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2022.10.11

メディア・コミュニケーション学科

教員コラム:裁判の傍聴を通して学ぶ水俣病

10月7日に熊本地方裁判所で行われた、原告の母の水俣病認定を熊本県に求める裁判の傍聴に行ってきました。この裁判では、原告本人が弁護士を介さずに被告の弁護団と向きあっています。本人訴訟が向かない裁判の一つとしてよくあげられるのが公害問題で、そこにあえて挑んでいるのです。

自らの水俣病の症状で書類を作成するにも左右それぞれ1本の指でしかキーボードを打てないなどのハンディを抱えた原告(下の写真、右から2人目の女性)ですが、公判では裁判官や被告側の弁護士に自らの主張を堂々と述べていました。しかも映像を使用する許可を裁判所から得て、去年公開されたばかりの原一男監督の『水俣曼荼羅』を20分ほど流すという異例の「陳述」も行ったのでした。DVDがまだ発売されていない映画であるにもかかわらず、原告の熱意に打たれて監督も協力してくれたようです。

熊本地裁前で支援者のみなさんと

民事裁判の原則は、本人が行うものです。にもかかわらず、テレビドラマや映画などの影響なのか、裁判は当事者の代理人である弁護士間で争うものといったイメージをもっている人が圧倒的に多いのではないでしょうか。

3年前の2019年には、学生と一緒に福岡高等裁判所で行われた裁判を傍聴しました。それをきっかけに水俣のフィールドワークにも参加してくれた学生が、次のようなコメントをブログに残してくれています。

教科書で学ぶのと、現地を訪れるのでは、伝わり方がまったく違いました。紙媒体で学ぶと、どうしても他人事のような、人の意見を聞かされているような感じがしてしまいますが、現地で学ぶと、「この海か」「ここがチッソか」と自分が体験していることとして理解ができ、さまざまな感情が生まれてきました。

2019年度の水俣フィールドワークの関連記事は以下よりご覧いただけます

活動報告その1 葡萄祭でのメディア・コミュニケーション学科の展示物を作る
活動報告その2 水俣でのフィールドワークで水俣病事件の背景を知る
活動報告その3 水俣でのフィールドワークで公害・環境問題を考える


12月にはもう一つの水俣病裁判の公判が福岡高裁で開かれます。水俣病の「真実」を語る原告の姿を知ってもらうためにも、興味のある学生たちを募って、また裁判に駆け付けたいと思っています。

(池田理知子)