国際キャリア学科3年生は、今年度から国際経済・経営、国際協力、地域研究、異文化コミュニケーションの各専門分野のゼミ・クラスに分かれ、専門科目を重点的に学んでいます。
このうち中東・北アフリカ地域の政治・経済を学ぶ山口ゼミでは、パリやブラッセルでの同時多発テロ事件などで世界を揺るがせている「イスラーム国」(ISIS)が生まれてきた要因や背景について春休みに指定された『イスラーム国の衝撃』(池内恵著)や『現代中東の国家・権力・政治』(ロジャー・オーウェン著)などの文献や資料に基づき各自が調べてきた結果を5つのグループに分かれて議論し、再度、グループで調査し、その結果を発表する授業を進めました。
各グループの発表は2003年のイラク戦争とその後の米国による占領統治による混乱や進行中のシリア内戦など直近の要因の指摘から始まり、例えばイラク戦争の要因となった湾岸危機・戦争、イラン・イラク戦争、イラン・イスラーム革命など「イスラーム国」の前身が生まれたイラクに焦点を当てて体系的に説明するものや、いったんは抑え込まれていた「イスラーム国」が勢力を盛り返す要因となったシリア内戦をもたらした2011年以降のアラブ世界での政治的変動「アラブの春」に焦点を当てて説明するもの、さらには「イスラーム国」が宣言した「カリフ制国家」とは何かについて詳しく調べたものなど、それぞれお互いに議論を深め、十分に調べたうえで、報告しており、この2年間の成長がうかがえました。
前期はこれから今回の議論で浮かび上がってきた要因のうち、①豊富な石油資源と肥沃な耕作地を持つイラクがなぜ長期にわたる混乱のなかにあるのか、②イスラーム過激派を生んだ大きな要因であるアフガニスタン紛争はどのように進展してきたのか、③アラブ諸国に共通してみられる権威主義的な体制はどのようにして成立してきたのか、④過激なイスラーム主義はどうして生まれてきたのか、⑤大国の中東地域への介入の主たる要因の一つである石油資源はどのように開発され、世界と地域の情勢に影響を与えてきたのか、という5つのテーマをグループごとに分担し、さらに掘り下げて調べ、報告する予定です。
以下は最初の議論と発表を終えた学生の感想です。
M.Mさん(江戸川女子高等学校-東京-出身)
調べた内容を自分のものにして頭できちんと整理しないと、うまく自分なりの言葉で発表できないと思いました。グループ研究することによって、自分だけでは発見できなかったところを多く見つけることができてよかったです。今回の研究で一番、難しいと思ったのは中東の歴史です。これからは現代の中東の経済情勢や中東をめぐる国際紛争についても深く学んでいきたいと思います。N.Sさん(福岡県立柏陵高等学校出身)
春休みに自分で調べたレポートでは、表面的なことしか理解ができていませんでした。しかし、グループで意見交換をしていくなかで、自分だけでは気付かなかったことに焦点を向け、ひとつひとつの要因について細かく分析することができました。今回の議論と発表を経ることで、「イスラーム国」についてだけでなく、中東地域全般についての理解が深まったと思います。I.Kさん(佐賀県立佐賀北高等学校出身)
春休み期間中から「イスラーム国」について調べてきましたが、今でも謎が多いと思います。多くの研究者やジャーナリストの方が分析していますが、それぞれ様々な視点からみていて、結果的に言えばひとつの要因だけでなく、長年にわたって様々なことが積み重ねられ、それに反発するような形でできてきた組織ではないかと思いました。グループ研究では他の人の意見や研究内容を聞くことによって点が線になったような気がして、理解が深まりました。今度の課題ではイラクの現代史について深く調べ、わかりやすく伝えられればと思います。