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2022.12.07

国際キャリア学科

(授業紹介)「Current Business」2022年度⑩製造業(輸送機器):ヤマハ発動機提携講義Ⅲ-ヤマハ発動機プロダクトデザイン部の長田愛華様による講義

国際キャリア学科(ICD)では、グローバル企業と提携したプログラムとして、2017年度からヤマハ発動機株式会社様との提携講義を実施しています。今年度前期は、国際キャリア学科1年生を対象とする「フレッシャーズ・セミナー」で同社の柳弘之顧問による特別講義を開催しました。

 

後期は、国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」で、ヤマハ発動機で活躍されている女性社員の方による講義をシリーズで開催しています。今年度の第3回提携講義には同社プロダクトデザイン部から長田愛華様をお招きし、携わっておられるプロダクトデザインのお仕事とこれまでのご経歴、そしてそれを通して学ばれてきたことなどについてお話しいただきました。

 

長田様からは初めに「見てないようで見ている、見てるようで見てない」と題して、学生たちにセブンイレブンのロゴをぼかした状態で見せて、何に見えるか問いかけられました。学生たちは皆、セブンイレブンのロゴだと認識していましたが、実際にセブンイレブンのロゴを描いてみようとすると、ほとんどの学生は大まかな形は思い出せたものの、正確には描くことができませんでした。学生たちが驚いたところで、長田様はデザインにおいて非常に重要な「人間は色、形、大きさが近いもの同士をひとつのまとまりとして見る」という「群化」について説明されました。

続いて、ヤマハ発動機のインハウスデザイナーの仕事についてご説明下さいました。インハウスデザイナーとはデザイン会社などではなく、事業を行っている会社に所属して、自社製品のデザインを専門で手掛けるデザイナーのことで、ヤマハ発動機のインハウスデザイナーは全世界で展開されている様々なヤマハ製品のデザインを一手に引き受けています。ヤマハ発動機では製品に「人の可能性を拡げる」という願いを込めており、製品化に当たってはまずこうした方針、また各製品群の方針とあっているかどうかという戦略策定の段階から、企画→方針具体化→製品化というプロセスを辿って製品が生まれていきます。ヤマハ発動機の製品は人が乗る輸送機器であることから安全面、機能面で検討すべきことが多く、通常、この企画から製品化まで1年から3年を要するそうです。長田様はこのプロセスのなかで、「デザイナーは製品が求める機能要求とデザインの整合性をどうとっていくかを考えていきます。そして、判断・行動を促す制作物、すなわち手がかりをデザインしています」と説明されました。

 

続いて、ご自身のヤマハ発動機入社の経緯をご紹介いただきました。幼い頃からものを観察して絵を描くことがお好きだった長田様は芸術大学に進まれますが、そこで先輩が描いたモビリティデザイン(自動車など人間の移動手段のデザイン)を見て、驚き、その道を目指されるようになります。ヤマハ発動機への入社を決めた理由として、長田様は関われる製品分野の広さと和気あいあいとした職場の雰囲気のほか、採用担当の方が楽しそうだったことをあげられました。

 

長田様は入社後、3年間、スクーターの外形デザインに従事されます。必死に仕事をおぼえながら、日々、できることが増えていくことに楽しみをおぼえ、ユーザーの視点で本当に求められていることは何か考えていくことの楽しさを感じられていた長田様ですが、その一方で他のカテゴリーの製品にも触れてみたいと思われていたところに米国でのデザイン研修の機会が訪れます。長田様はデトロイトのデザイン大学に通いながら様々なモビリティ関連のイベントを見学するなかで、「製品はそこに住む人の文化や身体、暮らしありきなのだ」と実感され、同じ技術でも環境や文化にあわせてチューンして製品化することの大切さを学ばれました。

