先日の第二回講義には、鹿児島の農家や自治体と協力しながら「天然由来成分100%、アルコール、ケミカルフリー」のナチュラル化粧品を製造している株式会社ボタニカルファクトリーの黒木靖之社長を講師にお招きしました。黒木社長は食品メーカーを中心に様々な職を経験された後、化粧品関係の事業で独立されて、企業向けの企画提案や商品開発のお仕事を始められました。その後、お嬢様がアトピー性皮膚炎になられたことを機に、アルコールや化学物質などのケミカルな成分に頼らない、ナチュラルな化粧品を作りたいという思いで、出身地である南大隅町でボタニカルファクトリーを起業され、廃校になった小中学校の校舎を活用して化粧品工場を設立されました。現在では、月桃やホーリーバジルなど南大隅の植物資源を活かしたナチュラルな製品が注目され、2021年には「サスティナブル・コスメアワード」のシルバー賞も受賞されています。他の企業からの受注生産も多く手がけられており、来年にはフランスのブルターニュ地方のギブリーに初の海外工場も設立されます。
「自然豊かな地方が主役 エシカル&サステナブルビューティーについて」と題する講義のなかで、黒木社長は初めに同社が立地する南大隅町についてご紹介いただき、本土最南端の地で、廃校となった学校を活用して、化粧品の生産を始められた経緯についてご説明いただきました。続いて、講義のテーマにある「エシカル」とは何か、解説いただきました。「エシカル」とは、その製品が作られるために必要な環境や作っている人の労働環境などに気を配ることで環境保全や社会に配慮する意味と捉えられ、世界的な化粧品メーカーではその商品の何がエシカルで、何がコアバリューなのかをアイコンで示しています。黒木社長はボタニカルファクトリーのコアバリューとして、「地産原料から生まれた自然由来成分100%の化粧品」をあげられ、具体的な開発事例としてホーリーバジルや月桃、芳樟、ティーツリー、レモングラス、パッションフルーツ、たんかんなどを原料とした製品をご紹介いただきました。同社では厳しい基準により食べられるものの廃棄処分にせざるを得なかった果物を地域の農家から買い入れて原料として活用されており、黒木社長は「農業と連携したナチュラルコスメには地域に産業を興すエッセンスが詰まっています。地方にはまだたくさんの宝が眠っており、それは日本の未来の希望です」と熱く語られました。また、国際基準をクリアした再生プラスチック100%のボトルの採用についてもご紹介いただきました。
続いて、2020年に米国で盛り上がり、世界的に広がった「ブラック・ライヴズ・マター運動」を機に、従来の「白い肌は美しい」から「健康肌こそ美しい」へ転換し、欧米の主要化粧品メーカーが製品ラインから「美白」化粧品を除くようになった「世界の美の潮流」についてご説明いただいたうえで、化粧品業界における「美」の再定義の動きについてわかりやすく解説いただきました。100年前の辞書には「視覚、聴覚、知性、美的価値、道徳観を満足させる性質のこと」と定義されていた「美しさ」がグローバル化した欧米の美容業界などの影響でもっぱら視覚的な満足感を与えるものと捉えられるようになった結果、外見を人と比較し、自己否定感から心身に悪影響を及ぼすなどの弊害が強くなっていることなどを踏まえ、近年、化粧品業界では自然に反する方法で到達した美しさから脱却し、①自然でホリスティックなものを求め、②女性のニーズや感情、感じ方が最も強く反映し、③多種多様な文化のあらゆる人種が美の対象となるという「美しさ」の再定義が始まっていることを説明いただきました。講義の最後には、学生たちの関心が高い美肌のために必要なスキンケアの基本について、約4000人にヒアリングされた結果をもとに、従来の化粧品と同社のようなナチュラル化粧品の違いを比較しながら詳しく解説いただきました。
化粧品業界に関する解説から起業、地域振興、農業との連携、エシカルでサステナブルなものづくり、そしてスキンケアの基本まで、90分の授業時間が短く感じられるような充実した講義に学生たちは終始、真剣な表情で聴き入っていました。以下は、受講した学生の感想(代表)です。
S.Aさん(沖縄県立向陽高等学校出身)
事前学習でボタニカルファクトリー様のホームページを拝見した際に、「廃校となった小学校の跡地を化粧品工場にした」とあり、なぜそうされたのかが気になっていました。講義のなかで、黒木社長はその理由を「消費者が抱く学校のイメージを大切にした」と話されました。学校のイメージには、あたたかい、活発、健やか、純粋、無垢などがあり、同社の製品を消費者がイメージしやすくなることに繋がっているそうです。イメージとその商品がリンクした時に感動の相乗効果が生まれ、学校の歴史がモノづくりの信頼性とリンクすることで安心感を期待することができるとありました。お客様の信頼性を得ることはとても大切なことなので、このようなマーケティング戦略が役立つのだと学ぶことができました。また、同社は地域の規格外となった農産品を原料として活用されており、とても環境に優しいモノづくりだと思いました。私の祖父も沖縄で農業をしていて、野菜や果物を出荷していますが、少しでも色が変わっているだけで売りものにすることができなくなってしまうため、自宅で消費したり、近所の方々に配るなどしていました。同社のような活用方法があることを知り、とても興味を持ちました。私の故郷の沖縄と似ている植物が原料になっていて、本当に驚きました。
