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2019.06.14

新任教員・小林賢太講師(日本古典文学、古典教育分野)

現代文化学科では、2019年度より小林賢太講師(日本古典文学、古典教育分野)をお迎えし、主として日本文化分野の科目を担当しています。そこで今回は小林先生による自己紹介をお届けします。

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 4月より現代文化学科に赴任しました小林賢太です。平安・鎌倉時代の和歌や日記、物語など、日本の古典文学について研究しています。「現代文化学科なのに古典?」と思われた方もいることでしょう。確かに古典文学は今から遙か昔のものですが、現在私たちの周りに存在する様々な文化と無関係ではありません。むしろ現代文化のあちこちに、古典文学は息づいています。
 
 例えば大ヒット映画『君の名は。』では、男女が入れ替わることがストーリーの要ですが、すでに平安末期には『とりかへばや物語』という、男女が入れ替わる物語がありました。この二つの物語は似ているようで、異なる点もあります。それは、『君の名は。』では魂が入れ替わるのに対し、『とりかへばや物語』では装束(着物)を取り替えることによって、男女が入れ替わるという点です。しかし、魂が肉体から抜け出るという発想が平安時代にも存在したことは、次の和泉式部の和歌から分かります。
  もの思へば沢の蛍も我が身よりあくがれいづる魂(たま)かとぞみる
(後拾遺和歌集・巻二十・雑六)

 「物思いにふけっていると沢を飛び交う蛍も、私の身体からさまよい抜け出た魂のように見えます」と恋に思い悩む心境を歌いますが、この時代すでに、肉体と魂は別だという考え方があったことが分かります。このように、平安時代に生きた人々の考え方の一部は、現代に生きる私たちにも受け継がれているのです。
 
 また古典文学の中には、映画や演劇、漫画や小説などに形を変え、現代でも楽しまれている作品が多くあります。その代表は『源氏物語』でしょう。漫画『あさきゆめみし』や宝塚歌劇など多くの二次作品が生み出されてきましたが、それらはどれも個性的で、独自の解釈、独自の演出がなされています。『源氏物語』以外にも、『百人一首』『万葉集』などに関係する漫画も出版されています。これら現代文化に生まれ変わった古典作品を、原作と比較しながら研究していくことも面白い試みでしょう。
 
 もちろん古典文学とじっくり向き合い、精読していくことも、大変意味のあることです。古典文学の中には、千年近く経ってもいまだに解明されていない謎が多くあります。登場人物の行動や発言の理由が今もって分からず、様々な説が提唱されているものも少なくありません。こうした問題をあれこれ考え、仲間と議論することは、思考力表現力を高める訓練にもなります。
 
大学とは、物事をしっかり見つめ、じっくり考え、それを自分の言葉で表現する力を身につける場です。そうした力を育てるにあたって、古典文学は素晴らしい教材となることでしょう。また、グローバル化社会を渡っていくうえで、日本の歴史文化を知ることはとても大切です。
 
さらに、国語科教員免許の取得を目指す方にとっては、国語教育の視点から古典を考えることも必要でしょう。教材としてどのような価値があるのか、授業でどのように扱っていくのか。国語教師を目指す方のことも想定して、講義や演習を進めていきたいと考えています。
 
 現代文化学科では、幅広い視点で「文化」を学ぶことができます。様々な文化を学ぶ中で、日本の古典にも興味を持ち、文学に触れる機会を持ってもらえたら大変嬉しく思います。そのために私も精一杯努力していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
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《 漫画に生まれ変わった古典文学たち 》
ぜひ一度読んでみてください。

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《 京都市内にある「夕顔之墳」(夕顔の墓)》
夕顔は『源氏物語』の主人公・光源氏の恋人です。
架空の人物のお墓がなぜ存在すると思いますか。
 
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《 兵庫県・須磨の海 》
若き日の光源氏は、政治的な理由から一時的に都を離れ、須磨に住んだことがありました。
京都育ちの彼は、
どのような気持ちで海を見たのでしょう。