学科 Today

  1. HOME
  2. 学科 Today
  3. 国際キャリア学部
  4. 国際キャリア学科
  5. (授業紹介)「Current Business」(2020年度)②繊維産業・ファッション産業:HITOYOSHI株式会社の竹長取締役工場長による講義

2020.10.20

国際キャリア学科

(授業紹介)「Current Business」(2020年度)②繊維産業・ファッション産業:HITOYOSHI株式会社の竹長取締役工場長による講義

国際キャリア学科3年生を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、世界とつながるビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。
 
先日の講義には繊維・ファッション産業の現状と課題について、高品質のシャツの製造で知られるHITOYOSHI株式会社の竹長一幸取締役工場長をお招きして、ご講義いただきました。同社は2009年に大手シャツ・メーカーだったトミヤアパレルが経営破綻したことに伴い、企業再生ファンドの支援を受けて設立された企業で、メイドインジャパンにこだわった丁寧なシャツ造りが評価され、人吉発の全国ブランドとして注目を集めています。

 

講義では、最初に同社の所在地である熊本県人吉市について故郷愛溢れるご紹介をいただき、あわせて依然として市内の店舗や宿泊施設のほとんどが休業を余儀なくされている今年7月4日の豪雨災害の深刻さについてもご説明いただきました。

 

続いて、人件費等製造コストの上昇と最新トレンドを採り入れながら低価格に抑えた衣料品を短い商品サイクルで大量に販売するH&MやZARA、GAP、ユニクロに代表されるファストファッションの伸張などで、日本の繊維産業が生産量、企業数、従業員数とも縮小を続けてきたこと、中国、ベトナム、インドネシア、近年ではバングラデシュ、カンボジアなどからの低価格の製品の流入で、1988年には国内におよそ900あったシャツ工場が2017年には約40にまで減少し、同じく1988年には国内市場で販売されているシャツの半分を占めていた日本製品が2017年には3%を切るまでに低下しているなど、日本の繊維・アパレル産業を取り巻く厳しい状況について解説いただきました。

HITOYOSHI株式会社については、当初、100%OEM生産(*)からスタートしたものの、販売店との直接取引により中間マージンを省き、価格帯を抑えたことなどが奏功し、現在では売上の30%が自社ブランドでの販売、残る70%がビームスやシップス、ポールスミス、ユナイテッド・アローズなどセレクトショップ向けのOEM生産になっていることをご説明いただくとともに、2016年に工場を訪問されてから毎年、オーダーメイドのシャツを注文されている小泉内閣府特命大臣など、同社のシャツを愛用されている著名人についてもご紹介いただきました。

*OEM(original equipment manufacturer):他社ブランドの製品を製造すること、ないしはそうした製造を行う企業のこと。

続いて、自然素材や着心地を重視した縫製にこだわる一方で、納期が短い、ロッドが小さい、仕様が複雑など、大量生産の海外のメーカーが嫌がる仕事をあえて積極的に受注するなど、価格競争に対抗するために日本ならではのきめ細かいモノづくりに注力されている現状についてご説明いただきました。従業員の6割を50歳以上が占めるなど高齢化が進むなかでの人材の確保、若手の育成と定着化、技術の継承と様々な工程をこなせる多能工の育成など、現在、取り組まれている課題とベトナム企業との協力体制についてもお話しいただき、あわせてコロナ禍により国内でのアパレルの売り上げが落ち込むなかで力を入れられてきた医療用ガウンの生産などについてもご紹介いただきました。

今後の同社の目標については、旅行用トランクの工場からスタートしたルイ・ヴィトンやカバンの修理からスタートしたグッチなどの例をあげながら「モノづくりをベースにして、世界に通用する一流のファクトリーブランドになることです」と語られました。講義後には、家庭でもできるシャツの上手なアイロンのかけ方をオンラインで実演しながらご教示いただきました。

学生たちはソフトに、にこやかに情熱を込めて話される竹長先生の講義に真剣に耳を傾けていたようです。なお、これまで竹長工場長の講義を聴いた国際キャリア学科の一期生、二期生、三期生からはユナイテッド・アローズ、リンク・セオリー・ジャパン、アダストリア、アーバンリサーチなどのアパレル企業に就職して、活躍する卒業生が出ています。以下は講義を聴講した学生の感想(代表)です。