R.Tさん(佐賀県立神崎高等学校出身)
H.Hさん(活水高等学校出身)
廃校となった学校の校舎や規格外品となった農産品を再利用する取り組みから、黒木社長が南大隅町とその自然を心から大切にされていると感じました。少子化、過疎化の影響で廃校が増えるなか、思い出の詰まった学び舎が残り続け、多くの恵みを作り出すことは、地元の人にとって嬉しいことだと思います。また、大切に育てた農産物を黒木社長が再利用して、新しい価値を生み出されていることは、農家の方々にとっても喜ばしいことであり、大きな励みになると思います。黒木社長のビジネスには、地域の発展と人々への思いやりが詰まっていると思いました。
K.Uさん(福岡県立筑紫中央高等学校出身)
講義を通して、私は黒木社長が提唱される自然との共生やサステナブルなビジネスのあり方にとても感銘を受けました。社長が目指されている方向性はビジネスの枠を超えたものであり、地元の資源の有効活用と環境に配慮した製品づくりを中心に据えた事業展開は現代社会が直面している問題に対して具体的な解決策を示していると思いました。社長の言葉からは、持続可能な事業の発展を実現するためには短期的な利益を犠牲にしてでも長期的な視野で事業を展開する必要があるという強い信念が感じられました。また、ご紹介いただいたボタニカルファクトリー様の製品開発プロセスでは、素材選びから製造工程に至るまで、徹底的に環境に配慮したアプローチが採用されていることが印象的でした。こうした取り組みは他の業界にも波及効果をもたらす可能性が高く、非常に重要であると感じました。黒木社長の講義は私にとってサステナブルなビジネスの未来像を具体的に描く貴重な機会となりました。
K.Nさん(福岡県立武蔵台高等学校出身)
黒木社長の講義を聴いて、ボタニカルファクトリー様は地域に根ざしつつ、その活性化にも貢献している点が素晴らしいと思いました。特に、小学校の跡地をあえて化粧品工場として活用するというアイデアにも強い感銘を受けました。私は最初、建設コストが抑えられるからという実利的な理由しか思いつかなかったのですが、黒木社長は消費者が持つ学校に対する懐かしさや安心感を商品イメージと結びつけ、製品が消費者に届く際に「感動の相乗効果」を生み出すことを期待されているとのことでした。消費者が学校に抱くポジティブなイメージを上手に活用し、そこから商品への信頼性と安心感を創出するというアイデアは、私にはまったく思いもよらないものでしたが、改めてその戦略に強い印象を受けました。これは、ブランド価値や顧客の心に寄り添う高度なマーケティング手法になっていると思いました。講義を通して、エシカルなビジネスの重要性とその実践方法は業界やビジネス形態に関わらず共通している部分が多いと実感しました。どの事業分野においても、倫理的な行動と持続可能性を考慮することが企業の成功と社会への貢献の両立に繋がるという学びを得ることができました。
Y.Kさん(福岡県立宗像高等学校出身)
黒木社長の講義では、初めて知ったことや勉強になったことがたくさんありました。まず、講義の題目にもあるエシカルという言葉です。その物が作られるために必要な環境や作っている人の労働環境などに気を配ることで、環境保全や社会へ配慮するという意味が込められていることを知りました。廃校となった学校を工場にしたり、規格外品となった農産品を活用にしたりと、黒木社長の行動力にとても胸を打たれました。そして、はっとさせられたのが美しさの定義です。私も視覚的な満足感を与えるものだと思い込んでいましたが、美しいものは視覚的だけでなくたくさんあるなと気づくことができました。さらに、ナチュラル化粧品と一般の化粧品の違い、普段、何気なく使っている化粧水とクリームの成分の違いなど、日常生活の中で参考になる情報が盛りだくさんで、とても興味深かったです。私の祖母や母がオーガニック系が好きなので、いただいたサンプルをプレゼントしてあげようと思います。
S.Tさん(福岡県立春日高等学校出身)
W.Dさん(福岡県公立古賀竟成館高等学校出身)
黒木社長の講義を通じて、エシカルでサスティナブルなビジネスが今後の日本の地域経済において重要な役割を果たすことを再認識しました。特に、地域資源を活用しつつ、環境や社会に貢献するビジネスモデルは、持続可能な未来を築くための重要なステップであり、企業と地域が共に発展する道筋を示していると思います。
N.Tさん(八女学院高等学校出身)
H.Kさん(東九州龍谷高等学校出身)
黒木社長は製品の製造過程だけでなく、価格設定や利益計算についても詳しく説明して下さいました。良い製品を作るだけでなく、それを持続可能なビジネスとして成り立たせるためには様々な工夫が必要であることを学びました。特に、小規模な生産体制でコストを管理しながら質を落とさずに製品を供給するには大変な努力と創意工夫があることを理解しました。今回の講義を通じて、ボタニカルファクトリー様の製品の背景にある信念や努力に触れたことで、黒木社長と同社に対する敬意が一層、高まりました。



