国際キャリア学科(ICD)では、グローバル企業と提携したプログラムとして、2017年度からヤマハ発動機株式会社様との提携講義を実施しています。今年度前期は、国際キャリア学科1年生を対象とする「フレッシャーズ・セミナー」で同社の柳弘之顧問による特別講義を開催しました。
後期は、国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」でヤマハ発動機で活躍されている女性社員の方による講義をシリーズで開催しています。今年度の第1回講義には同社MC事業部から木村真理子様をお招きし、これまで携わられてきたお仕事とそれを通して学ばれてきたことなどについてお話しいただきました。
木村様は初めに世界30カ国・地域に拠点を有し、売上の9割を海外市場が占めるヤマハ発動機の成り立ち、企業理念、ブランドスローガンをご紹介いただき、①二輪車や電動アシスト自転車などのランドモビリティ事業、②船外機や船舶、プールなどのマリン事業、③産業用ロボット、ドローンなどのロボティックス事業、④電動車いすやゴルフカーなどその他事業の順に同社の主要な事業についてご説明いただきました。特に、ご自身が現在、所属されているランドモビリティ事業については世界におけるシェアや同社の市場別の出荷台数など詳しく解説いただきました。
続いて、製造業企業における仕事の流れと関係する部署について分かりやすくご説明いただいたうえで、ご自身のこれまでのキャリアをご紹介いただきました。木村様はヤマハ発動機の本社がある静岡県のご出身で、高校時代に1年間、米国のメイン州に留学するなど海外に対する関心が深く、東京の大学に進学してからも海外旅行で様々な国を訪ねられました。そうしたなか、タイやマレーシアなどでヤマハ発動機の船外機が漁師の移動範囲を広げ、漁業の振興に役立っていることを目にされ、「地元の会社で作っているものが、海外で役に立っている」と感動し、地元で働き、世界とつながる仕事をすることを目指され、ヤマハ発動機に入社されました。
木村様は入社後、研修を経て、広報部に配属されます。広報部ではメディアを通じて企業をPRするお仕事に従事され、その際にバイクに乗っている有名人に手紙を書こうという社外のセミナーでのアドバイスを参考に芸能人の方に手紙を出したところ、バイク専門誌で対談されることになったエピソードなどをご紹介いただきました。広報の業務を通して、木村様は情報を「等身大」に見せること、そして「社会の目」を社内に持ち込むことの大切さを実感されました。
入社4年目から海外広報を担当された木村様は、6年目にインドのチェンナイにトレーニーとして派遣されます。インドでは、女性をターゲットとした新型スクーターの販売戦略の立案の課題を担われました。木村様は「お客様に商品を購入していただくための仕組みづくり」であるマーケティングについて学生にわかりやすく解説いただいたうえで、実際にご自身がインドで取り組まれた事例をご紹介くださいました。木村様は現地の拠点のスタッフの方と一緒に大学回りから始め、この製品のターゲットにぴったりのイメージの女子大生に出会われます。そして、彼女へのインタビューから、①韓流ドラマが好き、②インスタグラムが好き、③モールで買い物をするのがステータスで、家族で行く、④バイクを買う時は父親が決めるなどの情報を引き出し、それをもとに韓流ドラマを放映している番組でのCM、インスタグラムでの広告、ショッピングモールでの体験型展示イベントの開催などを次々と展開され、モールでの展示商談会では日本の平均的な店舗の1年間のスクーターの販売台数を1日で成約するなどの成果をあげられました。この海外経験では、本社、駐在員、拠点スタッフの間の良好なコミュニケーションとお互いをリスペクトすることの大切さを学ばれました。
帰国後、木村様は自社メディアや宣伝物を通して企業をPRする企業宣伝のお仕事に従事され、講義の最初の事業紹介の際に上映された映像などを手掛けられます。その後、出産に伴い、産休・育休に入られます。この間も子育てのなかで数手先を読んで段取りする段取り力やよくわからなくてもまずは耳を傾ける傾聴力、最悪の事態を想定する危機管理能力などの大切さを痛感され、学生たちに「一見、無関係にみえるライフイベントも社会人としてのキャリアにつながっていきます」と話されました。職場に戻られた木村様は、これまでのコーポレート部門から初めて事業部門に移られ、現在、ブランディングサポートなどの業務を担当されています。
講義の最後には「担当する国や商品が違ってもこれまでを振り返ってみると、コミュニケーションが私のキャリアの軸になっています。このキャリアの軸はコミュニケーションが好きで好奇心が旺盛な性格とチャレンジ精神を尊重し、適性に応じた配属をするというヤマハ発動機の社風や人事方針が重なり合って定まったと思います。ずっと面白い、面白いと思いながら仕事に取り組むことができました」と話さました。そして、就職活動を控えた学生たちに「自己分析は、自分は何をしていたら楽しいか、何をしている時に心が躍るのか考えたり、友達に自分のことをどう思うのか聞いたりすることから始めてみましょう」とアドバイスいただきました。
