現代文化学科 能勢卓准教授の著書『アメリカの声をひろう――言葉で闘う語り手たち』(ナカニシヤ出版, 2022年）がこの度刊行されました。

【能勢先生からのメッセージ】
　現代文化学科所属教員の能勢と申します。専門はアメリカの言語文化(文学や演劇や映画)です。

　今年の春に『アメリカの声をひろう――言葉で闘う語り手たち』という本を出版しました。

　大学でわたしの講義を受けている学生の課題コメントの内容を読んだ時に、学生に当事者の生の声を読むことでアメリカ社会が歴史的変遷の中で直面してきた様々な問題に対し共感と理解を持ってもらえたらと思い、この本を作成しました。

　この本では、1650年に出版された作品から激動の19・20世紀に書かれた作品、そして2019年と比較的最近書かれた作品までを掲載しました。全てアメリカの人が書いた作品ではありますが、時代も人種も異なる人々が執筆した作品です。しかし本書で掲載したエッセイや詩の共通点は、それぞれの時代のなかで生き、その時代の空気感とともにある、一つの時代のアメリカを言葉で切りだしているという点だと思います。そしてこれらの作品を通して、2020年代の日本で生活しているわたしたちの価値観から見るとあたりまえのことがまったくあたりまえではない状況に対して声を上げている人々の言葉に触れることができると思います。

　わたしたちは一つの時代のなかで一つの人生しか経験することができません。その一つの人生経験のなかでわたしたちが感じたり考えたりできることは非常にかぎられています。

　有限の範囲のなかの経験しか得られないからこそ、わたしたちとは違う時代や場所で生きた人々が発した言葉に注目することで、自分たちがこうだと思っている考え方の枠組みを少しでも広げていってもらえるとよいのではないかと考えています。