帰国後、仕事をしながらもっと企画の根幹に携わりたい、立体を考えるスキル(立体構成力)を身につけたいと思われるようになっていた長田様に、今度は台湾駐在の機会が来ます。台湾で長田様は既存のプロジェクトのデザインコンセプトの立案に携わられますが、本社ではデザイン部内で済んでいたコミュニケーションを部外の人と密接にとることに難しさを感じ、悩まれます。長田様は一念発起し、まずは自分で動こうと、多くの人と会い、コミュニケーションを重ねられます。この経験から「デザインは数値で表現できることがほぼなく、自らがやりたいことに周りの人を巻き込むには何でそうしたいのか理論的に説明して納得してもらえることが必要である」ことを学ばれます。長田様は、ここで結論から前提、課題、解決手段、結論の順に話すなど、ご自身が経験から学ばれた伝わる話し方を学生たちに教えて下さいました。

 

台湾で長田様はそれぞれの状況で得た違和感を気づきに転化することの大切さも感じられ、その経験は現在の発電機、除雪機、ボートのデザインのお仕事にも活かされます。これまで手掛けたことのない製品をデザインすることとなり、配属当初は戸惑われたものの、発電機のデザインをされた際には、まずはユーザーは誰かという把握から始められ、いわゆる「一人親方」(建設業などで従業員を雇用せずに自分と家族だけで事業を行っている事業主)が主なユーザーであることから車にうまく乗るサイズの発電機をデザインされるなど、これまでの経験から得た学びを活かされました。こうした経験から長田様は改めて状況やユーザーなどをよく見て発想し、その着想を具体化して、ユーザーに共感してもらうことの大切さを学ばれます。そして、今ではこうした気づきを製品化したい、いろいろな技術を持ったデザイナーになりたい、もう一度、海外経験をしたいという思いを持ちながら仕事に取り組まれています。

 

講義では米国研修の時につくられた映像や台湾での生活のお話もいただき、学生達は初めて知るプロダクトデザインの仕事とそこから長田様が導き出された学びに頷きながら聴き入っていていました。以下は聴講した学生の感想(代表)です。

P.Tさん(福岡日本語学校出身、ネパール出身)

 In the lecture, Ms. Nagata talked about her own experiences, which inspired me a lot. She said her interest in drawing had led her to her current career as a product designer. I realized that I also have to give full attention to my interests and make efforts. I will keep challenging myself without losing hope. Thank you very much for this opportunity, Ms. Nagata. The message you gave us is valuable for us to achieve our goals. 

S.Iさん(福岡県立須恵高等学校出身)

お仕事を通して得られた長田様の「よく見る。違和感をそのままにしない」という気づきは、デザイナーだけではなく、他の仕事や新しい商品を開発したりする時にも重要な視点になると思いました。違和感に着目して考えることで、人々の生活をさらに豊かにできる商品開発につながるかもしれません。日頃、見過ごしているようなことにも目を向けていくことが大切なのだと気づくことができました。自分に強みを見出せていなかったとしても、少しの気づきから大きな発見につながることがあるので、日頃から違和感に目を向けていくことを大切にしたいと思います。

K.Fさん(福岡県立福岡中央高等学校出身)

長田様からは、講義の最後に「慣習にとらわれずに、人と違うことを確信をもってできる人になってほしい」という言葉をいただきました。社会人になって働く際には、この言葉を自分のなかで大事にしていきたいと思いました。今日の講義で学んだことを今後にしっかりと活かしていきたいです。この度は貴重なご講義をありがとうございました。

A.Nさん(福岡県立香椎高等学校出身)

プロダクトデザインのお仕事だけでなく、人とのコミュニケーションのとり方など、これからの人生に活かせることを多く学ぶことができました。特に、長田様のお仕事のご経験についてのお話から、何か新しいことに挑戦することで、今まで気づかなかったことに気づけたり、考え方が変わり、新しい発見ができることを知りました。これからは、恐れずに、どんどん新しいことに挑戦して、自らの視野を広げたいと思います。また、デザインには使う人に対するメッセージが込められていることを知り、好きなブランドのロゴマークやよく目にするデザインの意味を調べてみたいと思いました。

