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2016.11.14

国際キャリア学科

グローバルキャリア発見の旅23 イタリア編②: トリノ大学 小林貴恵先生

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kc_20161114_02_01.jpg前回に続きイタリアのトリノからです。今回は、トリノ大学で日本語を教えていらっしゃる小林貴恵(こばやし たかえ)先生にインタビューします。先生はオランダで日系旅行会社に勤務していた頃にイタリアを訪れ、「イタリア語の響き」に惚れ込んでしまい、それが人生の大きな転機となったそうです。日本語学科の学生や卒業生たちから慕われる、明るくて元気な小林先生にお話を伺います。

Q1. 先生はイタリアに来られて何年になるのでしょうか?イタリアに来られた経緯についても教えて下さい。

イタリアには1995年に来ましたから、今年で21年経ちました。もともと大学でドイツ語を勉強したのですが、卒業後、東京のメーカーで2年働いた後に思うところがあってオランダの日系旅行会社へ転職。アムステルダムに住んでいる時にイタリアを旅行してイタリア語の響きに惚れ込み、「ここに住みたい」とローマ支店へ異動させてもらいました。その後、航空会社へ転職し、2007年にトリノ大学の日本語講師として教えることとなりました。それからほぼ10年になります。初めは2~3年住むつもりだったのに、すっかり長くなってしまいました。

Q2. 日本語を教えるようになったきっかけなどを教えてください。また、日本語を教えるときに先生が一番大切にしていることは?

ローマに住み始めた時、たまたま同じアパートに日本語を勉強し始めた女性がいました。彼女の卒業論文を手伝った時、「私、教えることが好きなんだ」と気づきました。それから友人などにプライベート・レッスンをしている間に教えたいという気持ちがどんどん強くなりました。そんなある時、トリノ大学で日本語講師の選考が行われることを知って、トライしたら、何と幸運なことに採用されたのです。実は、日本を出る前に日本語教育能力検定の資格をとっていました。その時は「将来結婚して旦那さんについて海外に行ってもできる仕事って日本語教師かな」くらいの軽いノリでとったのですが、それが後に役に立ったわけです。日本語を教える時に一番大切にしていのは、なるべく授業にリズムを作って学生が興味を持って取り組めるようにすることです。しかし、大学では学生数が多すぎて(1年生は100名以上)、これがなかなか難しいです。

Q3. イタリア人学生に日本語を教える上で、苦労すること、難しいと感じることがあれば、教えてください。また、嬉しい、楽しいと感じることは?

一番残念なのは、学生がせっかく学んだ日本語を使える機会がほとんどないことです。トリノはローマやミラノなどと比べると日本人がとても少なく、日本人と知り合って会話の練習ができる幸運な学生は数えるほどしかいません。そのようななかでヨーロッパ言語とは全く異なる難しい日本語を、モチベーションを失わずに勉強を続けてもらうのは、特に大学教育では難しいと感じます。ですから学生には「どんどん日本へ行って」と言っています。日本へ行った学生たちがそれぞれに日本の魅力を発見したり、日本人の恋人を作ったり、さらには日本で仕事を見つけたりして、それを聞くのが何より嬉しいです。もちろん頑張ったのはそれぞれの学生ですが、そのなかで少しでもお手伝いできたなら、教師冥利に尽きます。

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日本語クラスで、修了証書を手にする教え子たちと

Q4. 今年9月、国際キャリア学科の3年生2名がインターン生として1週間トリノに滞在し(*)、「必ずまたトリノに帰って来たい」と声を揃えていました。先生から観たトリノの街の魅力を教えて下さい。

トリノは人口100万人弱、ローマ、ミラノ、ナポリに続くイタリア第4の都市ですが、他の三都市とは違ってとても落ち着いた町です。何世紀もサヴォイア公国の首都でしたから町の建築物は美しく、郊外には宮殿や城がたくさんあり、アルプスまでも車で1時間ちょっとという恵まれた環境にもかかわらず観光客が少ないので、われわれ外国人も落ち着いて生活できます。実はトリノ人はイタリアでは”Torinesi falsi e cortesi”(親切だけどホントは何を考えているか分からないトリノ人)と言われ、言わなくてもいいことまで口に出してしまう典型的なイタリア人からはあまり良く思われていません。でも、日本人にとってはこれがちょうど日本的で有難いのです!南イタリア人に比べるとちょっと大人しいかもしれないですが、トリノは勉強したり働いたりする人にはぴったりの町ではないでしょうか。

*イタリアでのインターンシップにつきましては以下をご参照ください。
  http://www.fukujo.ac.jp/university/kokusai_c/archives/352

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トリノの街並み

Q5. 日本の女子大学生、高校生にメッセージをお願いします。

仕事なら何でもそうだと思いますが、その仕事が好きかどうかはとても大切だと思います。あなたの熱意は必ずそれを受け取る側に伝わります。私たちは誰でも人生の中で30年から40年は仕事をして生活するわけで、それは本当に長い時間です。楽しくてもつまらなくても40年働かなければならない。だからこそ、皆さんには自分が何に興味を持っているのかを常に自分自身に問いながら、積極的に「自分の一生の仕事」を見つけて欲しいと思います。「強い思いや願い」というのはとても大切で、そこにチャンスが生まれます。私は三重県の田舎から、それを探してここまで来てしまいました。最初は深く考えずに選び、悩んだりあがいたりして仕事も4回変えましたが、今はとても満足しています。ぜひたくさん世界を見てください。短い旅行でも、日本から出てみると、「あー、世界には自分の知らなかったことがこんなにあるんだ」と嫌でも思わされ、物事を見る視点が変わり、その数も増えます。そうすることで皆さん自身の世界もどんどん広がることでしょう。

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学生の卒論発表会にて
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