『メディアとしてミュージアムをとらえる』をテーマに学んできた2年次選択必修の授業「基礎演習D」での最終課題は、北九州市にある「北九州平和のまちミュージアム」と「北九州平和資料室」への訪問でした。
-なにがあって、なにがないのか
-なにが伝わって、なにが伝わらないのか
授業で多角的な見方を学んだ学生たちはなにを見て、なにを感じたのでしょうか。
はじめに訪れたのは、小倉城にほど近い北九州市立「北九州平和のまちミュージアム」です。ここは2022年4月にオープンした、プロジェクションマッピングや360度シアターなどがある体験型ミュージアムです。戦前から、八幡の大空襲などの戦時中の出来事、そして戦後の復興まで、北九州が歩んだ歴史と当時の人々の暮らしを知ることがここではできます。
次に訪れたのは、若松区にある「北九州平和資料室」でした。「北九州平和のまちミュージアム」の開館をきっかけに2022年に閉館した、市民によって作られた「北九州平和資料室」を、元小学校教諭の小松芳子さんが引き継ぎ、2023年6月に蜑住(あまずみ)に再オープンさせました。展示品は全て手に取ることができ、重さや手触りから当時の人の思いを感じ取ることができるのが特徴です。
ふたつのミュージアムをじっくりと見学した学生たちの感想です。
・前者(「北九州平和のまちミュージアム」)は北九州のことや歴史がよくわかった。タッチパネルの活用や、360度シアターのアニメーションは、小さい子でもわかり易い反面、リアリティに欠けていた。
後者(「北九州平和資料室」)は残酷で衝撃的な展示もあったが、展示物に肌で触れることで感じるものがあり、より考えさせられる場所だった。
・前者は映像や模型、ライトアップの仕方などに工夫が感じられ、よくまとまっていた。
後者は壁一面に展示物が飾られ、手書きのものが多く、思いがつまっていて伝わるものがあった。
・前者は客観的。他人事のような感じ。
後者は主観的。一人一人の視点からみた資料が多かった。
・前者は被害者の立場からの展示が多い。
後者は被害者であり加害者であったことを包み隠さず展示していた。
・前者はいろいろなところに配慮した展示と感じた。
後者はリアルすぎる写真があり胸が苦しくなった。行ったことのないミュージアムの形だと思った。
授業担当の池田教授からはこんな言葉がありました。
同じテーマのミュージアムが、同じエリアに複数あることにも意味がある。公的な施設は制約や配慮がたくさんあるが、戦争についてほとんど知らない人に対して、戦争を伝える「入口」としての役割があり、そこに意義がある。別の視点で語られるミュージアムがあることは必要であり、複数あることの大切さを知ってほしい。
半年間の授業で、「ミュージアム」という題材から多角的なものの見方や視点を変えることの大切さを学ぶことができた学生たちでした。
(学科Today編集担当)