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2013.01.26

「百読百鑑」レビュー 『たけくらべ』 樋口一葉 by たお

 

登場人物は美登利、正太郎、信如、長吉の四人。物語の舞台は吉原周辺という特殊な環境。この特殊な環境のなかで思春期の四人が成長していく姿が描かれている。
 
八月十八日の氏神・千束神社の祭りの日。吉原周辺の 子どもたちが大人たちの真似をしようと、揃いの浴衣に手を通している。「横町組」の大将は、鳶職の親方の息子の長吉。その長吉率いる横町組の敵は、表町に住む金持ちの田中屋の正太郎だ。どうしても正太郎の事が気に入らない長吉は学校で一番頭の良い信如のもとへ。自らを弱いという信如だが、長吉はそれでもいいと信如を仲間にした。
 
長吉たちの横町組には三五郎という皆が認める面白いやつがいた。しかし三五郎にとって長吉たちの敵である田中屋の正太郎は、親子共々恩を受けており、命の綱のような存在であった。
 
そんなある日、正太郎が三五郎を表町に遊びにこいと誘う。それがことの発端となり、長吉は三五郎のことを二股野郎と言い殴りかかり、長吉をはじめ横町組は三五郎を袋叩きにした。その時三五郎と一緒に居た美登利は長吉たち横町組に対して何もできない自分をもどかしく思うと同時に、長吉たちに三五郎を攻めるよう命令したであろう信如に対して幻滅したのであった。
 
その後、信如が姉の店のへ届け物をする時に信如の下駄の鼻緒が美登利のいる大黒屋の前で切れてしまう。美登利は自分の気持ちを信如にぶつけるが、鼻緒が切れて困っている信如を見捨てることが出来ずに布切れを置いてその場を去る。そこに長吉が通りかかり、自分の下駄と信如の下駄を交換してやると言う。長吉は戸惑う信如に対し、自分たちは仲間じゃないかと伝える。
 
月日が経ち、美登利はいっそう美しくなるが、初潮を むかえた美登利は以前のような生意気さが無くなり、吉原の人々は面白い子を駄目にしたと言った。
 
私がこの作品の中で惹かれたところは、乱暴者の長吉が信如のことを本当に「仲間」として考え、困っている仲間に手を差し伸べるのは当たり前のことというのを信如に伝えるところである。前半を読んでいた時は長吉が人を利用していて「仲間」という言葉を上辺だけで使っていると思っていたが、予想外のところで長吉の強い仲間意識をあらわしていて驚いた。また、四人の心情の変化がとても細かく描かれており思春期の少年や少女が成長していく様子を読み取ることができた。