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2020.11.09

国際キャリア学科

(授業紹介)「Current Business」③官公庁:農林水産省九州農政局の方々による講義

国際キャリア学科3年生を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、世界とつながるビジネスや公務の第一線で活躍されてきた様々な業種の方を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただく授業です。
 
先日の講義には農林水産省九州農政局より小林地方参事官、総務部総務課の大窪管理官、輸出促進課の稲葉事務官を講師にお迎えして、官民を挙げての輸出促進が奏功し、近年、拡大してきた農産物輸出の状況と農林水産省の取り組み、農林水産省と九州農政局の業務、求められる人材像についてご講義いただきました。

前半では、小林参事官より「日本の農産物輸出の状況と輸出促進施策について」と題する講義をいただきました。初めに少子高齢化で国内の市場が縮小する一方で、世界的な日本食ブームの広がりとアジア諸国を中心とする人口増加や経済発展に伴う所得水準の向上により海外には拡大が見込まれる有望なマーケットがあるという日本の農産物・食品産業を取り巻く状況から説き起こしていただき、農産物の輸出拡大に取り組む意義について、①輸出入バランスの改善、②日本食文化の海外への普及による対日理解の増進という「国民全体にとってのメリット」と、①新たな販路拡大と農家の所得の向上、②国内価格が下落した時のリスクの軽減、③輸出を通じた国内ブランド価値の向上、④経営に関する農林水産業者の意識の改革、⑤地域経済の活性化という「産地・地域にとってのメリット」に分けて解説いただきました。

続いて、2019年には9121億円に達した農林水産物・食品の輸出の状況、九州各県からの主な輸出品目と輸出先について、①九州からの輸出産品には牛肉、野菜・果実(苺など)、水産物ではぶり、さばが多いという特徴がある、②農産物には地域性があり、相手国によって嗜好や好みが異なる、③2019年には韓国との関係悪化に伴い韓国向けのビールの輸出が急減(対前年比20.9%減)するなど輸出は政治・外交にも左右されるなど、具体例を交えながら解説いただきました。

農林水産省を中心とする農産物の輸出促進施策については、まず2030年までに農林水産物・食品の輸出を現在の5倍以上の5兆円とするという食料・農業・農村基本計画で示されたオールジャパンでの目標に向けて、農林水産物・食品輸出プロジェクトによる生産者・事業者支援、輸出阻害要因の解消による輸出環境の整備、日本食・食文化の海外展開の順に解説いただきました。輸出促進への取り組みのうち2017年に創設された「日本食品海外プロモーションセンター」(JFOODO)の活動については和牛の台湾市場でのプロモーションでは米国産やオーストラリア産との差別化のためにしゃぶしゃぶとしての食べ方を紹介している、IT企業の多い米国の西海岸への日本茶のプロモーションではテアニンが豊富な日本茶の心をリラックスさせるという点をアピールしているなど具体例を示しながらご紹介いただきました。

続いて、生産現場での輸出に関する情報不足を解消するための専門家による輸出診断・訪問診断(2020年8月末時点で九州では68件実施)、産地でのグローバル対応を確立するためのグローバル産地づくり推進事業、事業者間の連携促進のためのネット上でのマッチング、海外の日本レストラン等を日本産食材の輸出拠点として活用する日本産食材サポーター店の展開などの取り組みについて、ご紹介いただきました。そのなかでコロナ禍で旅客航空便が減少したことで香港向けの苺の輸出などに支障が出るなどヒトの動きが止まったことがモノの動きも止めている状況を示しながら、「輸出においては輸送手段の確保が重要です」と説明いただきました、あわせて、動植物検疫協議や原発事故による日本食品等の輸入規制の撤廃・緩和など、農産物・食品輸出の阻害要因の除去のために行っている外国政府との交渉などについてもご説明いただきました。

