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2016.07.08

心理学科

〈こころ〉と〈からだ〉

 大学教員は、部(サークル)の顧問として、学生と共々に学んでいます。ここでは、「何、それ?」と新入生が首をかしげる「動作研究部」という名前の部活動の趣旨について紹介します。

 「こころの健康会議」と呼ばれる臨床心理士の全国大会が毎年開催されています。この会議で、福祉行政学、家政学、哲学のシンポジストに臨床心理士として加わって、問いかけたのは、まさしく動作研究部の活動趣旨でした。
 動作研究部の学生たち(部員)は、常識に挑戦することになります。この挑戦の起点となっているのは、「努力する(頑張る)には心がけ(意欲)が必要であり、心がけがしっかりしているなら行動も変わると思っているが、本当にそうなのだろうか?」という問いです。例えば、「目的意識が大切だ」と言われます。その気になっても三日坊主に終わるのは、目標が明確でないから行動(努力)が伴わないのだと思いがちです。言い換えると、〈こころ〉のあり方が行動の原因になっていると思っています。動作研究部は、「〈からだ〉の動き、つまり動作が〈こころ〉を創りだすのではないか?」という仮説を検証する活動です。
 私たちは自らの〈こころ〉の状態に気づいている(意識している)わけではありません。他者に自らの〈こころ〉を説明しようとして言葉にするとき、さまざまな〈こころ〉が登場します。しかし、「今、私の〈こころ〉は楽しい・寂しい・怒っている」と言葉にした途端に、言葉にならない〈こころ〉に気づくことになります。一方、他者の〈こころ〉は断定的に説明してしまいます。「彼女は、今、楽しそうである・寂しそうだ・怒っているようだ」と。自分の〈こころ〉は言葉になりにくいのですが、他者の〈こころ〉はわかったつもりになりやすいものです。
 自分の〈こころ〉も他者の〈こころ〉も、とりわけ他者の〈こころ〉は、動作を観察することによって推察されるのではないでしょうか。とても肌理の粗い例になりますが、トボトボ歩いているのは〈こころ〉が元気でないからだ、サッサと歩いているのは〈こころ〉が生き生きとしているからだ、ニコニコしているのは〈こころ〉が楽しいからだ、メソメソしているのは〈こころ〉が哀しいからだなど、私たちが動作を観察するときに〈こころ〉が登場するのではないでしょうか。〈こころ〉が緊張しているとか〈こころ〉がリラックスしているなどは、〈からだ〉動作の観察なしには言えないことです。
 動作研究部の活動は、〈こころ〉が行動の原因になっているという常識に首をかしげて、〈からだ〉動作が〈こころ〉をもたらしているという仮説を検討する(研究する)ことによって、〈こころ〉に原因があるとするときの囚われから自由になろうとするものです。
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図 心の健康会議におけるプレゼンテイション
(心を捉える視座としての動作体験)より


 〈こころ〉と〈からだ〉の関係は、精神と身体の関係を解明しようとして、哲学や心理学が心身論として昔から取り組んできた課題です。学問としては「健康であるとは、どういうことか(メンタルヘルス)」という問いをめぐって学び、研究としては障害児・者のリハビリテイションを実践するなかで、〈こころ〉と〈からだ〉の関係について考究してきている教員が、他大学よりも数多く集まっているのが福岡女学院大学の心理学科です。
(担当:長野)