国際キャリア学科 (ICD)では、1年生を対象とした「Freshers Seminar」のなかで、世界とつながる仕事で活躍されている方々による特別講義を開催しています。先日は前期の第2回の特別講義として、国際連合人間居住計画(UN-HABITAT、国連ハビタット)福岡本部の本部長補佐官の星野幸代様をお招きして、国連と国連ハビタットの概要と活動、アジア等の開発途上国が抱えている課題、国連ハビタットが進めている住民中心の復興プロセス「The People’s Process」を中心にご講義いただきました。
日本には28の国連機関がありますが、そのうち唯一、九州にあるのが国連ハビタット福岡本部です。国連ハビタットは「すべての人に適切な住まいを提供し、都市のより良き未来のために成立された国連機関」で、SDGsの11番「住み続けられるまちづくり」を担ってています。具体的には、自然災害や戦争・地域紛争の後の住まいの復興やまちづくり、貧困の削減やスラムの改善、都市計画・政策・法律の整備などの支援、気候変動などに対応するための環境プロジェクトに携わっています。
講義のなかで、星野様は開発途上国の都市が抱えている次の五つの問題をあげられました。
1.貧困と格差の拡大
2.自然災害の多さ
3.戦争・地域紛争の多さ
4.気候変動(地球温暖化)の深刻な影響
5.都市の人口の増加(都市化)
講義の最後に星野様はご自身が支援に携わられたエチオピアのゴミ山で知り合った3人の女性の写真を紹介して下さいました。この3人の女性は初めて学校に行くことで、歌を歌う喜びを知り、英語がより話せるようになり、自分の将来について考え、話すようになったそうです。安心な住まいがあり、安全な水が当然のように飲め、普通に教育を受けるなど、私達にとっては当たり前なことがない国・地域があるという世界の「現実」をこの講義を通して実感することができ、考えさせられることが多くありました。また、その解決に向けた国連ハビタットと星野様の取り組みからも多くのことを学ぶことができました。星野様、お忙しいなか、心を打つ貴重な講義をありがとうございました。
以下では、聴講した学生の感想(代表)をご紹介します。
S.Uさん(福岡県立須恵高等学校出身)
S. Mさん(福岡県立筑紫中央高等学校出身)
K. Mさん(福岡県立小郡高等学校出身)
S.Aさん(福岡県立鞍手高等学校出身)
星野様の講義は私にとって衝撃的なものでした。なかでも衝撃的だったのは開発途上国の現状です。エチオピアでは、何世代にもわたってゴミ山に住み、そこでゴミを拾って生活している人がいるという状況に度肝を抜かれました。また、水道が整備されていない地域では毎日の水汲みが必要で、女性や子供が一日中、川や井戸と家を何往復もしています。そのため、学校に行くことができず、教育の機会が失われ、それによって職に就けずに貧困が連鎖していきます。私は生まれた時から水道があり、教育施設もあり、当たり前のようにそこに通ってきました。世界には学校に行きたくても行けない人が多くいるということを知り、当たり前だと思えている現状に感謝すべきだと思いました。SDGsに関する説明のなかで星野様は「知る」だけでも目標の達成につながるとおっしゃっていました。今を生きる私たちの日頃のちょっとした行動がSDGsの目標達成につながると思いますので、これからも正しい知識を持てるように学んでいきます。
N.Oさん(福岡県立新宮高等学校出身)
I.Oさん(熊本県立高森高等学校出身)
アジア地域は自然災害が多いうえに、戦争や地域紛争も多く、それらの被害が特に低所得層の人々や女性にのしかかっているということを知り、とても残念に思いました。こうしたなか、国連ハビタットが行っている支援は復興に向けての意思決定や行動、責任を住民自身が担うかたちで進められており、本来の国際協力のあるべき姿とはこのようなものではないかと思いました。
Y.Fさん(長崎県立諫早商業高等学校出身)
講義の最後に星野様がご紹介下さったエチオピアのゴミ山で出会った女性のお話が非常に心に残りました。その女性はゴミ山で生活し、星野様と出会う前には歌を歌うことを知らなかったそうです。学校に行く機会が得られたことで女性は歌を歌うことを知り、今では将来の希望についても語るようになっています。私たちが当たり前のように聞いている音楽も学校に行けない子供達にとっては一生、出会うことのない尊いものであるということに改めて考えさせられました。小中高から学んだことの集大成である大学で学ぶことのできている自分の今に感謝し、将来的には私も星野様のように開発途上国の子供達のためになるような活動ができるような人になりたいと思います。
Y.Hさん(長崎県立諫早商業高等学校出身)
国連ハビタットでは、自然災害などで被災した開発途上国の住民が話し合い、自分たちで住居を再建する手助けをしています。また、女性に対する制約が大きい地域では、女性が自由に安心して発言ができるよう女性のみでの話し合いの場を設けたり、女性専用の広場を作ったりもしています。現地の人が自分たちで家を建てることで技術が地域コミュニティに残り、その後は自分たちで修理、再建することができるようになります。費用も安く抑えられます。今回、国連ハビタットの様々な取り組みについて知り、自分でも開発途上国の現状について調べていこうと思いました。
N.Iさん(福岡大学附属若葉高等学校出身)
私は以前からSDGsや開発途上国への支援、国連の活動に興味を持っていましたが、今回の星野様の講義を聴き、ますます関心を強くしました。国連ハビタットはただ財政的な支援をするのではなく、後々、他の力を借りなくても地域コミュニティが自立できるようになるような支援を行っています。そのために現地の人々と積極的にコミュニケーションをとり、女性の社会進出に貢献しようとする姿勢はとても魅力的であると思いました。