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2023.07.13

メディア・コミュニケーション学科

授業紹介:蝶の視点からみたキャンパス〜主題図をデザインする〜(専門演習Ⅰ)

デザインというと、私たちはまず、「何をつくるか」、「誰のためにつくるか」、「どうやってつくるか」といったことを考えるでしょう。しかし、世界は私たちだけでなく、さまざまな生物や植物が複雑に交わることで成り立っています。

生物学者のユクスキュルは『生物から見た世界』で、「環世界」という概念を説いています。それぞれの生物がそれぞれの知覚を駆使して世界を捉えているというものです。人間がかつてないほど、地球のあり方に影響を及ぼしてしまう人新世(じんしんせい)といわれる時代にあって、これからのデザインの活動には、私たちとは別の視点に立って、つくる行為を見つめ直すことも重要なのではないでしょうか。つまり、私は一体「誰として(何の立場として)考えているのか」という問いを自分自身に持つことです。

「専門演習Ⅰ」(デザイン系ゼミ)で学生が制作した実物大の蝶

実際に蝶になりきって、キャンパス内を飛んでみた様子

先日、デザイン系ゼミでは、「環世界」の概念を参考に、蝶の視点からみた「主題図(Thematic Map)」のデザインに取り組みました。「主題図」とは、あるテーマから独自の視点で世界を見つめて図に表したもので、Google Mapのようなふつう私たちがイメージする地図(一般図、General Map)とは異なるものです。

学生たちは、実物大の蝶をつくり、蝶になったつもりで学内を飛びまわり、そこで得た気づきをもとに「主題図」を制作しました。この実践を通して、いつもは見慣れたキャンパスから、いままで気にもとめなかった世界が浮かび上がってきました。学生たちは、蝶の視点に立つと、古い切り株が羽を休めるのにぴったりな場所に思えたり、小さな花が小刻みに風になびいていることに気づいたりしたといいます。また、普段、自分たちの憩いの場であるカフェや噴水の周りは、蝶の視点に立つと、危険に感じたとも語っていました。

このように、ときには、自分とは全く別の主体になりきって世界を捉えてみることで、何かを新しくデザインするときのヒントが見つかるかもしれません。

(渡辺学)