国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、世界とつながるビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。
先日の講義には、就職先として学生たちの関心が高く、国際キャリア学科の卒業生も多く活躍している旅行・観光業界から、長年にわたり日本通運の海外旅行部門で活躍され、現在は旅行会社ハル・トラベルを経営されている古賀勇代表取締役を講師にお招きしました。
古賀社長からは、初めに観光に関する業種のすべてが含まれる観光業と「旅行業法」に基づく旅行業務を行い、登録が必要な旅行業との違いから説き起こしていただき、日本の旅行業の種類とそれぞれの要件、取扱高の推移について解説いただきました。2001年の米国同時多発テロや2008年のリーマンショック、2015年のフランスでのイスラーム過激派によるテロなど外的な要因から大きな影響を受けてきた旅行業、観光業が昨年来のコロナ禍により置かれている厳しい現状についても、旅行大手46社の総取扱高、宿泊者数、訪日客数、貸し切りバス事業者の売り上げの推移など、具体的な数値を示しながら説明いただきました。
続いて、①リテーラー(JTB、エイチ・アイ・エス、日本旅行など)、②ホールセーラー(JALパック、ANAセールスなど)、③インハウスエージェント(企業内代理店:トヨタツーリスト、MOツーリストなど)、④ランドオペレーター(海外地上手配業者:ミキツーリスト、ガリバーアソシエイトなど)、⑤ネット系代理店(楽天トラベル、じゃらんなど)、⑥ホテルレップなど、販売属性ごとに旅行会社の業務と昨今の動向について解説いただきました。
旅行会社における具体的な仕事についても、①企画(ツアープランニング)、②仕入(オペレーション)、③カウンターセールス、④アウトセールス、⑤メディアセールス、⑥斡旋作業(ビザの取得や出入国カードの記入など)、⑦添乗業務などの順にそれぞれの業務の内容と求められる資質について、①企画は様々な制約のなかでお客様が抱かれているイメージを形にする「旅行の花形の仕事」、②仕入はツアーの成功の9割を左右する「プロとしてのテクニックが最も発揮される仕事で、素材を吟味し、お得な値段で上手に調理しておいしく召し上がっていただく料理人のような存在」、③カウンターセールスは「旅行のコンサルタント的存在」で接客能力や説明能力が求められる仕事だが、最近は相談を受けても結局、ネット予約などに流れてしまうケースが多く、旅行会社は路面店舗を廃止する傾向が目立つなど、ご自身の長年にわたる実務経験に基づき、豊富な実例をご紹介いただきながら、ご説明いただきました。
観光業、旅行業の将来性については、インターネットの普及による新しい形態の代理店の台頭とパンフレットレス化、予約時点の空き状況で旅行代金が決まる相場連動型販売形態の拡大、大手旅行会社の専業化(BTM:ビジネストラベルマネジメントへの傾注など)、既存の旅館の減少と都市部におけるホテルの不足、インバウンド需要の拡大など、コロナ禍前までの旅行業の動きについて解説いただいたうえで、「旅行業に限らず様々な業界がコロナ禍に苦しんでいます。しかし、明けない夜はありません。いずれ以前のように自由に世界を旅することができる日が来ます。この機会にどうすれば改革できるか、今は知恵を出す時です」と話され、①旅行者が安全に安心して旅行できる環境整備、②地域の観光資源の磨き上げとマイクロツーリズムの拡大、③Go to Travel事業の推進、④デジタル化の推進など旅行業界、観光業界に求められる取り組みについてお話しいただききました。
講義の最後には旅行業を含めたサービス業に求められる人材像について、①人の世話をすることが好きな人、人の話を聞いて何を求められているのか把握し、提案ができる人、②好奇心が旺盛で話題の引き出しを多く持っている人、③トラブルや突発的な事案にも臨機応変にポジティブに対応できる明るい性格の人と述べられ、「旅行業に限らず世の中が大きく変わろうとしています。それはチャンスでもあります。その変化に柔軟に対応する一方で、本当に好きなことは何かという自分の軸をぶれずに生きていくことが大切です。旅行業を目指している人は経験を積むこと、資格をとることが大切です。旅行業は将来の独立、起業のハードルが低い業界でもあります」と貴重なアドバイスをいただきました。
