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2018.10.18

国際キャリア学科

(授業紹介)「Current Business」-鉄鋼産業:北九州国際技術協力協会の工藤参与(新日鐵住金株式会社出身)による講義

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国際キャリア学科3年生以上を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、国際ビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方々を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。

IMG_6522.JPG第一回の講義では、長年にわたり新日本製鐵(現在の新日鐵住金株式会社)で活躍されてきた北九州国際技術協力協会の工藤和也参与をお招きして、世界と日本の鉄鋼産業の発展と現状、課題についてご講義いただきました。工藤先生は1962年に新日本製鐵の前身である八幡製鐵株式会社に入社され、戸畑の最新鋭工場の建設・運営に携わるなど技術者、そして経営者として活躍されたほか、英国や中国、ロシア、イタリアなど様々な国の製鉄所での技術・経営指導や日本の鉄鋼関連企業の海外市場開拓支援などにも携わってこられました。

IMG_6523.JPG講義では、最初に①安価(1g当たりの価格では木材やミネラルウォーターよりも安い)、②強い(チタンやアルミよりもはるかに強度が大きい)、③原料が豊富(最も多い金属元素で地球の重量の三分の一を占める)、④加工性が良く、リサイクルしても品質劣化が少なく、ほぼ永久に使える(自動車用鋼材のリサイクル率は95%)、⑤あらゆる産業で使われている「産業の米」、⑥途上国の生活水準の向上に伴いさらなる需要増加が見込まれるなど将来性がある、という素材としての「鉄の魅力」について豊富な実例をあげながらご紹介いただきました。

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IMG_6515.JPG続いて、日本の鉄鋼産業について、ペリーの黒船来航による危機感から始まった幕府と雄藩による反射炉建設から説き起こしていただき、欧米の先進制度・技術の導入を目指して派遣された明治初期の岩倉使節団、1901年の官営八幡製鉄所の完成など、その近代の歩みについてご説明いただき、①第二次世界大戦後の6社体制(八幡製鐵、富士製鐵、日本鋼管、神戸製鋼所、住友金属工業、川崎製鉄)による再建と拡大を経て、新日鐵住金、JFEスチール、神戸製鋼所の3社に高炉メーカーが集約され、粗鋼生産量の8割がをこれら高炉メーカーが占め、残りを電炉メーカーが占めていること、②鉄鋼業の国内出荷額は18兆円、従業員数は22万人に達していること、③石油ショックを乗り越える過程で省エネルギー技術が蓄積し、現在、エネルギー効率では世界トップであること、④電磁鋼板や鉄道レールなどハイグレード製品では他国の追随を許さない高度な技術を有している一方で、ローグレード(汎用鋼)やミドルグレードなどでは価格競争力を喪失し、シェアを失ってきたことなど、その現状や課題についても解説いただきました。

IMG_6496.JPG世界の鉄鋼産業については、19世紀までの英国などの西欧諸国、20世紀以降の米国、1970年代以降の日本、そして2000年代以降の中国と、世界の鉄鋼産業をリードする国が変遷してきたことを解説していただいたうえで、①カラチのスクラップ会社からスタートしたミタル(現在のアルセロール・ミタル)が中心となり、経営規模拡大による量的優位性の確保を目指し、世界規模での再編(鉄鋼メーカーの集約化)が急速に進んでいること、②1970年代以降、30年にわたってほぼ横ばいで推移してきた世界の粗鋼生産量が2000年代以降、新興国、特に10年間で6億トンも粗鋼生産量を拡大するなど急成長を遂げた中国の鉄鋼産業の生産急増で大幅に増加してきていることなど、大きく変動するその現状についてわかりやすくご説明いただきました。中国の鉄鋼産業については、膨大な過剰設備・人員を抱え、今後、市場の攪乱要因になりうること、急速な生産量の増加が深刻な大気汚染の要因になっていることなど、その課題についても解説いただきました。

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講義の後の質疑応答の時間には、S.Hさん(大分県立大分舞鶴高等学校出身)から「欧米に大きく遅れていた日本の鉄鋼技術がどのようにして追い越すまでに至ったのですか」という質問がなされ、工藤先生からは「私が入社した頃は欧米の技術が圧倒的に進んでおり、その進んだ技術を理解するために毎日のようにドイツやアメリカの論文を読み、勉強しました。週に一回、同じ部門の技術者が集まって、論文の読書会を開催し、喧々諤々たる議論を行いました。そのうえで、実際にドイツやアメリカに行って現地の技術者と討論し、現場を見ました。このような地道な努力の積み重ねで、ほぼ10年間の欧米に追いつき、15年後には完全に追い越しました。時期的には1990年頃です。その後、進んだ日本の技術を海外で販売する新しいビジネスが生まれました」と丁寧に解説いただきました。学生たちは国内、海外での豊富な実務経験に基づき、優しく、わかりやすく、しかも情熱をこめて解説される工藤先生の講義に聴き入っていました。

