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2020.07.29

心理学科

不確かな明日を楽しんで生きる(前編)

 遠隔授業が続く毎日ですが、女学院ではチャペルの時間を大切に過ごしています。毎週、WEBを通してチャペル講話のテキストと講話をする教員の動画がパイプオルガンの音色とともに配信されています。

 今日と来週の学科Todayの記事は、心理学科の教員、奇惠英先生が学生や教職員に向けて発せられたメッセージを2回にわたってご紹介します。今日は前編です。


 今日はみなさんに、私にとってとても大切な人を紹介したいと思います。サラちゃんです。

 今、30代になりましたが、生後 3 か月の時に交通事故によってお母さんを亡くし、本人は頭部外傷により重度の障害を負いました。それから私と一緒に生活している姪子です。サラちゃんは私の人生を劇的に変えてくれました。たった一つの出会いで、人の人生は大きく転換することがあります。そして、そのたった一つの出会いは必ず誰にでもあります。今まであったかもしれないし、これから先、いつでもありえます。

 サラちゃんはたくさんのことを私に教えてくれましたが、最初入院しているときのことを今でも時々思い出します。少し状態がよくなると、たくさんの方々がお見舞いに来てくれました。宗教が違い、仕事が違い、社会的地位も違うその方々が不思議にも同じことを言っていました。簡単に、直接的に解釈すると、“可哀そう、なんて不幸な、天国でママが待っているよ、神様が引き取ってくれるよ” ということでした。それをそばでずっと観察していた私は、一つのことに気づきました。“あー、この方々が根本的に共通してもっているのは、未来への不安なんだ”。

 今・ここでしか生きられない人は、常に不安につきまとわされる運命にあります。今・ここでしか生きられない人にとって、人生のすべては初めてのことだし、一寸先が不確かなものです。ですから、人は先々のすべてのことを、あるいは、見えない全てのものをできるだけ見えるようにして、確実なものにして、それが変わらないで継続してほしい、ということを願い、努力しています。安定した職業、安定した生活が可能なお金、健康維持などです。そして変化を恐れます。よりよい道、といっても、行ってみないとわかりません。だから、不満を言いながらも、今の安定を揺さぶる変化には本能的に抵抗します。

 そんな人にとって、このたびの COVID-19 は、まさに本質的不安を突くものです。見えなくて、防ぎようがないし、いつ終わるかわからないし、収束したとしても以前の生活様式には戻れない。新しい生活や考え方へと変化しないといけない、と世界中で議論しています。

 

 この続きは来週の学科Todayでまたお伝えします。