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2016.11.18

心理学科

テーマコラム 心理学科での学生の「成長」第1回 成長と心理学 ―未来を見つめて―

 「心理学科では何を学び,どのような成長ができるの?」
入学前の高校生だけでなく、在学している大学生も素朴に疑問に思うことがあるかもしれません。もちろん、ただ待っているだけでは学びも成長も難しいでしょう。しかし、一歩踏み出し模索すれば、心理学科だからこそできる「学び」や「成長」があります。
 この度、心理学科では、「テーマコラム」を始めることにしました。各教員が同じテーマで、皆さまにお伝えしたいことを発信していきます。最初のテーマは、私たちが、そして皆さんも心より願う「成長」としました。テーマコラムを通して心理学科における学生の「成長」について考えていきます。
 

テーマコラム 心理学科での学生の「成長」
第1回 成長と心理学―未来を見つめて―
 
 心理学科todayをお読みくださっている皆さま、ありがとうございます。心理学科学科長の佐野幸子です。皆さまに、このページを通じてお話しできることを、とても楽しく感じています。初めての試みですので、私自身、他の教員たちからどのような話を聴くことができるのか、楽しみにしています。初回は、私が担当し、成長と心理学の未来の関わりを考えてみたいと思います。どうか、今後もおつきあいください。
 
 心理学を教える立場にいますと、「心理学は役に立つのでしょうか?」という質問を受けることがよくあります。この質問の意図を考えますと、心理学が面白いことも、人間関係にも役立つだろうことは知っていますけれど、就職するためには役立たないような気がしますという気持ちが裏にあるようです。さて、本当に心理学は、職探しに役立たないのでしょうか?
 話が変わりますが、最近の学生はスマフォを使ってインターネット検索を気楽に行います。ちょっと思い出してみてください。10年前には、常に身につけている機器でインターネットの検索ができましたでしょうか? 答は「いいえ」です。
 本学の学生証はnimocaの機能も持っています。学生たちは、学生証さえあれば、バスにも乗れますし、コンビニでの買い物も出来ます。学内の食堂や店舗での支払いを済ませることも、自販機で飲み物も買うこともできます。学生証がこれほど便利になることを10年前に想像できましたでしょうか?
 現在、時代は予想を超えますスピードで変わっています。昔に誕生したコンピュータやインターネットといった様々な技術が、今になって着実に「普通の」生活に影響を与え始めています。昨年、野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究(注1)によって、2030年、つまり今後15年も経たないうちに、現在の日本で人が働いている仕事の49%を、人工知能やロボットが請け負うことができることを明らかにしました。
 将来就きたい仕事、現在従事している仕事は、10年先、20年先、30年先にも存在する仕事なのでしょうか? 高校生を初めとする、現代の青年たちは、本当に大変だと思いますが、将来を見据えて仕事を考える必要があるのです。
 では、将来も生き延びる仕事とは、どんなものなのでしょうか? 先の共同研究は、「創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務は未来においても人が担う」と言っています。そして、人工知能やロボットではできないだろう仕事、言い換えれば将来も必ず生き残るだろう職種として、各種カウンセラーや心理学研究者を挙げています。創造性や協調性は、他者との関わりが必ず必要となる特性です。非定型、つまりマニュアル通りではできない、その場その時での柔軟な対応が必要となる作業というのも、他者の存在を大切にしてこそ成功するものです。このような能力を伸ばす学びは、心理学ならではのものです。
 マズローという人が、欲求段階説(注2)というものを発表しています。彼によれば、人が成長(自己実現)に向かうためには、生きていくための基本的・本能的な欲求(空腹を満たす、睡眠を確保するなど)や安全が保証されることなどが必要となります。おそらく、今後の世の中は、基本的な欲求や安全を確保するための作業を人工知能やロボットが解決してくれて、成長に向かうためのプラスのことを人が提供するようになるのではないかと私は考えています。人の成長や成長に向かうために必要なものを考えたり、実際に自他の成長を促したり疲れを癒やしたりなどのサポートを行う学問が心理学です。
 現時点でも、既に公認心理師という心理学領域では初めての国家資格が誕生し、心理学が職に結びつく可能性は大きく伸びています。しかし、今から大学に入学しようとする世代の人たちを考えますと、心理学は、10年後、20年後、さらには未来に渡って当人にも役立つのみではなく、職にも結びつく学問だと言えるでしょう。
 我が家では、お掃除は掃除機ロボットがしてくれています。しかし、花を飾るのは相変わらず私の役割です。日々の生活を思い起こし、未来にも活躍できるあなたの職や役割を考えてみてください。未来を見据えることこそ、あなたの素敵な成長に繋がります。
(文責:佐野)
 
注1) https://www.nri.com/~/media/PDF/jp/news/2015/151202_1.pdf
注2) Abraham Maslow 1943 "A Theory of Human Motivation" Psychological Review
これは原論文(英語)ですが、有名な理論ですので日本語でも多数の文献で紹介されています。
 
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