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2023.11.21

国際キャリア学科

(授業紹介)「Current Business」2023年度⑩製造業:HITOYOSHI株式会社の竹長取締役工場長による講義

国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、世界とつながるビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。


 先日の講義には、戦後の日本の高度経済成長を支えた繊維産業の歩みと現状、課題について、高品質のシャツの製造で知られるHITOYOSHI株式会社の竹長一幸取締役工場長をお招きして、ご講義いただきました。

 

講義では、同社の所在地である熊本県人吉市についてふるさと愛溢れるご紹介をいただいたのに続き、竹長様ご自身のキャリアと重ねながら日本の繊維・アパレル産業の近年の動向についてわかりやすく解説いただきました。竹長様は18歳で地元の大分県に工場を持つアパレル企業に就職されました。当時は日本で販売されているシャツの5割は日本製で、竹長様が勤められていた企業も大分県内に5か所の製造拠点を持っていました。その後、21歳の時には人吉に新設された工場に移られます。そのころから人件費等製造コストの上昇に伴い、繊維・アパレル産業では海外への製造拠点の移管が進みます。竹長様も約1年間、北京近郊にある工場での技術指導に当たられました。その後、急速な円高や最新トレンドを採り入れながら低価格に抑えた衣料品を短い商品サイクルで大量に販売するH&MやZARA、GAP、GU、ユニクロなどに代表されるファストファッションの伸張で、日本の繊維・アパレル産業は生産量、企業数、従業員数とも縮小を続けます。その結果、中国、ベトナム、インドネシア、最近ではバングラデシュ、カンボジアなどからの低価格の製品の流入で、国内で販売されるシャツに占める日本製の比率は2020年にはわずか2.1%にまで低下しました。同じく1988年頃は約900あった国内のシャツ工場の数も現在では40くらいに減少しました。竹長様が勤務されていた大手シャツ・メーカーのトミヤアパレルもリーマンショックによる景気悪化の影響を受けて2009年に経営破綻します。そこで、竹長様は吉國代表取締役とともに企業再生ファンドの支援を受けてトミヤアパレルの人吉工場を買収して、現在のHITOYOSHI株式会社を設立されます。

HITOYOSHI株式会社は、MADE IN JAPANにこだわった丁寧なシャツ造りが評価されるようになり、また納期が短い(海外工場は通常、3か月だが、同社では1か月から対応)、ロッドが小さい、仕様が複雑など、海外のメーカーが嫌がる仕事をあえて積極的に受注するなど、価格競争に対抗するために日本ならではのきめ細かいモノづくりに注力された結果、今日では人吉発の高級シャツ・ブランドとして注目を集めるようになっています。創業当初は100%OEM生産(*)からスタートしたものの、販売店との直接取引により中間マージンを省き、価格帯を抑えたことなどが奏功し、現在、年間10万~15万着のシャツを生産し、その2割かが自社ブランドでの販売、残る8割がビームスやシップス、ポールスミス、ユナイテッドアローズなどセレクトショップ向けのOEM生産が占めています。

 

*OEM(original equipment manufacturer):他社ブランドの製品を製造すること、ないしはそうした製造を行う企業のこと。

終盤には従業員の高齢化が進むなかでの人材の確保、若手の育成と技術の継承など、現在、抱えておられる経営課題、そしてベトナム企業との協力体制についてもご紹介いただき、今後の同社の目標として旅行用トランクの工場からスタートしたルイ・ヴィトンやカバンの修理からスタートしたグッチなどの例をあげながら「モノづくりをベースにして、世界に通用する一流のファクトリーブランドになることです」と語られました。講義の最後には、人生百年次代を迎える今、学生たちに身につけてほしい社会人基礎力についてお話しいただきました。学生たちは終始、穏やかに、静かな情熱を込めてお仕事について語られる竹長工場長の講義に聴き入っていました。

 

講義後には、家庭でもできるシャツの上手なアイロンのかけ方を実演しながらご教示いただき、学生の代表としてY.Aさん(福岡県立糸島高等学校出身)とR.Yさん(福岡県立糸島高等学校出身)の二人が登壇し、アイロンがけに挑戦しました。

 

なお、これまで竹長工場長の講義を聴いた国際キャリア学科(ICD)の卒業生からは、ユナイテッドアローズ、リンク・セオリー・ジャパン、アダストリア、アーバンリサーチ、サマンサタバサジャパンリミテッドなどのアパレル・メーカーに就職する学生が出ています。以下は受講した学生の感想(代表)です。

A.Kさん(福岡県立宗像高等学校出身)

HITOYOSHI株式会社から竹長様にお越しいただき、人吉市の魅力、同社のビジネスや地域、外国との関わりなどについてお話しいただきました。講義の終盤に竹長様は人生100年次代に求められる社会人基礎力の一つとして「前に踏みだす」ことをあげられました。このアクションを起こすことには少し苦手意識がありますが、社会で活躍できる人になるためにも今後の大学生活で努力していきたいと思います。今回の講義は、アパレル業界について学ぶ貴重な時間になりました。アイロンのかけ方もレクチャーしていただき、とても楽しい講義でした。

