
国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、国際ビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方々を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。
第一回の講義では、長年にわたり新日本製鐵(現在の日本製鉄株式会社)で活躍されてきた北九州国際技術協力協会の工藤和也参与をお招きして、世界と日本の鉄鋼産業の発展と現状、課題についてご講義いただきました。工藤先生は1962年に新日本製鐵の前身である八幡製鐵株式会社に入社され、戸畑の最新鋭工場の建設・運営に携わるなど技術者、そして経営者として活躍されたほか、英国や中国、ロシア、イタリアなど様々な国の製鉄所での技術・経営指導や日本の鉄鋼関連企業の海外市場開拓支援などにも携わってこられました。講義では、最初に①安価(グラム当たりの価格では木材やミネラルウォーターよりも安い)、②強い(チタンやアルミニウムよりもはるかに強度が大きい)、③原料が豊富(最も多い金属元素で地球の重量の三分の一を占める)、④加工性に優れ、用途が広く、あらゆる産業で使われている、⑤リサイクルしても品質劣化が少なく、ほぼ永久に使える(自動車用鋼材のリサイクル率は95%)、⑥途上国の生活水準の向上に伴いさらなる需要増加が見込まれる、という素材力、影響力、将来性の三点からみた「鉄の魅力」について豊富な実例をあげながらご紹介いただきました。


続いて、日本の鉄鋼業について、ペリーの黒船来航による危機感から始まった幕府と雄藩による反射炉建設から説き起こしていただき、欧米の先進制度・技術の導入を目指して派遣された明治初期の岩倉使節団、1901年の官営八幡製鉄所の完成など、その近代の歩みについてご説明いただき、①第二次世界大戦後の6社体制(八幡製鐵、富士製鐵、日本鋼管、神戸製鋼所、住友金属工業、川崎製鉄)による再建と拡大を経て、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の3社に高炉メーカーが集約され、粗鋼生産量の8割弱がをこれら高炉メーカーが占め、残りを電炉メーカーが占めていること、②鉄鋼業の生産量は世界2位、国内出荷額は18兆円、従業員数は22万人に達していること、③石油ショックを乗り越える過程で省エネルギー技術が蓄積し、現在、エネルギー効率では世界トップであり、海外にもその技術が移転されていること、④電磁鋼板や鉄道レールなどハイグレード製品では他国の追随を許さない高度な技術を有している一方で、ローグレードやミドルグレードなどでは価格競争力を喪失し、シェアを失ってきたことなど、その現状や課題についても解説いただきました。
世界の鉄鋼業については、19世紀までの英国などの西欧諸国、20世紀以降の米国、1970年代以降の日本、そして2000年代以降の中国と、世界の鉄鋼業をリードする国が変遷してきたことを解説していただいたうえで、①カラチのスクラップ会社からスタートしたミタル(現在のアルセロール・ミタル)が中心となり、経営規模拡大による量的優位性の確保を目指し、世界規模での再編(鉄鋼メーカーの集約化)が急速に進んでいること、②1970年代以降、30年にわたってほぼ横ばいで推移してきた世界の粗鋼生産量が2000年代以降、新興国、特に10年間で6億トンも粗鋼生産量を拡大するなど急成長を遂げた中国の鉄鋼業の生産急増で大幅に増加してきていることなど、大きく変動するその現状についてわかりやすくご説明いただきました。中国の鉄鋼業については、膨大な過剰設備・人員を抱え、今後、市場の攪乱要因になりうること、急速な生産量の増加が深刻な大気汚染の要因になっていることなど、その課題についても解説いただきました。学生たちは国内外での豊富な実務経験に基づき、優しく、わかりやすく、しかも情熱をこめて解説される工藤先生の講義に聴き入っていました。3年前の工藤先生の鉄鋼業に関する講義を聴いた国際キャリア学科一期生(2018年卒)からはM.Mさん(江戸川女子高等学校出身)が日本製鉄株式会社に就職し、現在、君津製鉄所で勤務しています。また、昨年度の講義を聴き、製造業に強い関心を持った現4年生のK.Mさん(福岡県立春日高等学校出身)はヤマハ発動機から内定をいただきました。工藤先生は「私の講義を聞いていただいた学生さんのなかから、私と同じ鉄鋼会社や製造業企業に就職する人が出たことをとてもうれしく思います」と喜ばれていました。
以下は講義を聴講した学生の感想(代表)です。
R.Aさん(福岡県立小倉西高等学校出身)
私は北九州出身のため周りには八幡製鉄所に勤めている方が多く、鉄鋼業について学ぶ機会もありましたが、工藤先生は鉄鋼業の歴史、現状、課題、国際比較などについて短い時間のなかで分かりやすく教えて下さったので、より深く理解することができました。貴重な講義をありがとうございました。H.Iさん(福岡県立香椎高等学校出身)
今年8月に参加した国際ビジネス・フィールドワークで北九州地域の製造業、特に鉄鋼業に対する関心を深めていましたので、工藤先生の講義はとても勉強になり、有意義な時間を過ごすことができました。また、長年にわたり海外での技術指導に携わってこられた工藤先生のお話を伺い、海外で活躍された方には一つの道を究めていらっしゃる方が多いことにも気づきました。本当に勉強になることを多く学ばせていただきました。Y.Kさん(福岡県立八幡南高等学校出身)
高校時代に八幡製鉄所について学ぶ機会がありましたが、今回の工藤先生の講義ではより広く日本の鉄鋼業の発展の歴史から現状、課題までを詳しく学ぶことができました。ありがとうございました。N.Tさん(大分県立国東高等学校出身)
工藤先生の働き方、生き方についてのお話を聞き、グローバルな視野を持ち、グローバルに対応できる人材になるには何が必要なのか、考えさせられました。私も海外経験の機会や異文化に触れる機会を積極的に持ち、多角的な視野を持つ人材になりたいと思います。そして、工藤先生のように世界に活動の幅を広げ、社会や地域に貢献していきたいです。M.Kさん(福岡舞鶴高等学校出身)
世界の人々の生活を支える素材である鉄の凄さや魅力、可能性を学び、その発展を担ってきた先人の方々の努力について知るとても貴重な講義となりました。何気なく暮らしている今この瞬間にも多くの方が努力し、新たな技術を生みだしているのだと考えると、とても感動しました。Y.Tさん(熊本信愛女学院高等学校出身)
鉄鋼業に対する関心が深まりました。鉄鋼業の今後の課題や各国の状況について自分でも深く学んでいきたいと思います。そして、工藤先生にご教示いただいたことを私自身の就職活動にも活かしていきたいです。M.Hさん(神村学園高等部出身)
工藤先生の講義では多くの学びがあり、日本の経済や産業の将来に関する重要なお話も聞くことができました。日本と世界の鉄鋼業について、自分でも勉強していこうと思います。M.Fさん(福岡工業大学附属城東高等学校出身)
身近にある素材の鉄がどのように生産され、どのような歴史を辿って産業として発展してきたのかを深く理解することができました。また、日本と世界の鉄鋼業のビジネス面、環境面での課題についても考える良い機会となりました。とても興味深く、勉強になる講義でした。M.Mさん(福岡県立筑紫中央高等学校出身)
私たちの身の回りに豊富にありながら、意外と普段はあまり考えることのない鉄の魅力を知り、日本と世界の鉄鋼業の歴史と現状について理解を深めることができました。次回からの講義も様々な業界で活躍されている方のお話を聴くことができるため、とても楽しみにしています。
ICD *I Can Do*




