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2023.09.22

メディア・コミュニケーション学科

チャペルでの奨励「『公害漫画』から考える私たちの生活」の報告

9月13日(水)のチャペルに本学科の池田理知子教授が登壇し、「『公害漫画』から考える私たちの生活」と題して奨励を行いました。

「公害」というと自分には関わりがない、昔のはなしといった感覚はありませんか。
今回は公害を取り上げた二つの漫画から、私たちの生活と公害や環境問題とのつながりを考えていくという話でした。

最初に取り上げられた作品は「ソラノイト~少女をおそった灰色の空」(矢田恵梨子作)。

四日市公害の犠牲者で、51年前わずか9歳で亡くなった谷田尚子さんを描いたこの漫画は、四日市市で生まれ育った作者が取材を重ねて描いた作品です。
作者は三重テレビ制作の四日市公害のドキュメンタリー番組を観て、ぜんそくに冒された患者さんたちが今でも病気の症状で苦しんでいるという現実を知らされ、市民団体の講座に足を運ぶようになりました。そして、当事者から直接話を聞くことで、心の底から今描きたいと思うようになります。この漫画が公害について考えるきっかけになればという思いで描いたとのことでした。

次に取り上げられた作品は、「かたっぽのふるぐつ」(萩尾望都作)。
この漫画は1971年に描かれたもので、四日市市が舞台になっています。作者が生まれた大牟田も大気汚染がひどい地域でした。作品の中には、小学5年生の少年が見た、「石油コンビナート対人間」という第三次世界大戦の残酷な風景が出てきます。

  地球はよごれてまっ赤だった
  充血した目みたいにさ

  そのなかで石油コンビナートだけが生きててうごいていたんだ
  そいつはますます大きくなっていって……
                (「かたっぽのふるぐつ」より)

池田教授は語ります。
「はたしてこれは幼い少年がたまたま見た夢なのでしょうか。これらの漫画は私たちに問いかけます。不都合なことに目をつぶり、無関心を装ってはいけないのではないか」と。

最後に池田教授は、「便利さと引き換えに、あたりまえにある自然を汚し、地球に負担をかけている”加害者”に私たちがならないために、いまどのような行動をとらなければならないかを考えなければなりません」と学生たちに呼びかけました。

自分には接点がないと思っていた「公害」を「自分事」として考える、このことが私たちの今、そして未来を変える第一歩になるのではないでしょうか。

(学科Today編集担当)