生涯学習・地域貢献調査研究活動報告

標記事業については、小郡市文化遺産の活用等による観光の振興発展を図るため、小郡市と福岡女学院大学が、2019(令和元)年7月6日付で、組織的な官学連携協定「小郡市観光まちづくり調査研究事業に関する協定」を締結し、継続的な実施、取り組みが行われてきた。

 

 

小郡市と福岡女学院大学・福岡女学院大学短期大学部は、2020(令和2)年10月6日付で

官学包括的連携協定「小郡市と福岡女学院大学・福岡女学院大学短期大学部との包括的連携に関する協定」(以下、「包括的連携協定」という)を締結し、標記事業については、包括的連携協定第2条(連携事項)第1項第1号「小郡市の地域振興・観光まちづくりに資する事業に関すること」に基づく調査研究事業の一環として、2020年度以来持続的に実施、取り組んでいる事業である。

 

 

小郡市と福岡女学院大学・福岡女学院大学短期大学部が包括的連携協定に基づき、2022年度の前半(4月~9月)までに実施された、主な調査研究事業について、次ページ以降で報告する。

 

末筆ながら本事業の官学連携を通じながら、本学学生の学びの場(フィールド)の提供、地域と本学学生との関わり(繋がり)による様々な活動にご協力いただいております、小郡市様に感謝申し上げます。

2022年9月30日  

福岡女学院大学     

福岡女学院大学短期大学部

学長 伊 藤  文 一    

「小郡市と福岡女学院大学・福岡女学院大学短期大学部との包括的連携に関する協定」
連携事項に基づく、

【小郡市観光まちづくり調査研究事業について】
2022年度前半:4月~9月 調査研究活動報告書

はじめに

この「小郡市と福岡女学院大学・福岡女学院大学短期大学部との包括的連携に関する協定」(以下「協定」という)の協定事項に基づき、実施された2022年度前半:4月~9月における小郡市観光まちづくり調査研究事業(以下「調査研究事業」という)についての報告書である。

この報告書では、調査研究事業の概要、経過、成果の順にまとめている。

第1節 調査研究事業の概要

1.調査研究事業の目標

 2022年度前期、学校法人福岡女学院 福岡女学院大学(以下「大学」という)人文学部では、小郡市の観光資源、特に歴史・文化を題材にして「観光文化論B(観光まちづくり論)」を授業として行うこととした。

 授業のテーマについてシラバスでは、「この講義は、福岡女学院大学が小郡市と結んだ観光まちづくりの一環として実施する。」と書かれている。これを実践するために、「講義と現地見学によってそれにかかわる人との対談を通して学ぶ」ことを目標とした。

 小郡市を主たる対象地としたのは、現在福岡女学院大学の非常勤講師である片岡宏二(現小郡市埋蔵文化財調査センター所長)、大城麻美(現小郡市教育委員会文化財課職員)が、小郡市が進めている観光まちづくりを実際に現場で直接担当してきて、その業務で得られた経験・問題意識・活動をこの講義で活かすためであった。そして、小郡市だけでなく、小郡市の東隣にある大刀洗町も含めた調査研究事業として、小郡市の観光まちづくりを地域連携という観点からとらえることを目標の一つとした。両市町で活動する観光まちづくりに関わるコメンテーターを外部講師の実践的な体験談を通して、地域に共通する素材の上に生み出される観光まちづくりを学ぶこととした。

 

2.協定と市の諸政策との整合性

 この調査研究事業は、基本的には2022年度シラバスに基づいて行っているが、協定は、小郡市でその上位にある2020年に策定された「小郡市歴史文化基本構想」やさらにその上位にある「令和3年度小郡市教育施策実施計画」に基づいている。それには[施策27]の施策の基本的なねらいとして「福岡女学院大学との観光まちづくりの取り組みの推進」とある。その具体的な取り組み・事業の項目では、「福岡女学院大学との観光まちづくり協定の推進」「福岡女学院大学の講座と連携し、学生から観光まちづくりに関する提言を受けます。」と書かれている。(令和4年度小郡市教育施策実施計画の59ページ)指標は、「福岡女学院大学の講座による市内視察研修と意見交換会の回数」を令和4年度の目標値として2回行うこととしている。

