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2016.10.21

国際キャリア学科

(授業紹介)「Current Business」:北九州国際技術協力協会の工藤先生(新日鐵住金株式会社出身)とHITOYOSHI株式会社の竹長先生による講義

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3年生を対象とする「Current Business」(担当:山口)は、国際ビジネスの第一線で活躍されてきた様々な業種の方々を招き、実務の視点から日本の産業や企業経営、国際展開などについてご講義いただくオムニバス形式の授業です。

9月30日に開催した第一回の講義では、長年にわたり新日鐵(現在の新日鐵住金)で活躍されてきた工藤和也先生をお招きして、世界と日本の鉄鋼産業の発展と現状についてご講義いただきました。工藤先生は1962年に新日鐵の前身である八幡製鉄に入社され、戸畑の最新鋭工場の建設・運営に携わるなど技術者、そして経営者として活躍されたほか、英国や中国、ロシア、イタリアなど様々な国の製鉄所の技術指導にも携わってこられました。

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講義では、19世紀までの西欧諸国、20世紀以降の米国、1970年代以降の日本、そして2000年代以降の中国と世界の鉄鋼業をリードする国が変遷してきたことを解説いただいたうえで、カラチのスクラップ会社からスタートしたミタル(現在のアルセロール・ミタル)が中心となり、経営規模拡大による量的優位性の確保を目指し、世界規模での再編(鉄鋼メーカーの集約化)が進んでいること、2000年代以降、新興国の鉄鋼産業の成長が目立つようになり、特に10年間で6億トンも粗鋼生産量を拡大するなど急成長を遂げた中国の鉄鋼産業が過剰設備と過剰人員を抱え、今後、市場の攪乱要因になりうることなど、大きく変動する世界の鉄鋼産業の現状についてわかりやすくご説明いただきました。

日本の鉄鋼産業についてはペリーの来航による危機感から始まった幕末雄藩による反射炉建設から説き起こしていただき、1901年の官営八幡製鉄所の完成、第二次世界大戦後の6社体制(八幡製鉄、富士製鉄、日本鋼管、神戸製鋼、住友金属、川崎製鉄)による再建と拡大を経て、新日鐵住金、JFEスチール、神戸製鋼所の3社に高炉メーカーが集約された現状などを説明いただくとともに、電磁鋼板や鉄道レールなどで他国の追随を許さない高度な技術を有している一方で、「こんなに良い品物が作れますから、買ってください」という作り手の論理から生産される傾向が強かったため、必要以上に高品質、高価格で世界の市場ニーズから乖離してきているなど、日本の鉄鋼産業が抱える課題についても解説いただきました。

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講義の最後にはこれから社会に出る学生たちに「社会に出たら自分と言う商品を売りこむことが重要になります。皆さんは今、自分と言う商品の価値を高めるために大学で学んでいます。社会に出ても自分の価値を高める努力を続けてください」とエールを送っていただきました。

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鉄鋼関連産業が集積する北九州の工業地帯
 

kc_20161021_04.jpg10月7日の第二回目の講義には高品質のシャツの製造で知られる熊本県人吉市のHITOYOSHI株式会社の竹長一幸取締役工場長をお招きして、日本の高度成長を支えたもうひとつの主要な産業である繊維・アパレル産業についてご講義いただきました。

HITOYOSHI株式会社は2009年に大手シャツ・メーカーで上場企業だったトミヤアパレルが経営破綻したことに伴い、トミヤアパレルの営業企画担当取締役だった同社の吉國武代表取締役と竹長工場長が企業再生ファンドの支援を受けて設立された企業で、メイド・イン・ジャパンにこだわる高品質のシャツ造りが注目され、現在では阪急や三越、岩田屋で大きく商品が取り扱われるなど、地域発の世界的ブランドとして注目されています。

講義では、はじめに製造コストの上昇と最新流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を短い商品サイクルで大量に販売するユニクロやH&M、ZARA、GAPなどに代表されるファストファッションの伸張などで日本の繊維産業が生産量、企業数、従業員数とも縮小を続けきたこと、中国、ベトナム、インドネシア、最近ではバングラデシュ、カンボジア、ミャンマーなどからの低価格の製品の流入で、国内で流通するアパレルに占める国産品の比率が2009年には4.5%にまで低下しているなど、繊維産業を取り巻く厳しい状況について解説いただきました。

HITOYOSHI株式会社のビジネスの現状については、当初、100%OEM生産(*)からスタートしたものの、2011年の銀座阪急メンズ館開業時の共同企画商品に取り上げられたことを機に自社ブランドでの販売が増え、販売店との直接取引により中間マージンを省き、価格帯を抑えたことなどが奏功し、現在では売り上げの20%を自社ブランドでの販売、残る80%をビームスやシップス、ポールスミス、ユナイテッド・アローズなどのOEM生産が占めていることをご説明いただきました。

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続いて、それまで40工程で行っていたシャツ造りをあえて100工程に増やすなど手作業を重視し、100%貝ボタンなど自然素材にこだわる一方で、納期が短い、ロッドが小さい、仕様が複雑など海外のメーカーが嫌がる仕事をあえて受注するなど、価格競争に対抗するため日本ならではのきめ細かいモノづくりに注力されている現状について映像を見せながら解説いただき、人材の確保や離職が目立つ若手の育成など、現在、抱えておられる経営課題についてもお話しいただきました。そのうえでこれから就職活動を迎える学生たちに「求人票に書いてある条件面に惑わされることなく、自分の性格にあっているかどうか、長く働ける企業かどうかをよく考えて仕事選びをください」とアドバイスいただきました。

講義の最後には美しいシャツの選び方、着方についてご説明いただくとともに、シャツのアイロンのかけ方を実演しながらご教示いただきました。

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HITOYOSHI株式会社の工場でシャツを検品する竹長工場長

*OEM(original equipment manufacturer)とは相手先ブランド名での生産

 

「Current Business」の授業では、今後、ホテル、旅行業、金融、貿易、不動産、官公庁などの方々に講義を依頼する予定で、11月には西日本シティ銀行と提携した若手女性行員の方による講義も3回シリーズで開催します。「定評のある英語教育で英語力を総合的、かつスキル別に高めながら、専門科目については実務の視点を重視しながら効率的に学ぶ」、これが国際キャリア学科のカリキュラムの特色といえます。