K.Yさん(福岡県立春日高等学校出身)

竹長工場長は自社のこれからの課題として人材の確保を挙げられていました。現在、同社の工場で働かれているの方の年齢層は19歳から65歳までと幅広いものの、50代以上が6割を占めていて、若手の定着と育成が課題だそうです。これから新人として会社に入る私たちは先輩方にご迷惑をかけないためにも、就職活動に際しては竹長工場長のアドバイスの通りきちんとその会社のことを知り、見極めるのが大事だと思いました。講義の最後にはシャツのアイロンのかけ方の実演もしてくださいました。私はいつも襟の部分とその台の部分は一緒にアイロンをかけてしまっていました。しかし、そのふたつの部分は繊維の向きが違うらしく、別々にアイロンをかけたほうが良いとのことでした。今度から気を付けてかけてみます。

R.Oさん(福岡県立柏陵高等学校出身)

竹長工場長の講義は驚きと感心の連続でした。現在、日本の繊維・アパレル業界が抱えている課題を受け止め、その解決のために様々な創意工夫を行いながら、しっかり行動されているという点がHITOYOSHI株式会社の魅力だと思います。私も、このような取り組みをすることができる企業に勤めたいなと強く感じました。今回の授業を通して地域に密着した仕事に興味を持つことができるとともに、どのような志のある企業に勤めたいかが明確になりました。竹長工場長にいただいたアドバイスをしっかりと今後の就職活動に生かしていこうと思います。そして、人吉が復興したら、是非、足を運びたいです。

S.Tさん(福岡県立香椎高等学校出身)

竹長工場長のお話を通して、人吉について知ることができたのはもちろんのこと、シャツという商品に特化してその価値を作り上げていく過程について伺い、とてもやりがいのあるお仕事だろうと思いました。HITOYOSHI様は紳士シャツが主ですが、私も着用できるものがあれば是非、手に取って、大切に長く着ることができたらよいなと思います。回線状況の関係ですべては見ることができませんでしたが、教わったシャツのアイロンがけの方法も実践してみようと思います。

M.Kさん(福岡県立城南高等学校出身)

HITOYOSHI株式会社では生産コストの低い海外メーカーに対抗するために、海外工場が生産しにくい商品の生産に特化されています。その特徴は3つあります。納期が短く、ロッドが小さく、仕様が複雑なものです。また、同社は直接取引を行うことで中間マージンを除いて価格帯をおさえています。また、くまモンシャツというものを作ってらっしゃいました。最初は販売目的ではなく、熊本県庁の職員の方々のために作られましたが、好評で一般販売まで至ったそうです。ポケットからくまモンがひょっこり出てているデザインで、私も着たいと思うくらい可愛かったです。厳しい状況のなか、課題に向き合いながら自社の強みを伸ばしておられて素晴らしい会社だと思いました。

A.Tさん(鹿児島県立加治木高等学校出身)

講義の中で特に印象的だったのは、輸入品が多く流通し、日本国内の工場で生産するシャツ・メーカーが減少するなか、自社生産にこだわり、事業を続けてこられたという点です。近年は安い商品を手に入れようと思えば、海外製のものがオンラインで手に入りますし、豊富な品揃えのある量販店も台頭してきています。こうしたなか、HITOYOSHI様が国産シャツ・メーカーとして生産・販売を続けてこられたのは、顧客を味方につけ、ブランドとしてのプライドやこだわりを持ち続けてこられたからなのではないかと思います。これからも九州が誇るブランドとして、世界市場で活躍していただきたいと思いました。今回の講義を聞いて、企業研究をする際にどのような基準でその企業を見極めるべきなのかを学ぶこともできました。同社のような伝統とともに成長力やブランド力を持った企業を見つけることができるように、企業研究を行っていきたいと思います。

M.Aさん(熊本県立人吉高等学校出身)

繊維産業についてのご説明を伺う前に、竹長工場長からはHITOYOSHI株式会社がある人吉についての説明をいただきました。人吉は私の出身地であり、とても懐かしく、見覚えのある場所がたくさん紹介されていて嬉しく思いました。授業で地元の会社のお話を聞くことができ、とても興味深く拝聴しました。多くの企業が事業の内容を変更したりしているなかで、同社が創業当初から日本のものづくりにこだわったシャツの生産を続けておられることは素晴らしいと思います。講義の最後には、若手の確保と育成という課題を抱えておられると伺いました。確かに人吉は若者の人口が少なく、難しい課題だと思いますが、ぜひこれからも人吉を盛り上げていっていただきたいと思いました。

