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2018.09.03

心理学科

授業紹介:3年次 佐野ゼミ(『専門演習』)

 3年次になると学生たちは“ゼミ”に所属し、指導教員のもと、ゼミの仲間たちと研究や学外活動に励むことになります。ゼミは大学の中で最も教員の個性が反映された場所と言えますが、そこでの取り組みはなかなか見えにくいものです。そこで『心理学科Today』では、心理学科の教員たちがゼミでどのような活動を行っているのかを紹介していきます。第4回となる今回は、佐野教授の3年次のゼミです。

 

 今年の3年生佐野ゼミでも、「判ったつもり」で「指示された」手順を追うのではなく、「実際に深く理解」し「自力で考え」研究を行うことのできる力を獲得することを目標として1年間を過ごします。この力は、心理学のみではなく、社会で活躍するためにも必要なものです。「自転車に乗る」ことを考えてみてください。サドルにまたがり、バランスをとって、ペダルを踏めば自転車は進むはずです。ところが、この知識のみで「判ったつもり」になっても、実際には自転車に乗ることはできません。自転車に乗ろうとする試行錯誤を繰り返すことが必須です。3年次ゼミ生達は、私から試行錯誤せざるを得ない課題を提供され、時に応じてサポートを受けながら成長し続けます。
 また、3年の佐野ゼミでは、多くの作業をグループで行います。与えられた明確な課題を達成するには「協同」が必要です。この経験は、人と働くことの素晴らしさと難しさを知るための学びに通じると同時に、自分の特性を発見する収穫にもつながります。以下は、昨年度の3年生の1年間を追った日々です。
 

□■□佐野ゼミの1年間□■□

4月~5月
 ゼミ開始と同時に200ページ近い「佐野ゼミ テキスト」が配付されます。これは、書籍ではなく、私が作ったプリントをルーズリーフ・ファイルにまとめたものです。研究に必要な2年生までに学んだことの復習と、今後2年間のゼミ活動で獲得すべき知識について書かれたものです。
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【テキストを持って】
 
 最初の学びは、心理学の論文を読む力を伸ばすことが目的です。研究に必要な基礎知識を復習しながら、段階を追って論文に取り組みます。
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【指定された学術冊子を図書館で見つけて】


6月~7月
 グループに分かれて、実際に研究を開始します。まずは、研究テーマと仮説の設定です。研究してみたいと漠然と思っていたものを、どう具体化し、整理するか、学生達は試行錯誤を続けます。
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【テーマを決める作業中】

8月~9月
 研究に必要なデータの集め方を決めます。例年、質問紙法を選ぶグループが殆どです。自分たちの狙いにピッタリの尺度を、過去の研究から探すことは、なかなか大変です。また、独自の尺度を作ろうとしますと、これは相当難しく時間のかかる作業となります。夏休み中には、10時~17時まで集中して勉強する特別集中指導日を2日間程度設定します。
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【研究室で指導を受けて(2名は別室で作業中)】

10月~11月
 授業も各グループでの活動も、PCルームに移行します。まずは、集めたデータを、慎重に入力し、読み合わせを行って入力ミスがないか確認します。そして、SPSSという統計ソフトを使って分析を行います。佐野ゼミでは、プログラムを書く方法を採用しており、分析方法やソフトをしっかり理解していなければ、作業はなかなか完成しません。PCルームでは、ゼミ生同士で「励ましあい」ながら、SPSSに向かう時間を過ごすことになります。
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【PCルームで勉強中】

12月~01月
 最終段階を迎え、論文執筆に向かいます。心理学の論文は大きく分けますと、4つとなりますが、2つ(方法、結果)をグループで、残り(問題、考察)は個人で書くよう指示します。論文執筆は初めての体験ですから、いずれの部分についても、少し書いたら指導を受け、その指導を参考に書き直し、次も書いて、また指導を受けるという方法を採ります。
 ところで、年末年始は、先輩にあたる4年生佐野ゼミ生達が「卒業研究」完成に向かっての追い込みの時期となります。4年ゼミ生が自ら指導を希望する場合は、集中指導日を設けることにしています。PCルームが冬期休暇で閉室の日は、大学のノートPCを借り、一般教室でゼミを開きます。3年生は自由参加です。今年度は、3年生も多数参加しました。
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【激励とお年玉のピザを先輩達と一緒に】

02月~03月
 春休み、ゼミ生達はプライベートを多いに愉しむと同時に、次年度の卒業研究に向けて、研究テーマを考えます。大学での指導は原則としてありませんが、大学院進学を考えているゼミ生は、個人的に相談や指導を受けにやって来ます。
 
 以上が、3年佐野ゼミの1年間です。4年ゼミ生に佐野ゼミの感想を聞いたところ、「考える力がついたことです。難しい問題はさっさと答えを見て学ぶという生き方をしてきた私にとっては、とても辛い事でもありました。」とある学生が回答しました。おそらく、現在の3年ゼミ生の多くが、今も、そして、これから半年間も「辛い」時期を過ごすのではないでしょうか。
 4年生の他の回答には、「論文を読む力がついた」「日頃の小さな疑問に目を向け、考えられるようになった」「心理学が楽しいと思えるようになった」「自分を客観的に見て、今の課題に気づくことができるようになった」等がみられます。また、「学生のレベルに合わせ、分かるように指導してくださいます」という回答もありました。3年生では、「この課題はできるはずだ。」と自分を信じて、少々難しいと思っても挑戦し続けて欲しいものです。ゼミでの成長を愉しみに指導を続けています。