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2016.12.16

心理学科

テーマコラム 心理学科での学生の「成長」第2回 学生の成長を感じる時

 テーマコラム「心理学科での学生の成長」は、学科の教員が同じテーマでコラムを執筆し、意見や考えを発信しています(注1)。第2回目は「学生の成長を感じる時」というタイトルで「成長」について考えていきます。ぜひご一読ください。
 
  注1)第1回 テーマコラムは、こちら
 

テーマコラム 心理学科での学生の「成長」
第2回 学生の成長を感じる時
 
 テーマコラムでは、心理学科の学生の皆さんの心理劇体験における変化を取り上げます。心理劇は集団心理療法の1つで、心理学科の多くの学生が臨床心理基礎実習において体験する心理療法です。役割を演じることを通して、自己理解・他者理解を深め、よりよい人間関係を築くこと、心の葛藤を整理して問題解決を図る心理療法です。写真は、心理劇を行っている様子です。
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 ところで皆さんは大勢の前で発言することをためらったり、気になったりすることはありませんか?大学生は他者からの評価にとらわれやすい時期であり、発言行動にもそのことが影響すると考えられます。「他者からの否定的な評価に対する心配」は評価懸念といいます。大学生は評価懸念が高く、大勢の前で発言することをためらい「言えなさ」を体験することは少なくないようです。一方で、この「言えなさ」は変化可能性もあり、心理学科の学生の成長の早さに驚かされることがあります。その一つが心理劇場面です。授業での心理劇体験は3回だけですが、皆さんの発言行動や自己表現の変化を実感することが多々あります。このことを確認するために、心理劇参加による評価懸念と発言行動の変化を捉える研究を行い、大学院生と共同で学会発表を行いました。
 
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<図1:第41回西日本心理劇学会発表論文集より(2016年)>
 
 図1は、6名の学生の心理劇前後の体験を示したものです。縦軸は評価懸念、横軸は発言行動です。全員に変化がありましたが、赤い矢印の4名は評価懸念が低下し、発言行動が増えています。つまり、授業に参加した学生の多くは、人からの評価を授業前より気にしなくなり、皆の前で発言するように変化(成長)したわけです。青い矢印の2名も前より発言するようになったり、他者からの評価が気にならなくなり無理な発言を止めたりしています。
 
 「全く知らなった人達のことを少しずつ知っていくことで、少しずつ気持ちも楽になって、自己表現も苦手だったけれど、皆と一緒という部分で、最後の方ではたくさん発言できるようになり、恥ずかしさもなくなった」などという感想が聞かれました。この成長場面に出会う度に、皆さんの持つ潜在的な力を実感します。たった3回の授業による変化は、なかったものが突然出現するわけではなく、皆さんが元々持っていた力が表に現れたと考えられます。変化時の感想では「こんな私がいることを知った」「意外に私にもこんな力があった」等、知らなかった自分・新しい自分との出会いを語る人が多いようです。このような成長は心理劇場面だけではなく、ゼミなどで皆さんと関わる中でもよく実感することです。
 
 心理学科の学びには、自分に気づき他者を理解する過程が含まれています。今まで気づかなかった新しい自分との出会いは、“私”の枠組みを豊かにし、他者とのより良い関係構築につながります。「人は何かのきっかけがあれば変わり得る」ことを学ぶ機会が多いのは心理学科の特徴です。学生の持っている力が芽を出し、育っていくためのきっかけ、土壌を提供する教育の機会を多く有しているともいえます。 
(担当:重橋)