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2016.05.07

メディア・コミュニケーション学科

熊本支援方言プロジェクト(1)―地元の方の心をときほぐす方言―

 熊本で最初の大きな地震が起きてから5日後の4月19日、弘前学院大学の今村かほる先生から「熊本の被災地を支援するために、方言資料を作成できないだろうか」との打診を二階堂が受けて、このプロジェクトが始まりました。今村先生から基礎資料の提供を受け、二階堂は筑紫日本語研究会・九州方言研究会のメンバーに協力を求め、医療語彙や人体図作成に取り掛かりました。
 まずは震災後1週間をめどに医療関係の資料を作成するべきだとの助言を受け、大急ぎで作業を進めました。メディア・コミュニケーション学科の先生方の手も借りて、なんとか資料掲載にこぎつけたのが4月25日。そういう意味では、皆で作り上げた資料です。その後も多くの研究者の力を借り、一般向け資料や心理ケアを想定した資料の公開を進めています。
 この活動のねらいは3つです。
 1つ目は、外から支援に来た方、特に九州外から来た方が、熊本の地元の方と話す際にその言葉(方言)がわからなかったり、とまどったりしないようにすることです。これは東北大震災での教訓を踏まえたものです。
 2つ目は、誤解をさけることです。熊本は方言はいくつかに分かれますが、それぞれで微妙に食い違う点があります。例えば、「ジゴ」という言い方が熊本にありますが、南部方言では「肛門」の意味に、北部方言では「内臓」の意味に、その中間地帯では「尻」の意味になります。医療の場面を想定すると、重要な情報です。こうした取り違えをさけるべく、資料を作りました。
 最後の3つ目は、方言が持つ魅力を活かすことです。実は、これがもっとも大切なことかもしれません。方言は土地に根差す言葉です。もし遠くからやってきた支援者の方が、かたことでもなんとか方言を話そうと努力をしたら、地元で大変な思いをしている方、特に年配の方の心を解きほぐすことができるのではないかと考えています。
 例えば、自分が外国を旅していて、その国の言葉に不自由しているとします。そこで、現地の方がふいに日本語で話しかけてくれたらホッとするはずです。外部の方がわずかでも熊本の方言を話すことは、それと同等、あるいはそれ以上の効果があるのではないかと思います。方言はその土地の生活とつながっているだけに、話す人々にもつながりを生み出します。
 我々は、日頃の方言調査でお世話になった方々を思い出しながら、少しでも恩返しになれば、少しでもお役にたてればと、作業を進めています。ぜひ多くの方に、このプロジェクトを役立てていただけたらと思っています。
(二階堂整)

■熊本支援方言プロジェクト
http://www.fukujo.ac.jp/university/other/hougenpjt.html