後半には、総務部総務課で人事・採用を担当されている大窪管理官より農林水産省と九州農政局のビジョン・ステートメントや機構、業務、公務員における職種などについてご紹介いただいたうえで、農林水産省、九州農政局で求められる人材像として、現場に寄り添った農業政策を行うためには①コミュニケーション能力(受け答えが的確にできるか、指示が伝わるか)、②主体性、積極性(仕事を自ら吸収し、発信していけるか)、③発想力、創造力(アイデアを生み出し、具体化できるか)が求められ、行政担当者としては①協調性(組織人として周囲の人とうまく連携がとれるか)、②勤勉さ(複雑な制度を理解して的確に事務を遂行できるか)、③論理的思考力(困難な課題に対して正しい結論にたどり着けるか)、④柔軟性(農林水産省の幅広いフィールドにすぐに馴染めるか)が求められるとご説明いただきました。講義の最後には今年、入省された輸出促進課の稲葉事務官より農林水産省を目指した経緯や若手職員から見た仕事のやりがい、職場の様子などについてお話しいただきました。

学生たちは豊富な具体例をあげながら分かりやすく農産物の輸出促進を中心とする農林水産行政について解説いただく講師の方々の講義に聴き入っている様子でした。お忙しいなか、熊本から講義にいらしていただいた九州農政局の皆様、本当にありがとうございました。


以下は講義を聴講した学生の感想(代表)です。

Y.Mさん(福岡県立筑前高等学校出身)

公務員には関心がありましたが、これまで農林水産省のお仕事に目を向けたことがありませんでした。今回のお話を聴いて、公務員として国のため、地域のためにたくさんの業務を行われていることを知りました。新入職員の稲葉様も「民間企業と違い、利益優先ではなく、本当にその企業を心からサポートできることにやりがいを感じる」とおっしゃっていました。公務員だからこそその地域の発展のために力を注げているのだなと感じました。

O.Hさん(福岡県立春日高等学校出身)

今回の講義を通して、日本の農産物の輸出状況とその促進のための施策、そして農林水産省九州農政局のお仕事について詳しく学ぶことができました。講義の最後には今年、入省されたばかりの新入職員の方からもお話をいただきました。コロナ禍で戸惑うこともあったそうですが、「公務員はお堅い仕事」というイメージが覆るくらい上司や先輩の方々に優しく丁寧に指導していただいたそうです。私も公務員は真面目できちっとしているというイメージがあったので、ご講義いただいた皆さんの柔らかい雰囲気や仲の良さを見て、いい意味でイメージが変わりました。偏見や固定概念で判断せずに、実際にインターンシップなどで職種や会社の雰囲気を知ることが本当に大切だと思いました。

Y.Fさん(福岡県立春日高等学校出身)

今回は公務員といういつもの授業とは全く異なる種類のお仕事だったため、特に新鮮でした。私は民間企業を目指しており、これまで公務員は考えていませんでした。公務員というとお堅いイメージがありましたが、今回、お越しいただいた三名の方々のお話しされている雰囲気は終始、和やかで、抱いていたイメージが大きく変わりました。また、行政は男性が中心になっている職場かと思っていましたが、最近では男女の採用が半々に近く、女性の方も活躍されているとお聞きしました。公務員を民間企業の違いなども今回の講義を通して学ぶことができたので、また一つ業界研究が深まったように思いました。

A.Tさん(鹿児島県立加治木高等学校出身)

農林水産省の方からの講義を聞き、「国家公務員のお仕事はお堅いのではないか」というイメージが払拭されました。特に、九州農政局の方々のお仕事は地域に根ざした国民との繋がりの強いお仕事だと感じました。とても貴重な講義をいただき、ありがとうございました。

S.Mさん(熊本県立玉名高等学校出身)

農林水産省の方々が私たちの食生活のためにどれほど尽力されていられるかを学ぶことができ、深い感謝とともに尊敬の気持ちを抱きました。普段、私たちの目の前にある食べ物には多くの方が関わっており、熱い思いを持って供給されていることを知り、もっと感謝の気持ちを持つべきだと改めて思いました。そして、そのような方々の思いを無下にするような行為はしてはいけないと思いました。お話のなかにあった農泊にも興味があるので、いつかチャレンジしたいと思います。大変、勉強になる講義をいただき、ありがとうございました。

