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2022.08.09

メディア・コミュニケーション学科

教員コラム 池田 理知子「『信念の旗』は降ろさない」

「新しい校旗」(1942)(福岡女学院資料室所蔵)

上の写真にある福岡女学校(現福岡女学院中学校・高等学校)の校旗が制定されたのは今から80年前、太平洋戦争真っ只中の1942年でした。軍国主義化に伴い教育現場でも公的な行事が多くなり、必要に迫られて作られたようです。最初の旗手を務めた生徒が重い校旗に悪戦苦闘している姿を見て、徳永ヨシ校長(当時)は「このぶどうの校旗は、その持つ意味を考えたら、どんなにつらく感じても、倒してはなりませんね」と優しくねぎらったというエピソードが、『凛として花一輪』に記されています。
校旗制定の1年前には校章(https://www.fukujo.ac.jp/university/about/ideal)が定められました。9月20日の朝、覚悟をもって一斉に胸につけたそうです。太平洋戦争が始まる2カ月半前のことでした。学院聖句(ヨハネによる福音書15章5節)に基づいてデザインされた葡萄の実と枝を囲んでいるのは十字架を象徴した3本の線で、「信仰」と「希望」と「愛」を表しています。校旗には校章の中にある葡萄だけが縫い付けられていますが、そのまわりにある「十字架」も生徒にはきっと見えていたはずです。

どんな時代にあっても信念を貫き通した人たちがいたことは、私たちに勇気を与えてくれます。先人たちの声に、今だからこそ耳を澄ます必要があるのではないでしょうか。1945年6月19日から20日にかけての福岡大空襲で焼けてしまったため、初代校旗は現存していませんが、戦後すぐに作られた2代目の校旗は福岡女学院資料室の入り口に額装して飾られています。
資料室(https://www0.fukujo.ac.jp/archives/)にぜひ足を運んでみてください。

参考資料:徳永 徹(2012)『凛として花一輪――福岡女学院ものがたり』梓書院

(池田理知子)