拾いで生計を立てています。その地で育った子供たちは学校に行く機会がないため、読み書きができず、結果的に仕事も得られず、貧困は親から子へと世代間で連鎖していきます。
国連ハビタット福岡本部では、福岡市、福岡大学が有している準好気性埋立技術を活用して、それぞれの国にあった技術や材料を用いてゴミ山の問題の解決に取り組んでいます。日本の自治体の8割が採用している「福岡方式」とも呼ばれるこのゴミの埋立技術を活用すると、数年でゴミ山が植物に覆われるようになり、表面を活用して農業なども可能になります。国連ハビタット福岡本部では技術協力プロジェクトの実施に当たり、ウェストトピッカーの方々を作業員として雇用しています。それによって、ウェストトピッカーの方々は現金収入を得て、家族を養うとともに、プロジェクト終了後もそこで学んだ土木技術を活かして定職を得ることができます。その結果、子供たちを学校に通わせることができるようになり、貧困の悪循環から抜け出す人々が増えているそうです。星野様は実際に学校に行くことで、先生になる、自分のお店を持つなど、将来の夢を語るようになったエチオピアの女の子の例をご紹介下さいました。
星野様のご講義を聞いて、安心な住まいがあり、安全な水が当然のように飲め、普通に教育を受けるなど、私たちにとっての「当たり前」が得られていない国や地域が多くあるという世界の「現実」を実感することができ、考えさせられることが多くありました。また、その解決に向けた国連ハビタット福岡本部と星野様の取り組みからも多くのことを学ぶことができました。ゴミ問題も含め、開発途上国が直面している問題は日本にいる私たちとは決して無関係ではないこと、そして身近なことからできることがあることに気づかされました。星野様、たいへんお忙しいなか、心を打つ貴重なご講義をありがとうございました。
以下では、本講義を受講した1年生の感想(代表)をご紹介します。
C.Mさん(福岡県立宗像高等学校出身)
開発途上国にはゴミ回収・処理の仕組みが整っていない国が多く、国によっては巨大なゴミ山が形成され、爆発や火災、崩落事故によって多くの命が失われているという現実に強い衝撃を受けました。ゴミ山から発生するメタンガスは地球温暖化の大きな要因の一つとなっており、ゴミ問題が環境問題と直結していることを実感しました。そのなかで、福岡で生まれた「福岡方式」が世界各国で活用され、ゴミ問題の解決に貢献していることを知り、日本の技術や経験が国際社会において大きな役割を果たしていることに感動しました。講義を通して国際協力は特別な人だけが関わるものではなく、私たち一人ひとりの行動とも深く結びついていることを学びました。今後は世界の課題を自分のこととして捉え、身近な行動からSDGsに貢献できるよう意識していきたいです。
Y.Yさん(福岡県立筑紫中央高等学校出身)
世界の環境改善に向けた重要な取り組みが福岡を起点に行われていることに誇りを感じました。これまで都市問題について深く考える機会があまりありませんでしたが、星野先生の講義を聴き、世界にはまだ安全な住居や水へのアクセスが十分でない国や地域が多くあるという現状を知り、国際的な課題に目を向ける必要性を強く感じました。都市づくりは専門的で難しいものだと思っていましたが、その根底には「人々の生活をより良くする」というシンプルで温かい想いがあることを知り、この分野に興味が湧きました。今回の学びをきっかけに、国際協力についてさらに理解を深め、身近なところから自分にできることを考えていきたいと思います。
M.H さん(福岡県立小郡高等学校出身)
講義を通して、国連ハビタットは緊急支援だけでなく、長期的な視点からインフラストラクチャーやコミュニティの再建を支えており、人々が再び安心して暮らせる環境をつくる大切な役割を担っていることを知りました。特に印象的だったのは、国連ハビタットが単に「住居を再建する」だけでなく、都市計画や法律の整備などを通じて、持続可能な社会の形成を支援していることです。住む場所だけが用意されても、交通機関や水・電気、教育などの環境が整っていなければ、安全で安心できる生活は成り立ちません。生活基盤の整備を包括的に支援する取り組みは、人々の未来にまで寄り添った活動だと思いました。住まいはすべての生活の土台であり、人の尊厳にも深く関わるものです。だからこそ、住環境の改善は人々の希望を取り戻す力になると感じました。安全で住み続けられるまちづくりを実現するためには、私たち自身が関心を持ち、行動していくことが必要だと強く思いました。
