学科 Today

  1. HOME
  2. 学科 Today
  3. 国際キャリア学部
  4. 国際英語学科
  5. 【学科専門領域ご紹介】International Cooperation 国際協力現場の最前線より -タジキスタン- 

2022.10.08

国際英語学科

【学科専門領域ご紹介】International Cooperation 国際協力現場の最前線より -タジキスタン- 

【文中 敬称略】

国際英語学科の櫻田陽一教授は、独立行政法人国際協力機構(JICA)のプロジェクト調査団に参団する形でタジキスタンに赴き、国際協力の最前線での現場業務に参画しました。ここではタジキスタン国の概況と、国際英語学科の授業科目にもなっている「国際協力」の生の現場業務の一端をご紹介してみたいと思います。

■タジキスタン国概況

皆さんは、タジキスタンという国について、どのくらいご存知でしょうか。首都はドゥシャンベ。地理的には中央アジアに属する国で、南側はアフガニスタンと国境を接し、西側はウズベキスタン、北東にキルギス、東側は中国と国境を接する、海に面していない内陸国です。

加えて、タジキスタンは旧ソビエト連邦に所属していた国です。1990年前後のソビエト連邦をはじめとする東側社会主義国家が次々と崩壊していく中で、タジキスタンは1991年にソビエト連邦を離脱し、主権国家として独立しました。旧ソビエト連邦は、下図に示すように、ロシアをはじめとする15ヶ国国家連合体としての態を成していました。タジキスタンは、下の図中の12番目の国です。

タジキスタンは、総人口が984万人(2022年)で、そのうち若者がとても多い国です。10歳刻みの年齢別人口構成(2019年)を見ると、30歳未満人口の総人口に占める割合は、実に60%以上になっています。9歳以下の人口構成率も突出して高くなっています。その様子は、下図のいわゆる人口ピラミッドで見れば歴然としていますね。左側の現在の日本の人口構成(2019年)と比較すると、タジキスタンの若年層の割合の高いことがよくわかります。

ところが、タジキスタンでは労働意欲の旺盛な若者たちを雇用し、労働力として活用できる場面が極めて限られています。タジキスタンの国内産業は、綿花、小麦、果物が生産されている農業が主で、そのほか、繊維産業をはじめとする軽工業、アルミニウム製錬業などがありますが、全ての若者を被雇用者として吸収するのには程遠いのが現状です。タジキスタンの一人当たりGDPは、およそ850米ドル(名目値)であり、我が国の40,000米ドル(名目値)に比べると、2.1%足らずになっています。では、こうした国内の働き手は、どこで収入を得ているのでしょう。実はその多くが海外出稼ぎ労働者として、ロシアをはじめとする周辺諸国や欧州に出て行ってしまっています。こうした海外出稼ぎ労働者らが、働いて得たお金をタジキスタンに残った家族の元に送金しているのですが、その送金額が巨額に上っています。下の図は、外国からの送金額のGDPに占める割合を示していますが、ピークを記録した2007年にはGDP比45%にも上り、近年では30%前後で推移しています。周辺諸国と比べても、タジキスタンの突出ぶりが顕著です。

■我が国のタジキスタン支援

このようにタジキスタンは、自国内に際立った産業を持てていない国であり、農山村部では貧困問題が顕著になっています。我が国はJICAが最前線に立って、タジキスタンに対して産業と雇用の創出のための支援を、技術協力という形で実施しようとしています。その中で、とりわけインキュベーションの促進を支援しようとしています。インキュベーションとは、「起業」を意味します。つまり、自国に産業が無いのなら、自分たちで作ってしまおうという発想です。小規模ながらも自分たちの会社を創立し、マーケティング活動を通じて市場を掘り起こしていこうというもので、アントレプレナーシップ(起業家精神)醸成のための技術協力とでも言える支援です。そこでは、ビジネス・プランの作り方、帳簿の書き方、税務・財務・会計といったビジネス専門スキルを座学の形で、タジキスタンの一般庶民に教えたり、実際にビジネス・プランを作成する演習などが行われます。生徒の中には、若年層に限らず高齢者も含まれます。また、主婦などの女性が多く含まれることも特徴的です。

■国際協力の醍醐味

(1)異文化コミュニケーション

ここで、国際協力の醍醐味のようなものをご紹介しましょう。国際協力は発展途上国を対象として、資金提供などの金銭面での支援や、技術協力支援などを行う政府対政府の仕事ですが、支援対象国の支援ニーズの把握や支援中に表面化する様々な課題の克服のために、JICA専門家やコンサルタントが直接現地に出向くことが基本となります。現地では、これまで出会ったこともない支援対象国の人々と対面でのコミュニケーションを粘り強くとることになります。もちろん、これは英語を駆使した仕事ですが、時には英語の他にも現地語を駆使しながら、現地の人々と一体となって仕事をします。新しい出会いと、日本では決して体験することのできない新たな体験が、国際協力の現場で私たちを待っています。

(2)異国の食文化探訪

現地の食文化に接することができるのも、国際協力の醍醐味の一つです。海に面していない内陸国のため、海産物にはなかなかお目にかかれませんが、串刺しBBQ肉料理(Shashlik)、野菜料理(トマトと玉葱が主)のほか、独特の形のパン、ピラフ(Plov)、餃子(Mantu)、タジキスタンをはじめ、中央アジアで広く食されている、手延べ麺(Laghman)などもあります。またスープ系が充実しており、肉の塊と野菜がゴロンと入った濃厚なスープ(Shurbo)はタジキスタンの定番料理となっています。首都ドゥシャンベでは、周辺国料理のレストランが充実していて、ウクライナ料理でお馴染みのボルシチをはじめ、ジョージア(グルジア)料理、ウズベキスタン料理、トルコ料理、ロシア料理、アラブ料理など、国際色豊かなレストランが軒を連ねています。

国際英語学科では、学科が掲げるEAGL Liberal Artsの中で、「英語」を基軸としながら、高度な英語力の養成、英語教育分野での教師免許等の資格取得、国際関係論・国際協力論分野での実学の習得、英語学を軸とする学術研究、海外留学、国内フィールドワーク、ビジネス・プログラムといった多彩な学術分野・実学分野での学びの機会を提供いたします。

加えて、国際英語学科では、2014年の学科開設以来、毎年100%近い就職率を誇っています。そして、それを支えているのが高度な英語コミュニケーション力と、さまざまな学びの機会を通して獲得できる幅広い教養です。過去、卒業生の5割以上が東証一部上場企業やその傘下企業に就職しており、中でも航空業界へは、卒業生の12%強が就職を果たしています。

世界は皆さんの訪れを待っています。ぜひ国際英語学科での学びの扉を叩いて、広い世界に飛び出していきましょう。