N.Fさん(福岡県立武蔵台高等学校出身)

デザインのお仕事について話を聞くことは初めての経験でしたが、常に何かをじっくり観察すること、人々の日常に寄り添うことで、発見やひらめきが生まれるということは、他の職業にも通じることだと思いました。海外に興味があるという漠然とした思いが私にはあります。長田様の講義を聴き、海外との関わり方は無限にあり、自分の興味・関心の点から海外にアプローチしていこうという考えが生まれました。長田様がアメリカ、台湾での研修、駐在を経験し、それが新たな考え方や価値観、そして成長に繋がったように、私も海外でも活躍できる存在に近づけるよう、まずは目の前のことに全力で取り組んでいきたいと思います。

A.Kさん(福岡県立南筑高等学校出身)

インハウスデザイナーのお仕事から、アメリカ研修や台湾駐在でのご経験の話まで、これまでの講義とはまた違った面白さがある、とても興味深い講義でした。たくさんの学びや気づきを得ることができました。今後の生活や就職活動においても役に立つことをたくさん教えていただいたので、実行していきたいと思います。

R.Fさん(福岡県立糸島高等学校出身)

今回の講義を受けて、多くのことを学ぶことができました。私も「慣習にとらわれずに、人と違うことを確信をもって行動できる人」になれるよう、これから頑張っていこうと思います。

T.Kさん(長崎県立佐世保南高等学校出身)

ある状況・場所で得た違和感を、気づきにする。気づいたら言葉にして、感じたことを自覚する。人の行動、使い方、環境、動作、文化、市場を見る。自分の違和感を大切にする。違和感をそこまで深掘りをしたことがない私にとって、新しい観点を得ることができた講義で、とても面白かったです。違和感を意識すると、かなりの場面で感じていることに気づきました。感じたことを気づきにすることはまだ難しいのかもしれませんが、これからの生活で意識していこうと思います。

Y.Sさん(大分県立別府翔青高等学校出身)

製品のデザインが実際にどのように生み出されているのか、今回の講義を聞くまでは想像ができませんでしたが、手がかり、手順があり、素敵なデザインに仕上がっていることを知ることができました。実際に企業の現場で製品をデザインされているインハウスデザイナーの仕事について知り、また海外駐在についても知ることができて、とてもいい機会になりました。ありがとうございました。

M.Oさん(西南学院高等学校出身)

長田様の講義では、ヤマハ発動機のプロダクトデザイン部の業務内容から、相手に伝わるような話し方まで幅広いお話を聴くことができました。講義の後半でいただいた伝わる話し方は、これからの就職活動での面接や授業でのプレゼンテーションでも活用することができると思いました。単に自分が言いたいことを連ねるのではなく、相手に関心を持ってもらうためのポイントをおさえる必要があることがよくわかりました。貴重な講義をありがとうございました。

N.Kさん(自由ケ丘高等学校出身)

今回の講義を聴き、ますますヤマハ発動機とそのの取り組みに対して関心を深めました。また、初めてプロダクトデザインのお仕事について知り、様々な分野に渡る知識を学ぶことができました。ありがとうございました。

R.Tさん(福岡海星女子学院高等学校出身)

今回はインハウスデザインといういつもとは違う面から見たヤマハ発動機を知ることができました。ヤマハ発動機では、製品の企画から製品化まで、だいたい一年から三年くらいかかるとお聞きしました。ヤマハ発動機の製品は人が乗るものが多いため、安全面や機能面からの作り込みが重要であるためです。家電製品等よりも製品化までの期間は長いですが、その分、商品を市場に送り出した時の感動はとても大きいものになると思いました。また、商品を企画し、製品化するうえで、同じ技術でもその地域に合わせた商品を作ることが大事だということがわかりました。そのためには、実際に市場へ足を運び、地域の文化や生活様式を理解するということが極めて重要だということが理解できました。