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一昨年度の工藤先生の鉄鋼産業に関する講義を聴いた国際キャリア学科一期生(2018年卒)からはM.Mさん(江戸川女子高等学校出身)が新日鐵住金株式会社に就職し(*)、現在、千葉県の君津製鉄所で勤務しています。また、昨年度の講義を聴き、製造業に強い関心を持った現4年生のM.Iさん(大分県立中津南高等学校出身)は北九州に本社を置く代表的な製造業企業から内定をいただきました。工藤先生は「私の講義を聞いていただいた学生さんのなかから、私と同じ鉄鋼会社や北九州の製造業企業に就職する人が出たことをとてもうれしく思います」と喜ばれていました。

*今年、新日鐵住金株式会社に就職したM.Mさん(江戸川女子高等学校出身)の就職活動体験記は以下をご参照ください。
Dream Comes True(就職内定者の声)⑤:M.Mさん(江戸川女子高等学校出身)-新日鐵住金株式会社

以下は講義を聴講した学生の感想(代表)です。

C.Iさん(長崎県立佐世保南高等学校出身)

工藤先生の講義では鉄鋼産業についてお話いただきましたが、そこからは視野を広げること、向上心を持つこと、現状だけではなく先を見ることなど、大切なことを多く学ぶことができました。日本という特定の視点からだけではなく、海外に視野を広げることで、世界における日本の立ち位置や進むべき方向などが見えてくることを改めて痛感しました。とても勉強になった貴重な講義でした。

Y.Iさん(鹿児島県立志布志高等学校出身)

世界の経済や産業にまで目を向けることができた貴重な講義でした。米中貿易摩擦や中国の環境問題など、カレントな話題も多く、さらに勉強しないといけないと感じました。今後、事前の予習や質問も積極的にしていきたいと思います。

H.Uさん(福岡県立春日高等学校出身)

素材としての鉄の魅力や鉄鋼産業の歩みと現状以外にも、日本が現在、直面している社会問題や世界における日本の立ち位置など、本当に勉強になることを多く学ばせていただきました。ありがとうございました。

A.Oさん(大手前高等学校-香川-出身)

これまでよく知らなかった鉄鋼産業について、世界規模でのお話を聴くことができ、貴重な経験になりました。特に、英国、米国、ロシア、中国、イタリアなど各国の国民性や文化的背景を踏まえたうえで、それぞれの鉄鋼産業の特徴や課題について解説いただいた講義にとても興味を持ちました。次回からの講義も様々な分野で活躍されている方のお話を聴くことができるため、とても楽しみにしております。

M.Kさん(福岡県立筑紫高等学校出身)

私たちの最も身近にある素材のひとつである鉄鋼に関わる産業について詳しく学ぶことができ、将来の選択肢が広がりました。工藤先生の鉄鋼業に対する思いを強く感じた講義でした。貴重な講義をいただき、ありがとうございました。

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E.Sさん(福岡県立伝習館高等学校出身)

日本の鉄鋼産業についてその歴史を踏まえたうえで、世界主要国と比較しながらその現状や課題について学ぶことができ、とても貴重な経験になりました。日本の鉄鋼産業の歴史を学ぶと、八幡製鉄所の誕生が本当に世界と日本を変えたといっても過言ではないと思いました。

N.Mさん(福岡県立香住丘高等学校出身)

工藤先生の鉄鋼産業に対する思いがとても伝わってくる講義でした。私も将来、工藤先生のように熱い気持ちを持って働ける仕事を見つけたいと思います。

T.Eさん(福岡県立柏陵高等学校出身)

世界の主要国の鉄鋼産業の特徴や課題について学べ、また経営不振に陥った企業を買収、再生して経営規模を拡大していったアルセロール・ミタルのようなビジネス・モデルを知ることができ、とても興味深く、勉強になりました。

M.Sさん(福岡女学院高等学校出身)

鉄の素材としての魅力や将来性にとても驚きました。また、日本の製鉄技術の高さは明治の岩倉使節団以来、百数十年にも及ぶ地道な研究開発の賜物であることを知り、先人たちは本当に大業を成し遂げたのだと痛感しました。初めから驚きの連続で、とても興味深い講義でした。

S.Bさん(弘堂国際学園出身、ネパール出身)

世界と日本の鉄鋼産業の歴史と現状、課題について詳しく知ることができました。長年、日本と世界の鉄鋼産業で活躍されてきた工藤先生のお仕事に対する愛情を強く感じました。お話を聴いて、私も国際的な仕事に就いて社会の役に立つ人材になりたいとの気持ちを強くしました。
 
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