30数年上にわたる豊富なキャリアに基づき、イメージしやすい実例を織り交ぜながらわかりやすく解説いただく古賀社長の講義に真剣に聴き入っていました。以下は受講した学生の感想(代表)です。
M.Iさん(福岡県立筑紫中央高等学校出身)
古賀社長は「日本は治安もよく、世界からも注目されていて、コロナ後のインバウンドの期待は大きい」と話されていてました。この機会に日本の良さを見直して、もっとアピールしていき、コロナ後に備えるということも今、できることの一つだと思いました。また、「コロナ後に向けてどのような形態の旅行から回復していくかをイメージしながら海外の状況を調べたりしている」とおっしゃっていて、順序立ててしっかりと計画を立てながら考えていくことが大切なのだと実感しました。講義のなかで特に印象に残ったことは、一つのことに囚われるのではなく、自分が好きなこと、得意なことをしっかり持って、「引き出しを増やしていく」という言葉です。どの企業で働いていたとしても、一つのことに執着するのではなく、自分の好きなもの、得意なものなど、自分をしっかり持っていることで、いろいろな面で役に立つのではないかと感じました。今回の講義を聴いて、コロナ禍で大変な状況でも、何かできることを探して、新しい未来を想像していこうとする姿勢が大事なのだと感じました。私も先を見据えながら今、できることをひとつずつやっていこうと思います。今回は貴重なお話を聴くことができ、とても良い経験になりました。
K.Mさん(福岡県立筑紫丘高等学校出身)
コロナ禍による厳しい状況から旅行業が回復するためには、旅行者が安心・安全して旅行ができる環境整備、地域の観光資源の磨き上げ、Go To Travel 事業の推進、インバウンドの回復などが必要であることがわかりました。様々な産業がコロナ禍の影響を受けていますが、それでも旅行業は未来に向かって進み始めていることが心に残りました。また、講義を通して旅行業では特に人と人との繋がりが大切であるということ、お客様や旅行業に関わる全ての人との信頼関係が大切であるということがわかりました。自分の知らなかった業種について知ることで、就職活動に向けての視野が広がりました。これから本当に自分が好きな仕事は何か、時間をかけて見つけていきたいと思います。
M.Aさん(福岡県立春日高等学校出身)
旅行業務と聞くと、まず店舗でのカウンターセールスが思い浮かびましたが、それ以外にも多くの業務が存在し、それぞれが重要な役割を果たして支え合っているということが非常によく理解できました。観光業、旅行業に限らず世の中が大きく変わろうとしているなか、その変化に柔軟に対応していく一方で、何が好きかという自分の軸をぶれずに生きていくことが大切だという古賀社長の言葉が心に残りました。今後、働いていくうえで、様々なこと興味を持って、自分の得意分野を伸ばすことが大切だということも学びました。ネット化、AI化が進む社会に対応していくために、ネット世代の私たちのような若手がこれから会社の助けとなって行動していくことが求められるのではないかと思います。
C.Wさん(福岡県立春日高等学校出身)
観光業、旅行業に限らず、全ての業界が常に求めていかなければならないことは、周りの環境に応じながら常に柔軟に対応することだと思いました。環境や時代が大きく変わっていくなか、古い考えだけでは、今後の事業を成功させることはできません。また、仕事を見つけるうえで、自分が本当に好きなことは何かを考えることが大事だということもこの講義を通して学びました。環境が変わることをマイナスに捉えるのではなく、プラスに考え、自らチャンスに変えることが大事であると思いました。
F.Mさん(福岡県立香椎高等学校出身)
旅行業、観光業はコロナ禍の影響を大きく受けている業種であり、このような状況下でどのような対策をされているのか、また近い将来、パンデミックが落ち着いた頃、どのような計画をされているのかなどに関して興味を持っていたため、今回の講義はとても貴重な時間となり、学ぶことが多くありました。
R.Uさん(福岡県立筑紫高等学校出身)
