国際キャリア学科(ICD)では、グローバル企業と提携したプログラムとして、2017年度からヤマハ発動機株式会社様との提携講義を実施しています。今年度前期は、国際キャリア学科1年生を対象とする「フレッシャーズ・セミナー」で同社の柳弘之顧問による特別講義を開催しました。
後期は、国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」で、ヤマハ発動機で活躍されている女性社員の方による講義をシリーズで開催しています。今年度の第2回提携講義には同社SPV事業部から森田愛里様をお招きし、これまで携わられてきたお仕事とそれを通して学ばれてきたことなどについてお話しいただきました。
森田様からは初めにご自身のヤマハ発動機入社の経緯からご紹介いただきました。4歳までお父様のお仕事の関係で、ドイツで暮らされた森田様は海外への関心が強く、大学時代にも様々な国を訪ね、ドイツにも留学されました。就職活動では、当初、金融機関に内定されたものの、海外への思いは強く、大学4年生の11月にボストンで開催された国際就活フォーラムに出席して、そこでヤマハ発動機に出会われます。入社を決めた理由として、森田様は海外に行く機会の多さとヤマハ・ブランドへの親しみのほか、社員の方が楽しそうだったことをあげられました。
次に入社されてからこれまでのご経歴をその都度のご自身のモチベーションを示したグラフを見せながらご紹介下さいました、森田様は入社後、2か月の工場実習などを経て、SPV事業部に配属されます。SPVとはSmart Power Vehicleの頭文字です。ヤマハ発動機のSPV事業部では電動アシスト自転車の完成車とユニット(モーター、バッテリー、充電器など)、電動車イスとユニットを取り扱っています。電動アシスト自転車はヤマハ発動機が1993年に世界で初めて商品化したもので、国内ではYAMAHA PASという商品名で知られています。発売当初はシニア向けの商材として捉えられがちでしたが、その後、主婦の買い物や子育て、通勤・通学、アウトドアと客層を広げ、国内需要はこの10年で倍増するなど、継続的に拡大しています。海外でも欧米市場での需要が拡大しており、ヤマハ発動機では当初のユニット販売から完成車の販売にも乗り出し、売り上げを伸ばしています。
森田様はSPV事業部で電動アシスト自転車の商品企画の仕事に携わられました。企画、開発、上市(市場に出す)、調査のサイクルから構成されたPAS商品企画の仕事のなかで、森田様は特に関係する部署の方々と協働してプロジェクトを進めていく仕事に戸惑いを感じられます。こうしたなか、上司の方から「相手を説得するのではなく、同じ気持ちになってもらうと考えるべき」とのアドバイスをいただき、相手の立場を理解・想像し、プロジェクトの目的やゴールを伝えることが人に動いてもらう際には重要であることに気が付かれました。この仕事を通して森田様はモノづくりの源流となる商品企画の仕事は「判断の軸を作ること」に繋がる大切な役目であり、「人を巻き込むこと」を学ばれます。
続いて、森田様は社内公募に応募され、海外でのプロジェクトに従事され、タイやベトナムに出張されます。その1年後、今度は念願の海外駐在でオランダの拠点に赴任されることになりました。オランダにはヤマハ発動機の欧州統括拠点があり、森田様はそこで従来は日本から欧州の自転車メーカーへの直接営業だった電動アシスト自転車のユニット販売を欧州拠点で行い、あわせて完成車の市場を開拓するという新規事業の立ち上げに携わられます。欧州での電動アシスト自転車の市場は急拡大しており、社内の期待が高いなか、現地拠点には商品や商慣習に関する知見がほぼない状況で、まずは営業活動の基盤を構築する仕事から始められます。そして、様々な壁やトラブルを乗り越えて、事業が軌道に乗り始めた今年3月、日本に帰国されました。この海外駐在では、文化・価値観の異なる人と協働するためには相手の興味・関心をよく知り、目指す方向を言語化して伝えることが重要であることを痛感され、多様な価値観の人を巻き込むことを学ばれました。