A.Mさん(福岡県立筑前高等学校出身)

初めて紳士服の業界についてのお話を聴いて、新しく学ぶことが多くありました。講義を通して、地域と人々の生活に寄り添い、さらに海外展開までしているHITOYOSHI株式会社の強みをよく理解することができました。一度は倒産を経て、企業を再生された方のお話を聴くことも初めての経験で、とても興味深かったです。今回はわざわざ人吉市からご講義にお越しいただき、本当にありがとうございました。

A.Yさん(福岡県立福岡中央高等学校出身)

今回の講義を受けて、HITOYOSHI株式会社様のシャツ作りに対する想いを学ぶことができました。また、講義後に行われたシャツのアイロンがけもとても勉強になりました。これから就職活動で忙しくなり、シャツを着る機会も増えると思いますので、ぜひ実践したいです!本日はありがとうございました。

M.Yさん(福岡県立福岡中央高等学校出身)

現在、日本の繊維産業は高度な技術力やブランド価値を武器に、高付加価値製品や環境に配慮した商品の開発に注力しています。また、サステナビリティに対する消費者の関心が高まっており、再生可能な素材の利用や環境負荷の低減に向けた取り組みが進んでいます。課題としては、新興国との競争だけでなく、労働力不足や高齢化も挙げられます。今回、HITOYOSHI株式会社の竹長様から具体的な同社の取り組みについてお話を聴くことができ、繊維業界について多くのことを学びました。ありがとうございました。

E.Mさん(福岡県立小倉南高等学校出身)

改めて将来について考える良い機会となりました。講義のなかで、竹長様は一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力が大切であることを教えてくださいました。私には失敗したらどうしようと考え、なかなか前に進むことができない時があります。しかし、お話を聞いて、何事もまずは勇気を出して、一歩前に踏み出してみることが大切であると思いました。一歩前に踏み出すことで、今まで経験したことなかったことや新しい景色が見えてくるかもしれません。また、たとえ失敗したとしても、粘り強く取り組み、その経験を成長の糧にできたら良いと思います。

M.Jさん(福岡雙葉高等学校出身)

私の父はHITOYOSHIのシャツを普段から着ています。百貨店に一緒に買いに行ったこともあるため、HITOYOSHIの名前は知っていました。しかし、どんな企業であるかは知らなかったため、今回、詳しいお話を聴けて、良かったです。授業の最後に教えていただいたアイロンのかけ方もとてもためになりました。今まで私はどのようにアイロンをかけるべきか知りませんでした。これから就職活動でシャツを着る機会が増えるので、今回、学んだことを活かしてシャツにアイロンをかけ、気を引き締めて頑張っていこうと思います。また、いつも仕事を頑張ってくれている父のシャツに綺麗にアイロンをかけて、感謝の気持ちを伝えたいです。

M.Nさん(福岡県立筑前高等学校出身)

講義を通じて、アパレル業界のお仕事について理解することができました。これまで将来の進路としてアパレル・メーカーを考えたことがありませんでしたが、衣食住の衣を支える重要な仕事だと感じました。一枚のシャツは多くの人の協力があって、生み出されます。こだわりが込められたシャツを着ることで気持ちが引き締まり、学校、仕事などの日々に向き合う力をくれます。今後、就職活動をする際には、今回、学んだようにアイロンをかけていきたいと思います。

U.Tさん(福岡県立輝翔館中等教育学校出身)

緩やかな時間の流れる人吉市にあるHITOYOSHI株式会社ですが、2009年の親会社の経営破綻を受け、閉鎖される予定の工場を新会社として建て直された歩みは波乱に満ちたものだったのだろうと思いました。講義を通して、竹長様ご自身が会社を建て直され、ずっと支えてこられたことが分かり、敬意を感じました。最後にシャツのアイロンがけと綺麗にたたむ方法を伝授してくださいましたが、初めての経験で感動しました。アイロンがけは家事のなかでも好きな方なので、家に帰って早速、試してみました。

S.Nさん(福岡県立田川高等学校出身)

講義の最後に、竹長様は「世界に通用する一流のファクトリー・ブランドになる」という同社の目標や人材の確保、若手の育成といった課題についてお話しいただきました。竹長様は、会社がどうなっていくべきか、そしてそのためには何をするべきなのかを常に考えて、経営されていると感じました。講義を聴いて、柔らかいお人柄、そして困難な状況にあってもどうにかそれを乗り越えようとポジティブに物事を捉えられているところが印象的でした。いったんは経営破たんした企業を再生されたご自身のご経験についても辛かった様子を見せることなく、お話しされていて、私もこのように自分の経験を話せる人になりたいと思いました。

A.Kさん(佐賀県立致遠館高等学校出身)

竹長様は勤められていた会社が倒産し、HITOYOSHI株式会社の現在の社長様と共に会社を再建したと話されており、これまで様々な試練を乗り越えられてきたのではないかと思いました。講義を通して、竹内様の強いご意志や洋服への愛が同社を日本、そして人吉が誇る会社へと成長させたのだと感じました。将来、困難に直面した際は今回の講義を思い返し、壁を乗り越えていきたいです。

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