私は2年前、福岡県が主催している海外研修プログラムに参加し、マレーシアで大手旅行会社の方のお話を伺った経験があります。その際、「日本はインパクトのあるアミューズメントパークやランドマーク、近代的な建物など、先進国らしいものを魅力として発信する傾向があるが、実際、外国人は日本のありのままの姿を求めていて、そのような日本の自然や田舎、日常生活が体験できるマイクロツーリズムに焦点を当てた情報をもっと知りたい」とのご指摘をいただきました。この経験を踏まえ、海外視点から改めて地元福岡県を見てみると、まだ未発掘の魅力に気づくことができました。また、多く日本人がGo Toトラベル事業によって、近場の観光地を知り、地域の魅力を再確認したというニュースを多く見て、マイクロツーリズムには需要があると実感しました。一方で、地域の観光地にはGo Toトラベル後の集客維持やリピート客の確保などが課題としてあげられると思います。そのためにも、古賀社長の講義にもあったように、SNSでの効果的な情報発信ができるITスキルがこれからの旅行業では求められると思いました。今回、旅行業界で長年にわたり活躍されてきた古賀社長の講義を聞き、旅行業界で働きたいとの思いが確信に変わりました。「明けない夜はない」という言葉を胸にこれから就職活動に取り組んで参ります。
N.Yさん(福岡県立小郡高等学校出身)
私は旅行業・観光業に関心があるため、今回の講義は特に興味深く、勉強になる話ばかりでした。古賀社長はこのような厳しい状況下でも事業を続けられています。「続けたい」という気持ちだけではもちろん乗り越えることはできず、そこには様々な努力があったそうです。厳しい状況でも何ができるのか考えて、地道に努力を続けられている姿にとても胸を打たれました。観光業、旅行業に限らず様々な業界がコロナ禍の影響を受け、変化しています。そうしたなか、短期的な現象だけで判断せず、長い目で世の中を見据えることが大事であることをこの講義で学びました。また、このような状況でもできるだけたくさんの経験を積み、資格を取ったりすることが将来の武器になるのだと感じました。観光業、旅行業のことだけでなく、就職活動をするうえで絶対に忘れてはならないことに気づかされた講義でした。とても良い機会になりました。ありがとうございました。
Y.Kさん(福岡県立浮羽究真館高等学校出身)
古賀社長の講義から仕事をするうえで自分が本当に好きなこと、あるいは得意分野を持つことの大切さを学ぶことができました。「明けない夜はない」、講義の最後に社長が言われたこの言葉は今の社会において皆が心に留めておく言葉だと強く感じました。いつか自由に行動できる日が来るまで、それまでにできることや違った視点からの挑戦を行っていきたいと思います。
Y.Uさん(鹿児島県立川内高等学校出身)
古賀社長の講義を通して、旅行業は社会的経済的影響を受けやすく、社会の変化に順応していくことが大事なのだと感じました。特に、今はコロナ禍を乗り越えてお客様が安心して旅行できる環境整備を進め、変化する世の中に対応できるようなアイデアを持ち続けることが重要なのだと思います。また、OTAの利用が増えてきているのでIT スキルを持つことも必要だと感じました。
M.Eさん(福岡海星女子学院高等学校出身)
ハル・トラベルの古賀社長の講義を受けて、旅行会社の業務について関心を深めました。コロナ禍で苦しい日々が続くなか、「明けない夜はない」というお言葉もとても前向きに考えていらっしゃることが伝わり、私自身もコロナ禍だから諦めることはしたくないと改めて思いました。ワクチンの普及により少しずつ行動制限が緩和され、ワクチンパスポートなどの発行で海外渡航なども国によっては行けるようになってきました。この調子で少しずつ元の生活に戻すための努力をすることで、今までのような好きな場所に好きな人と好きなタイミングで旅行に行ける日も遠くはないなと感じました。私も就職活動を迎えますが、目先の状況で判断するのではなく、長い目で見た時に自分が働く上で楽しいとやりがいを持って働くことができ、なおかつ社会のために何かしら貢献できる職業の一つとして旅行業で働いてみたいと強く思いました。
A.Sさん(筑陽学園高等学校出身)
コロナ禍で旅行業界は大きな打撃を受け、状況が改善する見通しがなかなかたたないなか、それでも気持ちを落とさずに前向きに行動されている古賀社長のお話をお聞きして、私も改めて前向きに行動しなければと思いました。留学ができなくなり、大学の授業も一時期、全てオンラインになり、当たり前だった生活が変わってしまったことでネガティブな気持ちになったこともありましたが、今、できることに精一杯、取り組み、将来、どうなりたいか、何が必要かを考え、行動しようと思います。