■ 文法は面白い:across vs through
今回は前置詞の「across」と「through」に焦点をあてて考えてみましょう。①の文はどちらも「歩いて草むら(草原)を通ってきた」という意味ですが、across / through のどちも使用可能です。ただ、意味(イメージ)が異なります。さて、どう違うのでしょうか。考えてみてください。
①-1: I walked across the grass.
①-2: I walked through the grass.
この2つの前置詞を説明する場合、次のような例文が使われます。
②-1: I ran across the street.(through は使えません)
②-2: I came in through the front gate.(across は使えません)
さて、違いが分かりましたか?一般的には、平面的(二次元的)な見方をする場合に「across」が、立体的(三次元的)な見方をする場合に「through」が使用されます。②の例では、「道を渡る」場合の「道」は平面として捉えていますが、「正門から入った」の「正門」は立体的な捉え方をしています。
そうすると①の違いが分かりましたね。この場合前置詞の目的語は、どちらも同じ単語です。何が違うかといえば、「草の丈」が異なるのです。草の丈が低い場合は across が使われやすく、草の丈が高くなると(たとえば膝元とか)through が使われやすくなります。視点によって表現に違いが出るというのは、興味深いと思いませんか?
応用編として最後にもう1つ。私たちは立体的なものの捉え方をすると「閉塞感」を感じませんか?③-2は比喩的に使われています。
③-1: We drove through a tunnel.(車でトンネルを抜けた)
③-2: I lived through difficult times when I was young.(若い頃は辛かった)
もうお分かりのように、③では across は使えません。また、なぜ「困難や辛い経験」に対して through が使われるのかご理解頂けたでしょうか。「閉塞感」のイメージと「困難」なイメージの間に共通点があるからです。
ちなみに、日本語では誰かから無視されたときに「スルーされた」と言いますが、これも英語の through から来たのでしょうか。英語では "I was brushed off." と言うようです。文法も深掘りするとおもしろいですね。