N.S さん(福岡県立小倉南高等学校出身)
M.Y さん(福岡市立福岡西陵高等学校出身)
K.I さん(福岡市立福岡西陵高等学校出身)
A.Nさん(福岡市立福岡女子高等学校出身)
H.Yさん(熊本中央高等学校出身)
国連ハビタットでは、自然災害や戦争・紛争によって被害を受けた国・地域のインフラストラクチャーや住宅の復興を支援しています。こうした取り組みのうち、星野様が特に詳しく説明して下さったのはゴミ問題の解決支援でした。国連ハビタット福岡本部では、環境汚染を防ぎ、低コストで安全なゴミの埋立処理を可能とする「福岡方式」を採用し、開発途上国におけるゴミ問題の解決に貢献しています。その取り組みでは、ゴミ山で暮らす方々が子供たちを学校に行かせることを条件に雇用されています。それは、子供たちに教育を受ける機会を与えることで、その未来を照らし、人々の生活の質を長期的に向上させることを考えたとても素晴らしい取り組みであると思いました。
M.Mさん(筑紫女学園高等学校出身)
世界には、自然災害や戦争・紛争、都市化と気候変動による環境問題が深刻な地域が多くあります。国連ハビタットはそのような国・地域で被災した住居やインフラストラクチャーの再建を支援しており、復興に必要な資金や技術を提供する一方で、現地の人が自分たちの力で再建に携わる仕組みを構築しています。講義では、世界のゴミ問題の現状について初めて知ることが多くありました。海洋プラスチック・ゴミの問題が深刻になっていることは知っていましたが、国によっては考えられないほどのゴミ山が積み上がり、それによって様々な問題が引き起こされているという現実を知りました。海洋プラスチック・ゴミは都市から発生し、海へと広がって甚大な被害へとつながっています。日本企業は様々な商品を海外で生産して輸入していますが、途上国で生産した製品が輸出できる基準に満たない場合は廃棄され、これもゴミ問題の深刻化につながっています。こうした世界の現状を知ったことにより、私自身も小さな行動から振り返ってみようと思いました。世界の現状を知ることの必要性を痛感した講義でした。
Y.Tさん(筑紫女学園高等学校出身)
講義のなかで特に印象的だったのは、国連ハビタット福岡本部の活動範囲が非常に広く、アジア・太平洋地域を中心に自然災害や紛争からの復興、そして後回しになりがちなゴミ問題など、多様な課題に取り組んでいるということです。自然災害が多い地域での住居再建や戦争・紛争で住まいを失った人々の生活再建、さらには都市化にともなう廃棄物管理の改善など、どれも日本に住んでいる私たちにも直接、関わる問題です。日本も地震や台風の被害が多く、安定した住環境を確保する難しさは他人事ではありません。ゴミ問題も都市部では深刻さを増しており、世界と日本の課題が実は地続きになっていることに気づかされました。星野先生がこの講義の後、西アフリカの国への支援に向かうと話されていたことも強く印象に残りました。世界各地の課題に現場で向き合う姿勢や行動力は簡単に真似できるものではなく、尊敬しました。ここ福岡からでも国際貢献につながる仕事ができるという事実は、自分自身の進路や将来の可能性を考えるうえでも大きな刺激となりました。
H.Fさん(九州産業大学付属九州産業高等学校出身)
国連ハビタットの活動は、開発途上国の人々の生活の質を高めることを大切にしているという印象を受けました。都市が発展することで様々なことが便利になる一方、貧富の格差の拡大や環境問題など新たな課題も生まれています。そのような問題に向き合いながら、長い時間をかけて、より良い街づくり、住まいづくりを支援していく姿勢がとても印象的でした。今回の講義をきっかけに、ニュースや世界の環境問題、都市問題にも目を向け、自分にできることを考えていきたいと思います。
M.M さん(福岡工業大学附属城東高等学校出身)
R.M さん(ルーテル学院高等学校出身)
H.H さん(佐賀清和高等学校出身)
C.Dさん(博多女子高等学校出身)
「Freshers Seminar」




