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2017.09.12

臨床心理士の仕事:修了生から後輩へのメッセージその1

私は大学院を修了してから、大学病院の神経内科に勤務しています。現在6年目ですが、週2日の非常勤から始まって、徐々に日数が増えていき、現在は常勤の嘱託職員として勤務しています。主な仕事としては、認知症の鑑別のために心理検査・認知機能検査を外来・病棟の患者さんやご家族に実施しています。

神経内科は認知症だけでなく、パーキンソン病、重症筋無力症など様々な神経疾患の患者さんが来院します。認知症もアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症など種類があります。

医師が疾患の鑑別をする際に、MRIなどの脳の画像の所見はもちろんですが、認知機能のどの部分が落ちているのかを知るために、認知機能検査や高次脳機能の検査が必要になることがあります。その認知機能検査が当院神経内科での臨床心理士の役割となっています。

大学病院は研究機関でもあります。認知機能検査を分析してみると、疾患によって落ちる機能が異なっているのが分かります。この疾患はどの機能が落ちるということは、専門分野の人は経験的にわかることもありますが、研究結果を数値で示し発表していくことも必要となってきます。

大きな病院での勤務で面白いところは、研究ができるということかもしれません。大学院で修士論文を書いていたころは答えが見えなかったり、結果が出なかったりするとなぜか絶望的に感じて心身共にきついものでしたが、今は職場で外来の合間に研究することは面白いと思うようになりました。どのような結果が出ても、それなりに意味のあることなのです。

臨床心理士の仕事というと、カウンセリングを一番に思い浮かべる人が多いかもしれませんが、勤務する場所、置かれた場所によって、かなり幅広く、多様になっているのではないかと思います。私のように認知機能の検査を主にする臨床心理士は以前は少なかったのですが、今は高齢社会も加速し、クリニックに勤務している臨床心理士も認知症の患者さんに出会うことが多くなったようです。臨床心理士の研修会に行くと、結構、高齢者分野で仕事している人がいます。

仕事をしていると、時々「私は役に立っているのだろうか」と自問自答したくなることがあります。これから臨床心理士を目指す方たちは、自分の専門性を高めて居場所を作っていくことも必要かもしれませんが、臨床心理士としての謙虚さを是非忘れないで頂きたいのです。臨床心理士も人間ですから性格は様々です。

よく臨床心理士の仕事を「縁の下の力持ち」と表現されることがありますが、見えないところで「縁の下の力持ち」として仕事をして結果を出すのはなかなか難しいことで、先程の「私は役に立っているのだろうか」という問いが不安とともに現れることがあります。そこで人をかき分けて前に、前に出るのではなく、謙虚に自分と周囲を観察する目を養ってください。女学院の授業を通して鍛えられた自己内省力、対象と環境を観察する力を活かしていけば、解決できるでしょう。但し、よく考えるタイプの人は内省であまり自分をいじめすぎないようにうまくやりましょう。

大学院で共に悩んだ友人を大切に頑張ってください。苦しい時には必ず味方になってくれます。私の性格から「そこそこの気楽さを持って生きられればねぇ…」と時々思いますが、人間いろいろなので、悩みも様々です。そして、心理面接であなたが向き合っているクライエントも同じ人間なのですよね。
(第7期修了生Y.Y.)