M.Iさん(長崎県立佐世保商業高等学校出身)

竹長様は講義の最後に語られた「ルイ・ヴィトンやグッチのように、小さな工場からスタートし世界へ商品を届けるファクトリーブランドになりたい」という言葉に感銘を受けました。これを機会に、私自身も自分の気持ちに素直に、余計なことは考えず、生きていく上で成し遂げたいことや成りたい像を考えてみたいと思います。また、竹長工場長は私達へのアドバイスとして「企業に関する文字情報を見るだけでなく、実際にその会社に出向いて実態を知ることが大事」だと言われていました。アルバイトの先輩や大学の現4年生・OGの方からその企業の実態や情報を得ることも視野にこれから企業分析を行っていきます。貴重なご講義をありがとうございました。

Y.Mさん(佐賀県立鳥栖高等学校出身)

HITOYOSHI株式会社は日本の繊維・アパレル業界が厳しい状況にあるなか着心地の良さを追求し、自分自身が着たいと思える高品質のシャツづくりを続けられています。同社が所在する人吉市は、先日の豪雨により甚大な被害を受け、道路は冠水し、車はひっくりかえりと町の様子が完全に変わってしまいましたが、一歩ずつ復興へと向かっています。たくさんの困難にぶつかってしまっても踏ん張り、頑張り続けることの大切さを竹長工場長の講義から学びました。これから就職活動へと向かっていきますが、地に足をつけて何を目標とするか見失わないで頑張っていこうと思います。

Y.Sさん(九州国際大学付属高等学校出身)

今回、竹長工場長のお話を聞いて繊維業界に対する理解が深まりました。HITOYOSHI株式会社は日本製のシャツを生産している数少ない会社であり、とても素晴らしい会社だと思いました。日本製ならではのシャツや最近、生産されている医療用ガウンなど、より多くの人々に安全性と着心地の良さを実感してもらえれば、日本の繊維業界はこれからも成長する余地がまだまだあるのではないかと思います。自分自身、日本製の衣類を愛用する一人として、とても応援したいと思うとともに、自分もそうした日本の良さを広めることができるような仕事に就きたいと思いました。

R.Dさん(筑紫女学園高等学校出身)

竹長工場長の講義を通して繊維産業についての知識を深めることができました。初めに同社のある熊本県人吉市についてお話いただきました。人吉市については、講義内でもご紹介いただいたように「夏目友人帳」というアニメの聖地として知っていたので、親近感を感じました。また、人吉市は今年、豪雨被害を受けたところであり、竹長様のご自宅も被害に遭われたと伺い、それでも笑顔で話されていて胸が苦しくなったのと同時に、困難な状況に負けず立ち上がった方々を心から尊敬いたしました。次に日本の繊維産業とHITOYOSHI株式会社の概要を説明いただきました。国内生産が減少を続けている日本の繊維産業ですが、同社のような日本のモノづくりを軸とした企業はとても素敵だと感じました。貴重なお話をお聞かせいただき、同社の目標や魅力について知ることができ、とても充実した講義でした。お時間をいただき、ありがとうございました。人吉が以前のように復興することを心より願っています。

M.Fさん(福岡舞鶴高等学校出身)

ファストファッションの人気が上昇しているなか、HITOYOSHI株式会社は販売先を百貨店やセレクトショップに特化し、販売店との直接取引により中間マージンを省き、価格帯を抑えるとともに、ロッドが小さかったり、仕様が複雑だったりと大規模な製造ラインを持つ海外メーカーが手を付けない仕事をあえて受注することで、メイドインジャパンのシャツづくりを維持されています。 また、くまモンシャツと呼ばれるポケットからくまモンが顔出しているデザインのシャツも人気で、これは当初、熊本県庁の方々のユニフォームとして製造されましたが、ブームを起こし、現在では一般販売も行っているそうです。このようにHITOYOSHI株式会社では様々な創意工夫をこらして経営されていて、とても印象深かったです。これからの課題として人材の確保と若手の育成とありましたが、若手社員は転職する人が多いとのことでした。しっかりと自分が長く続けることができそうな企業を選び、社会に貢献していくべきだと思いました。