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2017.08.21

心理学科

授業紹介『行動経済学』

 福岡女学院大学心理学科では、学生の可能性を開花させるための講義や演習が数多く準備されています。では、そこではどのような授業が行われ、学生たちは何を学んでいるのでしょうか?このような疑問にお答えするため、本ブログ『心理学科Today』では担当教員による授業紹介を行っています。
 今回ご紹介する授業は、『行動経済学』です。本文にも書かれていますが、実は経済学と心理学は深いつながりがあり、両者の接点も生まれています。その接点こそ、「行動経済学」。福岡女学院大学心理学科の学生は、心理学について学びながら、経済学について学ぶこともできるのです。
 

心理学と経済学との架け橋 「行動経済学」の視点

 この文章を書いているのは、専門が経済学の者です。「なんで経済学の先生が心理学科に?」と思われるかもしれません。その疑問には、半分誤解があります。
 実は、現在の経済学と心理学はともに近代西欧の18世紀あたりに起源があり、19世紀から20世紀にかけて人間や人間関係を対象にその学問体系を確立・発展してきました。いずれも、18世紀のイギリスでは「道徳哲学」と呼ばれていた領域から分離・独立したわけです。「経済学の父」とされるアダム・スミスも、この「道徳哲学」の先生だったのですよ。
 経済学では、基本的には「人間は自分の経済的損得『勘定』によって自らの『満足感』という心理を最大にするように行動する」という「経済人(ホモ・エコノミカス)」を想定し、そこから社会をとらえようと考えます。実際、「満足感」という心理状態の「勘定」を問題にすることから、エッジワースという経済学者は『数理心理学』という本を書いていますが、そこでの考えもまた現代経済理論の出発点の一つとなっています。
 その後、経済学と心理学はそれぞれ独立して深化・発展していきましたが、近年、両者は明確な形で接点を持つようになっています。それは、2002年にダニエル・カーネマンという「認知心理学者」が、ノーベル「経済学賞」をとったことに表れています。心理学者が経済学賞??なのですが、彼の基本的な考えは次のようなものでした。
 これまでの「経済学」の想定と異なり、現実の人間は、自分の合理的な経済的「満足」の最大化だけで行動してはいないのではないか。自分の損得「勘定」だけではなく、様々な「感情」や感覚(ボランティア精神、家族愛、思い違い、錯覚、癖、などなど)によって、実際の人間行動には大きな揺らぎや偏りが生じている。それゆえ、現実社会での人々の行動を理解するには、そうした揺らぎ自体の特徴をより明確にする必要があるはずだ、と。
 こうした視点から、様々な経済的行動や経済領域での特徴を整理し分析しているのが「行動経済学」です。今書店に行かれると、ビジネス書コーナーなどにも、行動経済学に関連する書籍が多くみられます。また、NHK-Eテレの『オイコノミア』という番組を見たことはありませんか?これは、芥川賞作家でお笑い芸人のピース・又吉さんが進行役をしている経済(学)番組ですが、その内容の基本はこの「行動経済学」によって構成されています。是非一度視聴されることをお勧めします。
 本心理学科には、この「行動経済学」に対して経済学の立場からアプローチする私の他に、「認知心理学」の立場からアプローチされる教員(これは心理学科に入学されると、これまたすぐに誰だかわかります)もおられます。基礎的な経済社会の理解と認知心理学の修得とをバランスよく学習できる「架け橋」の科目が「行動経済学」だとも言えるかもしれません。
(担当:岩下)
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