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2021.11.03

国際キャリア学科

(授業紹介)「Junior Seminar」(3年次ゼミ、中東・北アフリカ地域研究、山口ゼミ)

国際キャリア学科生は3年次から国際政治経済・地域研究、国際協力、異文化コミュニケーション、経営・ビジネスの各専門分野のゼミ・クラスに分かれ、専門科目を重点的に学びます。

このうち、中東・北アフリカ地域を中心に国際政治経済について学ぶ山口ゼミでは、3年次、まず近年、世界を揺るがせてきた「イスラーム国」(IS)が生まれてきた要因や背景について、春休みに指定した『現代中東の国家・権力・政治』(ロジャー・オーウェン著、明石書店)や『「イスラーム国」の脅威とイラク』(吉岡明子/山尾大編、岩波書店)などの文献を輪読したうえで、4つのグループに分かれて討議し、その結果を発表しました。

グループ発表では「イスラーム国」が生まれてきた要因を2003年のイラク戦争と「パクス・アメリカーナの時代における外交政策の最悪の失敗」(ジョセフ・S・ナイ*)とも評される米国によるイラク占領統治の混迷、2011年にチュニジアで始まり多くのアラブ諸国に波及した政治的変動「アラブの春」とその後のシリア内戦など、直近の紛争に求める意見から、1979年のソ連侵攻に始まるアフガニスタン紛争に起源を求める意見、第一次世界大戦後の戦勝国である英国、フランス主導のオスマン帝国のアラブ領土の分割など大国の介入に起源を求める意見、さらには7世紀のイスラーム教の成立期から続くスンナ派とシーア派の対立に起源を求める意見など、各グループとも関連する様々なことを深く調べており、それぞれに深く考察してきたことがうかがわれる内容となっていました。

*ジョセフ・S・ナイ著、山中朝晶訳『国家にモラルはあるか?』(2021年、早川書房)p232

続いて、3年後期には経済に焦点を当てて、中東・北アフリカにおける広域的な経済ハブとなってきたレバノン、バーレーン、ドバイ(アラブ首長国連邦)、カタールを取り上げ、それぞれの経済政策の成功(国によってはその後の挫折)の要因について様々な視点から分析を行い、発表します。4年次には3年次のグループでの研究成果を踏まえ、各自、テーマを設定して卒業研究を進めます。研究テーマは在学中の経験、卒業後の目指す進路(職業)などを踏まえ、各自が最も深い関心を持った分野を担当教員と協議しながら選定する予定です。

以下は「イスラーム国」が生まれてきた要因や背景についての発表を終えたゼミ生の感想(代表)です。

N.Mさん(佐賀県立武雄高等学校出身)

今回のグループ研究と発表を通して、新しい視点で中東・北アフリカ地域の問題を学ぶことができました。2年次の春休みから「イスラーム国」について研究してきましたが、文献や書籍を読むことで中東・北アフリカ地域の混乱の要因と流れを理解することができました。次に、グループ活動で意見交換をすることにより、自分一人では気づかなかった新しい見方を知ることできました。グループ研究を開始した頃、私は歴史的な事件ばかりに目を向けていましたが、意見交換するなかで思想的要因も背景にあると気づいたことが特に大きな学びになったと感じています。グループ発表では自分たちが研究してきた様々な要因を一つの資料にまとめた形で提示することで、チームとしての達成感を感じるとともに、改めて中東・北アフリカ諸国が抱える問題の複雑さを感じました。私はこれまで、中東・北アフリカ地域に対して「危険」「発展が遅れている」という勝手なイメージを持っていました。しかし、今回の研究発表を通して中東・北アフリカは決して遅れた地域ではないこと、少し前までは自由で安全な暮らしが営まれていたこと、混乱には度重なる域外の大国の介入や各国における「政治の失敗」などが複雑に絡んでいることを学びました。

A.Yさん(佐賀県立武雄高等学校出身)

「イスラーム国」の研究をしながら、イスラーム過激思想が生まれるに至った経緯について詳しく学びました。私自身は中東戦争を中心に発表しました。パレスチナにおけるユダヤ人とアラブ人の対立に欧米列強が介入して問題がさらに複雑になってしまったということや、累次の中東戦争による敗戦がアラブ諸国の政変を招いてきたことなどを学びました。西欧にならった立憲君主制や議会制民主主義から軍人主導のアラブ民族主義、アラブ社会主義に、そして過激なイスラーム主義思想を持つ勢力が生まれるまでに至った状況がそこにあったことがよくわかりました。ただ、このような過激思想は本来のイスラームの教えと違う極端な考えであるということも知れてよかったです。

M.Tさん(長崎県立島原高等学校出身)