H.Mさん(山口県立西京高等学校出身)

今回の農林水産省九州農政局の方々の講義を受講して、国家公務員の方々のお仕事の規模の大きさやそれに対する意識の高さについてたくさん学ぶことができました。農林水産省では輸出促進施策以外にも生産者さんや事業者さんへの各種の支援も行われており、世界的規模のお仕事から地域の生産者さん一人一人に寄り添うお仕事までされていて、とてもやりがいがある職業だと思いました。公務員の方の仕事についてこんなに詳しくお話を聞いたことがなかったので、とても勉強になりました。日本のために働くことがどれだけ大変か知ることができて、本当によかったです。

Y.Sさん(九州国際大学付属高等学校出身)

今日の講義では、日本の農産物の輸出の現状や農林水産省、九州農政局の取り組みなどを学ぶことができました。今まで触れることのなかったお仕事でしたので、新たに学ぶことの多い講義でした。私の祖父の実家が長崎県で農業をしていたこともあり、農家との取り組みや連携なども知ることができ、とても身近に感じました。また、海外とかかわる仕事に興味を持っていますので、特に小林参事官から農産物・食品輸出に関し、どのように相手国のニーズや特色に合わせた工夫を行っているかなどを詳しく教えていただいたことはとても勉強になりました。お話を聞いて海外を相手に仕事をすることの魅力を再認識することができ、自分の将来の選択肢が絞られてきたように思いました。これから物流や公務員のお仕事についても調べていこうと思います。

M.Hさん(明光学園高等学校出身)

日本の食品、農産品の海外への輸出状況とそのための取り組みについて詳しく学ぶことができました。また、農林水産省が優れた日本の食材の魅力をどのようにして海外に発信されているのか、お仕事において生産者農家の方々とのコミュニケーションをいかに大事にされているのかがよくわかりました。世の中の食を支えるとても素晴らしい職業だと感じ、興味が湧きました。農林水産省における女性の職員の割合はまだ少ないようですが、女性管理職の登用のほか、女性の意見を積極的に取り入れるなど、女性の力を活かそうとされているのが伝わってきて、働きがいのある職業だと感じました。

A.Nさん(福岡大学付属若葉高等学校出身)

今回の講義を聞いて、農林水産省では農産物の輸出促進だけでなく、農林水産業の振興のためにさまざまな形で取り組まれていることがよく分かりました。また、講義のなかで「公務員は利益ではなく、どのようなサービスを国民に向けて行うのが良いのかを第一に考えられるところがよい」というお話がとても印象に残りました。新入職員の方と上司の方は年齢差があり、考え方や価値観も違うと思いますが、新入職員の方も堂々と発言されていて、和気あいあいとしている感じで、働きやすい環境だということも分かりました。なかなか国家公務員のお仕事を詳しく知る機会はなかったので、聴講することができ、本当によかったです。

A.Iさん(福岡舞鶴高等学校出身)

農林水産省の3人の講師の方の講義を聞いて、今、なぜ日本では農作物の輸出拡大に取り組む必要があるか、そのために生産・加工現場が抱えている課題、そしてその解決に向けての取り組みなど、様々なことについて学ぶことができました。私は特に生産・加工現場が抱えている課題の解決に向けた取り組みのうち輸出診断・訪問診断に関心を持ちました。輸出診断・訪問診断では農水省・ジェトロ等の専門家が生産現場を訪問し、既にその実績は全国で364件(九州68件)に達しているそうです。私がもし農家で働いていたらこのような輸出診断や訪問診断があることはとても心強いと思います。ほかにも公務員や農林水産省の仕事や求められる能力・資質について学ぶことができました。主体性・協調性や発想力・創造力など自分に足りないものがあると思いますので、もっと高めていって就職活動に挑みたいと思います。今までは公務員は安定した職業というイメージが強かったのですが、具体的な業務やその幅広さを知り、学ぶことができて自分の知識を広げることができました。とても勉強になった講義でした。