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2023.01.10

現代文化学科

【能勢ゼミ】Hairspray:観劇前の注目ポイント(前編)

 アメリカ言語文化を研究領域とする能勢ゼミでは、3年生の2022年度のゼミ活動のテーマに統合ミュージカルを選びました。前期のゼミ活動では、映画版ミュージカルHairspray (2007)の分析を通して、本年10月博多座において渡辺直美さん主演で上演される劇場版Hairsprayの注目ポイントについて、ゼミ生たちは5つのグループに別れて考えてみました。各グループが取り上げたポイントは、次の5つです:
(1)「Hairsprayの衣装」      (2)「白人音楽と黒人音楽の違い」、
(3)「ストーリーと曲の関係性」    (4)「Hairsprayの演出:照明と場面転換」
(5)「Hairsprayのプラカードのメッセージ」。
 今回の記事では(1)と(2)のポイントについて、ゼミ生たちが発表した内容を紹介させて頂きます。

 ミュージカルHairsprayで注目したい衣装ポイント、それはズバリ!:「50年代&60年代のアメリカファッションの融合」です!映画Hairsprayでは控え目で上品さを兼ね備えた1950年代の流行と、奇抜で個性的な色味や柄が多い1960年代ファッションの融合が多く見られ、その特徴が博多座でのミュージカルにおいてどのように表現されるのかが注目ポイントです!

 1950年代アメリカファッションの主な特徴としては、いかにして洋服で女性らしさを体現するかがこの時代のカギだったようです。スカート丈は全体的に見ても長めのものが多く、露出を控えたコーディネートがほとんどで、回るとふわっと広がるサーキュラースカートやAラインワンピースなどがこの時代に流行しました。その一方1960年代では露出が増えた奇抜な洋服が増え、スカート丈などもひざ上のものが多く流通するようになり、50年代とは真逆をいくスタイルが女性たちの間で流行しました。
 映画Hairsprayでコーニー・コリンズショーに出演している白人の女性キャストたちのほとんどがふわっとしたサーキュラースカート、Aラインのワンピースを着ていて、全体的に甘く柔らかいパステルカラーのものが多く、これは50年代頃の流行がかなり影響していることがわかります。一方黒人女性たちの衣装は派手なアニマル柄や奇抜なカラーの丈の短いワンピースなど、60年代頃の風潮が大きく出ていてます。
 またトレイシーとエドナが着ていたピンクのスパンコールワンピースも60年代ファッションに分類されます。そして映画の中でトレイシーが着用していた黒×白のスパンコールが市松模様風に並んだ、ウエストマークのないシフトドレスは、時代を先駆けた60年代ファッションを見事に表現していて、この衣装でトレイシーが登場することで、新しい時代、価値観の到来をルックスでも表現しているとも捉えられそうです。また10月に上演予定のHairsprayのチラシを見ると、渡辺直美さんが着用してる水玉柄でさわやかなビビッドブルーのAラインワンピースは50年代と60年代のアメリカファッションの特徴をいいとこどりした衣装であることがわかります。1950年代と60年代、それぞれの時代のアメリカファッションの特徴をおさえて、舞台を鑑賞する際にはお芝居と合わせて演者たちの衣装にもぜひ注目していきたいです。

 映画Hairsprayでコーニー・コリンズショーに登場する白人と黒人のファッションに違いがあるように、白人と黒人がステージで披露する曲の印象も大きく異なります。映画Hairsprayではコーニー・コリンズショーの中で “The New Girl in Town” という曲を、白人の女の子たちと黒人の女性たちが、それぞれステージ上で歌っています。白人の女の子たちが歌っている場面では、白っぽくふんわりとした花柄のスカートを着て、動きが小さく、声が高いところが特徴的です。またステージの背景は明るい色で、全体的にポップで、かわいい女の子のような印象を持ちます。一方黒人歌手たちのパートは、白人に比べ服装がタイトで体のラインがはっきり分かり、色も無地のオレンジで派手なデザインです。また動きも力強く、腰もよく動いています。声も白人パートに比べて低く、背景も夜のように暗く、大人の女性の印象です。これらのことから白人と黒人では、同じ曲でも与える印象がずいぶん違うことが分かります。この“The New Girl in Town”という曲は映画の中では歌われているのですが、ブロードウェイで上演されたミュージカル台本には曲がのっていません。そこで10月に上演されるHairsprayでは、ミュージカルの中のさまざまな楽曲を通して、日本人の出演者たちが白人と黒人の音楽の違いをどのように表現するのかに注目して見てみると、より楽しめるのではないでしょうか。