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2022.12.27

メディア・コミュニケーション学科

教員コラム:人吉海軍航空基地資料館で出会ったこと

先日、熊本県の人吉に行ってきました。「錦町立人吉海軍航空基地資料館~ひみつ基地ミュージアム」は、戦争末期につくられた人吉海軍航空基地の跡にあります。2021年のリニューアル後に展示された、「赤とんぼ」の愛称で知られる九三式中間練習機のレプリカ展示が印象的なミュージアムです。

九三式中間練習機のレプリカ(筆者撮影)

ミュージアムの常設展示の説明文のなかに、次のような記述がありました。

人吉球磨地域の中学生や高等女学校生たちは、学徒動員として、三菱航空機製作所(熊本市)のほか、第21海軍航空廠(長崎県大村市)などで飛行機の製造に携わった。/1944年(昭和19)10月25日の大村大空襲以降、福岡の軍需工場へ異動し、局地戦闘機「震電」の製造に携わるも、衛生環境や食糧事情の悪化から、体調を崩し帰郷するものも少なくなかった。

「震電」は、雑餉隈(現在の福岡市博多区南福岡駅近く)にある九州飛行機工場でつくられていました。資料室ジャーナルの原稿にも書きましたが、福岡女学校の卒業生たちもそこで作業をしており、戦争末期の短い間、人吉の学校の生徒たちと同じ場を共有していたことになります。
本来であれば学問にはげんでいたはずの生徒たちが、国や軍の都合で遠くまで行かされたり、過酷な労働に従事させられたりしており、戦時下においては学ぶ権利や自由が奪われる生活を強いられていたことがわかります。

フィールドワークをしていると、思いもよらない発見があります。これからも各地のミュージアムを訪ねたときに、「戦争」という「大きな物語」からは見逃されがちな、その時代を生きた人たちの声を拾っていきたいと思っています。


(池田 理知子)