学生たちは、家事、子育てと両立させながら憧れである海外駐在を含めグローバルな仕事でのキャリアを積み重ねられている木村様の臨場感あふれる講義に聴き入っていました。以下は聴講した学生の感想(代表)です。
P.Tさん(福岡日本語学校出身、ネパール出身)
W.Hさん(福岡YMCA国際ホテル・福祉専門学校出身、スリランカ出身)
今回の講義を受けて、ヤマハ発動機について今まで知らなかった様々なことを学ぶことができました。同社の売り上げの実に90%が海外市場で占められていることの根幹にあるのは、創業時から根付く地域によって異なる需要に適切に応えようとする姿勢であることがわかりました。
H.Mさん(福岡市立福岡西陵高等学校出身)
Y.Hさん(福岡県立筑紫中央高等学校出身)
ヤマハ発動機のお仕事に加え、働く上で大切なことや海外で働くことについてなど、多くのことを学ぶことができました。私は将来、ホテルで働くという夢があるため、現在、接客業のアルバイトをしています。その経験を通して、様々な人とコミュニケーションをとりたい、英語でもっと話したいと思うようになるとともに、コミュニケーション力も上がったように思います。今回の講義を受け、コミュニケーションは働く上でやはり非常に重要になると痛感しました。自己分析をした結果と企業の考え方があっているかを慎重に見極め、これからの就職活動に取り組んでいこうと思います。
Y.Eさん(福岡県立京都高等学校出身)
今回の講義を聴いて、「グローバルに働く」といっても様々な職種があるなかで、ものづくりで世界と関わることができるという点に魅力を感じました。時代に合わせて、戦略を変えつつ、様々な媒体で商品を売り出していく、この過程は大変で、時間もかかると思いますが、それだけに大きな達成感を味わうことができ、直にお客様の喜びの声を聞けることは私の就活軸なのかもしれないと感じました。様々な業界、会社があるなかでの就職活動は簡単なものではないですが、自己分析、業界研究をしっかり行い、自分軸を見つけ、なるべく自分に合った働き方ができるようにしっかりと取り組んでいこうと思います。
M.Mさん(福岡県立京都高等学校出身)
I.Oさん(福岡県立北筑高等学校出身)
木村様は、ご自身のキャリアの軸にはコミュニケーションがあるとおっしゃっていました。マーケティング業務や海外駐在、そして育児やライフイベントにもコミュニケーションは欠かせないものであり、コミュニケーションを通じて、物事を客観的に捉え、視野を広げることで、木村様は様々な業務にも対応され、ご活躍されているということがわかりました。また、キャリアアップをしながら、私生活との両立を実現できた理由として、就職活動時に自己分析と企業研究をしっかり行い、入社後のギャップがない企業を選択したことをあげられていました。私も就職活動において、自分の性格ややりたいことと、企業の業務内容や本質を分析していこうと思います。
T.Kさん(長崎県立佐世保南高等学校出身)
木村様の入社後のキャリアのなかで特に印象深かったのは、インド駐在時のお話です。若い女性をターゲットとする新型スクーターの販売戦略の立案に際し、ターゲットにぴったりの女子大生を選抜し、そのライフスタイルを調査、分析し、認知、興味、検索、訪問、購入、経験、共有の過程毎の戦略を考え、実際に販売にまでつなげていくなど、とても興味が湧くお話でした。木村様は、インド駐在時に学んだこととして「良好なコミュニケーションで仕事の質が高められる」ことをあげられました。どの仕事でも人と関わりながら、一緒に仕事に取り組むことがベースにあるので、コミュニケーションはとても重要になってくると思います。木村様はまた「お互いのリスペクトがとても大切である」ことも学んだこととしてあげられました。様々な仕事や立場を経験することで、その役割、立場の大変さや重要さを知ることができ、お互いにリスペクトできる環境ができることで、仕事の協力体制も強まり、素晴らしいチームワークが生まれるのではないかと思いました。
M.Oさん(西南学院高等学校出身)
木村様の講義を聴いて、ヤマハ発動機は私が想像していたよりも遥かにグローバルな企業であり、男女問わず様々な事業に挑戦することができることを知りました。実際に木村様は国内と海外で広報のお仕事を担当されたり、インドで新商品の販売戦略の立案に携わられたりと、多様な経験を積まれており、とても魅力的に感じました。男女関係なく第一線でヤマハの商品の売込みを担うことができるところに、グローバル企業としての特徴がよく表れていると感じました。
M.Sさん(福岡大学附属大濠高等学校出身)
M.Mさん(福岡常葉高等学校出身)
今回の講義では「~で学んだこと」という内容が多くて、嬉しかったです。業界や会社についてのご説明もありがたいですが、自分で調べることもできます。しかし、こういう仕事を通して学んだこと、こういう部署にいて学んだことなどは経験した人にしか分からないことです。これから就職活動でどんな会社に入りたいかなどを決める時に活かせると思いました。とても有意義なお話をありがとうございました。