第2節 調査研究事業の経過

1.講義

 授業開始は、2022年度は4月であった。
 授業は授業開始前に学生に示したシラバスに則して実施した。昨年度は、新型コロナ感染拡大のため、一部をリモートに切り替えざるを得なかったが、今年度は全て対面授業により実施することができた。現地研修や外部講師の授業も順調に行うことができ、予定していた15回の講義を消化することができた。講義実績は次のとおりである。

第1回目(4/12)授業ガイダンスと授業の狙い

第2回目(4/19)観光まちづくりの歴史と今

第3回目(4/26)観光まちづくりの目的

第4・5回目(5/3)現地視察(小郡市内ー大刀洗町内)

第6回目(5/10)小郡市の観光まちづくりの目的

第7回目(5/17)観光まちづくりの政策

第8回目(5/24)大刀洗町の観光まちづくりとは(外部講師)

第9回目(5/31) 小郡市の観光まちづくりの政策

第10回目(6/7)観光まちづくりの方法

第11回目(6/14)小郡市の観光まちづくりの方法

第12回目(6/21)観光まちづくりの課題と展望

第13回目(6/28) 観光まちづくりにかかわる市民団体の話(外部講師)

第14回目(7/5)観光まちづくりについての意見交換(外部講師)

第15回目(7/12) 観光まちづくりのまとめ

  実施した授業の中の「第4・5回目(5/3)現地視察」は、「2、現地視察」の項に詳細を示すこととする。

 また、第8回の大刀洗町の外部講師による授業と第13回の小郡市のまちづくりに係わる外部講師、第14回の小郡市長による授業「観光まちづくりについての意見交換」は、次項以下で述べることとする。

 

2.外部講師による講義

 第6回は大刀洗町地域振興課村田まみ課長による大刀洗町における観光事業と行政の取り組みについて講義があった。第13回は小郡市で松崎花壇部をはじめいろいろなまちづくりをボランティアで行っている宮原夕紀子さんの講義を行った。いずれの講義も、地域が抱えている様々な課題について、その最前線で取り組んでいる講師の話であったため、学生には新たな視点を与えるものとなった。

 第14回は、加地良光小郡市長を外部講師に招聘し、小郡市の観光まちづくりの現状と課題、将来への展望を講義してもらい、学生との意見交換を行なった。(※1)市の政策立案のトップにいる人なので、それを聴講した学生は、それぞれ自分の住む町との比較など、視点を変えた観光まちづくりに関心を寄せていた。

 

3.研修

 5月3日に第4・5回として大刀洗町の佐々木家住宅―小郡市指定有形文化財油屋―小郡市指定有形文化財平田家住宅を見学し、そこに住んでいる家主の方や管理している方に、その保存と活用について、様々な問題点とその対応などについて伺った。(※2)また佐々木家住宅の見学には大刀洗町 中山哲志町長も参加し、行政の観光町づくりへの想いも述べられ、参加学生にはたいへん参考になった。

第3節 調査研究事業の成果

 観光まちづくりの調査研究は、小郡市だけでなくその隣接市町にも共通する、周知されていない観光資源をいかに、そこの住民が知り、そして外部の人をもてなすかという地域的課題について研究したものであった。学生の目には、そうした地域的課題がどのように映るのか、授業内での発言やレポートによって率直な考えを述べてもらい、それを最後には市長自らが聞くという、有意義な授業体系であった。

 自治体が自ら定めた、教育施策や歴史文化基本構想の目標を達成するためにも、地方自治体が大学という教育機関と連携して考えているという経過は、そのつど小郡広報などに掲載し、その取り組みが積極的に行われている。