フレッシャーズ・セミナー(国際キャリア・地域研究分野)
国際キャリア学科1年生を対象としたフレッシャーズ・セミナーでは、国際キャリア・地域研究、国際協力、異文化コミュニケーションの各専門分野に関する入門的な授業を行っています。このうち国際キャリア・地域研究(担当:山口)の後期の授業では、パリの同時多発テロ事件などで世界を揺るがせている「イスラーム国」(ISIS)について、なぜこうした組織が生まれてきたのか、そしてシリアに入り、「イスラーム国」に殺害されたジャーナリストの後藤健二さんの行動や報道姿勢について、各自が調べ、考えてきた結果に基づいて、グループごとに議論し、その結果を発表する授業を進めました。
グループごとに議論する1年生
「イスラーム国」が生まれてきた要因については、現在、進行中のシリア内戦や2003年のイラク戦争とその後の米国による占領統治の誤りなど直近の要因に求める意見から、第二次世界大戦後の米国の石油戦略など中東への大国の介入に求める意見、第一次世界大戦後のオスマン帝国のアラブ領土の解体・分割など英仏主導の戦後処理に求める意見、さらには7世紀のイスラーム成立期以降、続くスンナ派とシーア派の対立に求める意見など、多くの意見が出されました。
各グループの代表による発表
他方、後藤さんの行動については積極的に評価する意見から、中立的な意見、批判的な意見まで、分かれましたが、議論を通じて、各グループとも「世界で何が起きているのか知ろうとすること、そして自分たちには何ができるのか考えていくことが大切である」、「自分たちが平和な環境にいることに感謝し、後藤さんの死とその遺志を無駄にしないように努めることが大切である」といった考えに集約していきました。学生たちは必ずしも「正解」がないことについて考え、議論することを学んだようです。
以下はディスカッションを終えた学生の感想です。
M.Iさん(大分県立中津南高等学校出身)
今まで深くは知ろうとしなかったことを考える機会を与えていただき、自分にとってとても良い機会でした。自分で調べることによりニュースや新聞だけでは得られない様々な角度からの情報を得ることができました。今までニュースから流れてくる情報が全てだと思っていましたが、ニュースの情報だけで判断をするのは情報不足であったことに気づくこともできました。今後の「イスラーム国」の動きやその動機などを正確に知ることは難しいですが、世界の問題について改めて考えることができ、もっと興味を持ち、調べていこうと思いました。多くの情報のなかから正しい情報を見極めることの大切さを知ることができた授業でした。
N.Kさん(福岡県立城南高等学校出身)
知ろうとすること、疑問を持つこと、考えること、どうでもいいような日本での日常が実はとてつもない幸せであること、そうした日常に感謝すること、以上のことを今回の課題を通して学ぶことができました。M.Iさん(福岡市立福翔高等学校出身)
この授業を受ける前まで、「『イスラーム国』はわけのわからないことを考えている悪い人の集まりである」というくらいの考えしか持っていませんでした。しかし、「イスラーム国」について調べ、先生からの説明を受けた時、考えが大きく変わりました。なぜこのような状況になってしまったのか。私たちはニュースからしか情報を得ることができません。この授業を受けなければ、ただ批判し、冷たい目で見るだけで終わるところでした。大学生活の間で、紛争地域の現実と事実を、ニュースだけに頼らず自分で探して、考えていこうと強く思いました。この授業をきっかけに、自分の中にある思い込みや偏見をなくしていきたいです。