国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、ビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。 先日の講義には、中小企業の資金調達を支援する公的金融機関である福岡県信用保証協会から、総務企画課の定末佑介課長と脇川様、山口様をお招きし、信用保証協会の業務と公的金融機関に求められる人材などについてお話しいただきました。
定末課長は「皆さんは福岡県信用保証協会をご存知ですか」という問いかけから始められ、信用保証協会の役割について「中小企業が抱えている大きな課題である資金調達を支援する、具体的には中小企業が事業に必要な資金の借り入れをする際に公的な保証人となってスムーズな資金調達ができるようにサポートする公的機関です」と述べられたうえで、信用保証協会が保証する保証付き融資の仕組みや流れについて順を追ってわかりやすく解説いただきました。
景気が低迷し、悪化すると、通常、中小企業の資金繰りは悪化し、信用保証協会の保証利用は増加しますが、定末課長は日本の経済状況に応じて信用保証協会の保証債務残高(信用保証協会が保証している融資残高)が推移していることを統計データで示しながら、信用保証協会を通した制度融資がコロナ禍に代表される不況時の中小企業の資金調達のセーフティネットになっていること、そのなかで福岡県信用保証協会の保証利用度が全国各都道府県と横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市に計51ある信用保証協会のなかでも第一位に位置けられていることなどをご説明くださいました。
続いて、学生たちに「日本の企業のうち中小企業は何パーセントを占めると思いますか」と問いかけられ(答:99.7%)、日本及びに福岡県での企業数や従業員数に占める中小企業の比率を示して「日本は中小企業の存在感が大きい国であり、福岡県においても県経済の発展と活力の原動力として大きな役割を果たしています」とご説明いただき、大企業と比較した中小企業の「強み」(コンパクトな経営組織、意思決定が速い、小回りが利く、従業員一人一人の存在感など)と「弱み」(人材確保、価格競争力、資金調達力など)について解説いただきました。また、定末課長はこうした重要な役割を果たしている中小企業が経営者の高齢化や後継者不足等を理由に2006年から2016年の間に62万事業者も減っていることなどの日本経済が抱えている問題を指摘されたうえで、その解決に向けて信用保証協会が取り組んでいるきめ細かい創業支援についてもご説明いただきました。
信用保証協会の業務の中核ともいえる保証審査については、定量分析と定性分析についてわかりやすく説明いただいた後、経営者をみる、店舗・従業員・顧客をみる、財務をみるという審査の三つのステップのうち、特に経営者をみるところに焦点を当て、「経営者に会って、まず聞くことは経営理念です。経営理念を知ることで経営者が何を軸としてその企業を経営しているのか、その企業をどう育てようとしているかがわかります」と解説いただき、経営者に会う際に特に気を付けられている第一印象(初頭効果)の重要性についてご説明いただきました。
福岡県信用保証協会のような公的金融機関に求められる人材像としては、①誠実な人、②コミュニケーション能力が高い人、特に相手から話を聴きだすことができる聴き上手な人、③与えられた仕事に対して自主的に責任ある行動ができる人をあげられたうえで、女性の活躍が期待されるなか、福岡県信用保証協会では出産・子育てに関する福利厚生制度の充実など、女性が働きやすい、働き続けられる環境整備に力を入れていることをご紹介いただきました。講義の最後に行われた質疑応答には、今年、信用保証協会に入協された脇川様と山口様(国際キャリア学科6期生)が登壇され、社会で活躍する先輩女性に熱心に質問する後輩にやさしくアドバイスいただきました。
以下は受講した学生の感想(代表)です。
R.Kさん(宮崎県立宮崎西高等学校出身)
今回の講義では、信用保証協会の役割や業務に加えて、中小企業や信用保証協会が保証審査をされる際の着眼点などについてもご説明いただきました。特に印象に残ったのは「経営者に会う前に気をつけたいこと」についてのお話です。第一印象が決定する時間は約5〜7秒程度で、初頭効果はとても重要であり、会社説明会の時なども頷くなどのリアクションをしている人が印象に残るというお話をいただきました。こうしたことは普段から意識していくことが大切だと感じました。
Y.Kさん(佐賀県立致遠館高等学校出身)
M.Iさん(九州産業大学付属九州高等学校出身)
日本では企業数のおよそ99.7%の割合を中小企業が占めており、経済において重要な役割をしていますが、中小企業は特に資金調達面で悩みを抱えています。信用保証協会の制度によって中小企業の資金調達等をサポートすることで、雇用機会の増加や地域経済の活性化を促進し、結果的に国全体の発展と活力の原動力になることを学びました。
A.Yさん(福岡県立福岡中央高等学校出身)
講義を受ける前は全く知らない機関だったので、福岡女学院大学の同じ学科の、しかも同じゼミの先輩が働かれていることに驚きました。講義をいただいた定末様は信用保証協会が企業のどこを評価するのかについて解説して下さいましたが、これは私たちの就職活動においても同じではないかと思いました。また、審査をする際には経営者をみるとおっしゃっており、私はこれまで企業の概要や福利厚生ばかり調べていたので、トップの人を見て、その考え方(経営理念)に触れることは企業行動における基本的な価値観、精神、信念、行動基準が分かるため、重要であると考えました。
M.Nさん(福岡県立筑前高等学校出身)
今回、これまで知らなかった信用保証協会の役割と業務について学ぶことができました。中小企業を支えるとても重要なお仕事だと感じました。信用保証協会がないと安定して経営をすることができない中小企業は多く、特にコロナ禍などの不況時に信用保証協会の存在は中小企業に安心感を与え、日本経済の安定にとって不可欠な存在だと思いました。
M.Fさん(福岡県立春日高等学校出身)
A.Iさん(福岡県立香椎高等学校出身)
講義のなかで定末課長が中小企業の強みとしてあげられた点に私にとって重要と思われる軸が多かったです。私は地域に密着し、いい人間関係がつくれるような場所で働きたいと思います。また、経営理念は企業行動における基本的な価値観や精神を示しているため、これからは企業研究の際に確認を心掛けたいと思います。
M.Kさん(福岡県立武蔵台高等学校出身)
信用保証協会が日本経済に、そして地域経済において大きな役割を果たしていることが分かりました。中小企業と大手企業の違いや人と接する際の第一印象の重要性など、多くの貴重な学びがある講義でした。