現在、森田様は本社で欧州へ届ける電動アシスト自転車の購買・物流・販売管理を担当されています。森田様はこれまでのご自身のキャリアを振り返り、「これまで主に企画という様々な部署の人と巻き込みながらプロジェクトを進めるプロジェクトマネジメントの仕事に従事してきましたが、これからは人事、会計、マーケティングなどもうひとつの自分の軸を作り、将来的には世の中のためになることを自分で企画し、実行できるようになることを目指しています」と話されました。そして、学生たちに「答えは一つではありません。仕事ではまずは目に前のことに取り組みましょう」「やりたいことは人に伝えることが大事です」「定期的に自分を振り返り、頭を整理する時間を持ちましょう」との貴重なアドバイスをいただきました。講義のなかではこれまで訪ねられた国々の魅力やコロナ禍でのオランダ生活など興味深いお話もいただき、学生達はグローバルな仕事でのキャリアを積み重ねながら颯爽と輝いている森田様の体験談とアドバイスに聴き入っていていました。以下は聴講した学生の感想(代表)です。
C.Sさん(福岡県立明善高等学校出身)
森田様から講義の最後にいただいた①答えは一つではない、まずは目の前のことをやってみること、②やりたいことは伝え続けること、③定期的に振り返り、頭の整理の時間を待つことの三つのメッセージを心にとめて、これから頑張っていこうと思います。この度は、貴重なご講義をありがとうございました。とてもためになりました。
S.Aさん(福岡県立明善高等学校出身)
A.Nさん(福岡県立香椎高等学校出身)
森田様はオランダ駐在中にとても貴重な経験をされました。海外駐在の仕事で大切なことは文化・価値観が異なる人と協働することであり、そのためには相手の興味や関心をよく知り、目指す方向をきちんと言語化することが必要だということを学びました。また、多様な価値観の人を巻き込むことも大切だと知りました。今回の講義を通して、国や言葉、文化は違っても熱意を伝え、相手の立場に立って考えることが成功に繋がるということを学びました。
Y.Hさん(福岡県立須恵高等学校出身)
前回に引き続き、ヤマハ発動機の魅力をたくさん知るとともに、自分自身の将来のキャリア形成に活かせることを学びました。森田様はご自身が慣れ親しみ、興味があり、好きな「海外」を仕事と結びつけ、その仕事を行うなかで様々なことを体験され、自分の力にされていました。とても理想的な働き方だと思いました。目標をイメージすることで、より明確に物事を進めることができることを改めて学びました。私も自分の理想とするキャリア形成を組み立てていけるように目標を明確にし、イメージしていこうと思います。
M.Hさん(福岡市立西陵高等学校出身)
今回の講義を受け、何事も自分から積極的に行動し、発言することが重要であると学びました。また、自分がやってきたことを振り返る時間を持つことも大切だと学ぶことができ、これからの生活に活かしていきたいと思います。
R.Kさん(熊本県立第一高等学校出身)
A.Yさん(佐賀県立鹿島高等学校出身)
今回の講義では、ポジティブな思考を持つことからチャンスが広がることや周りの人たちに与える影響など多くのことを教えていただきました。チャレンジしてできたかすり傷なんてどうってことないぐらいのマインドで様々なことに取り組んでいこうという気持ちになりました。また、仕事をする上で最も重要視されるのがコミュニケーション能力であり、自分の考えをきちんと言語化できるかどうかが仕事の成果に関わってきます。日頃から様々なものに触れて、自分の考えを持つことを大事にしたいと思いました。多くの学びがあり、とても充実した時間を過ごすことができました。就職活動に向けて、まだまだ自分に足りないところを良くできるように意識していきたいです。本日は、貴重なお話をありがとうございました。
R.Mさん(九州国際大学付属高等学校出身)
R.Tさん(福岡海星女子学院高等学校出身)
M.Iさん(聖和女子学院高等学校出身)
森田様の講義のなかでも特にオランダ駐在時のお仕事のお話がとても興味深かったです。欧州に合った新たなオペレーション確立のため、言語化して相手に伝え、積極的にコミュニケーションをとることで、新たな環境を自ら構築されたことが印象に残りました。お話を聞くなかで、海外で働くこと、そして環境や背景が違う人と働くことの難しさを感じるとともに、常に問題の解決策を考えていくことの大切さを学びました。製造業や商品企画について理解を深める機会になりました。この講義で学んだことを就職活動に生かすことができるよう精進し、役立ててまいります。貴重なご講義をありがとうございました。