私たちのチームは、春休みの課題で調べたことを共有し、互いのレポートで重要だと思うものを取り上げていきました。それをまとめていくと、歴史的、地理的、宗教的、社会的な4つの要素が複雑に絡まっていることがわかりました。そこから、資料をたくさん集めました。調べていく途中で「難しいね。よくわからない」という言葉がよく出ましたが、先生の解説を聞いたりして、何とか理解できたと思います。他のチームでは、私たちが調べていないイラン革命や中東・北アフリカ諸国の権威主義的な政治体制などを取り上げるなど、新しい発見がありました。

M.Mさん(香川県立高松桜井高等学校出身)

山口ゼミに入り、初めてのグループ発表でした。グループの一人一人が調べてきた結果を協議して、自分達の考えをまとめることができたので良かったと思います。他のグループの発表も、私たちのグループが考えていたのとは別の視点で「イスラーム国」の伸張の要因を調べて、発表していたので、とても勉強になりました。

A.Sさん(福岡県立筑紫高等学校出身)

「イスラーム国」誕生の背景を知るとともに、中東・北アフリカ地域の近現代史について学ぶことができました。ゼミを受ける前から、「イスラーム国」や中東情勢に興味がありましたが、知識を深めることにより、もっと深いところまで研究したいという意欲が増しました。また、グループで調べ、意見交換しあうことで、様々な知識を得ることができ、チームで学ぶ大切さを学べたのも良かったです。発表ではパワーポイントを使うだけでなく、年表形式で模造紙にまとめているグループがあったり、要点をまとめた資料を一人一人に配布するグループがあったりと、グループそれぞれに個性がありました。今後のプレゼンテーションに向けて参考になりました。

R.Kさん(福岡県立小倉西高等学校出身)

「イスラーム国」が生まれた要因について調べ、グループで協議を重ねるなかで様々な要因が複雑に絡み合っていることを知りました。深く調べれば調べるほど、混乱することもありましたが、意見を出し合い、流れを掴んで調べていくうちに複雑な出来事が少しずつ頭のなかで整理されていって、グループの意見がまとまっていく瞬間にとても達成感を感じました。発表では全てのグループが違った角度から要因を考えていて、とても興味深かったです。

M.Fさん(福岡女学院高等学校出身)

「イスラーム国」に関するグループでの研究と発表では、1年次の「フレッシャーズ・セミナー」での学習内容も参考にし、各自が新たに調べてきたことを持ち寄って整理し、深い考察まですることができました。私たちのグループは、ソ連侵攻以降のアフガニスタンの混迷に焦点を当てました。ソ連がアフガニスタンに侵攻した理由、アメリカが反政府組織を支援した理由、ソ連軍撤退後のアフガニスタンの混迷とタリバン政権の成立、最後にイラク戦争についてまでをまとめました。年表を作り、出来事を順番にわかりやすくまとめられたところがよかったと思います。先生が中東・北アフリカ諸国について説明して下さった資料のなかで、イスラーム革命以前のイランの写真がとても印象的でした。現在のイランでは全く想像ができない状況でした。

Y.Mさん(福岡県立福岡高等学校出身)

私たちのグループでは、イラク戦争を「イスラーム国」が生まれることになった最も重要な要因と考えました。しかし、他のグループの発表を聞いて、ソ連の侵攻以降のアフガニスタンの混迷に注目した研究が特に興味深かったです。ソ連のアフガニスタン侵攻の背景には、イスラーム主義運動が南部のイスラーム教徒が多い国々(共和国)の民族運動につながることへの警戒感がありました。この時、ソ連への抵抗運動を開始したアフガニスタンの人々を支援しようとアラブ諸国から義勇兵が集結しました。ビンラーディンやザワヒリなどもその一人で、彼らを中心にアル・カーイダが組織されていきます。また、ソ連のアフガニスタン侵攻によって多くの難民が隣国のパキスタンへと流れ込み、難民の子供たちはそこでサウジアラビアなどの援助で設立された厳格なイスラーム主義の神学校で教育を受け、そこから成長してイスラーム過激派組織の構成員となる人々が出てきます。このテーマを考えていくなかで、そもそもイスラーム主義などの回帰的思想は西欧からの圧迫に抗して近代化、民族自立を目指そうという動きが高まったことがきっかけだということが大変、印象的で、日本の幕末のころに類似していることも知りました。

M.Wさん(福岡県立福岡中央高等学校出身)

今回、「イスラーム国が生まれてきた背景や要因」というテーマで研究を進めました。初めは自分の持っている少ない知識しかなく、正しい答えを導けるのかとても心配でした。しかし、先生から「正しいと思う答えを見つけるのではなく、自分たちなりの答えを見つけてみよう」とアドバイスいただき、「イスラーム国」誕生につながる歴史の流れを考えるところから始めました。研究を進めるうえで特に重視したことは、各出来事のつながりを見つけることです。出来事の背景を深堀りしていくことで、今まで見えてこなかった真実に辿り着くことができました。他のグループの発表は私達とは異なる角度から物事を捉えており、新たな発見をいくつもすることができました。研究を進め、確信を持って説明した内容はどれも内容が濃く、これからの研究にも活かせる部分が多くあったと感じました。