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2024.04.16

言語芸術学科

新入生の百読百鑑レビュー 2024①

言語芸術学科では、4年間で文学の名作100冊、演劇・映画鑑賞100本を目標とする「百読百鑑」という授業があります。

授業では、古今東西の名作文学・映画リストの中から一人一作品選んで、その作品の魅力をプレゼンテーションします。

今年4月に入学した新入生から届いた「百読百鑑レビュー」をご紹介します。課題リストから一作品選び、選んだ作品にどんな魅力があるのかを、入学に先がけて文章にしてもらいました。

言語芸術学科では在学中、様々な本や映画に出会えます。どうぞお楽しみに!

ロード・オブ・ザ・リング』 by おいも

監督: ピーター・ジャクソン   キャスト:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン

 世界中で親しまれているJ・R・R・トールキンの長編小説を映像化した作品。アカデミー賞を数多く受賞したロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)の第一作品目である。誰もが欲しがり、全世界を支配する力を持つ指輪を葬るため1人のホビットが立ち上がり指輪が結ぶ仲間達と共に旅をするファンタジー。

 ホビット族であるフロド・バギンズはビルボ・バギンズからある指輪を譲り受ける。しかし、その指輪は元々冥王サウロンにより造られたものであり、全世界に第二の暗黒時代をもたらす力を持つため敵は指輪を求めている。魔法使いガンダルフから話を聞きフロドは指輪を持って旅に出ることとなるが、自分に全世界を左右してしまうほどの運命が与えられているとは思わず旅に出る。

 この作品を観て面白いと感じた場面の一つは、指輪が結ぶ旅の仲間が集う場面だ。指輪を葬るためには悪の力が眠る火山まで行かなければならず、様々な種族が言い争い誰も使命を成し遂げようと名を挙げる者はいなかった。そんな中、どの種族よりも平和を好み秀でた戦力も持たないホビット族のフロドが名を挙げる。その主人公の一言により様々な種族が団結していく場面は、多くの人の心を惹きつける。戦う術を持つ種族が言い争っている中、自分だったら声を上げることができただろうか。道も知らず戦力もない主人公の勇気ある行動が起こす力について考えさせられた。

 もう一つは178分の長い時間の中でたった数分しか登場していないのにもかかわらず、強い印象を与えているゴラムの存在だ。敵か味方かも分からず、一瞬だけ画面いっぱいに映された顔はどの種族とも似つかない。また、血走った大きな目に恐怖を覚えた。この作品中ではまだゴラムは謎の多い存在であるがため、さらに興味が掻き立てられる。

 最後に種族別の体格差、戦いの場面や登場人物の心理描写がリアルで面白く、約3時間の鑑賞でも飽きずに楽しめるためぜひ見て実感してほしい。

チャーリーとチョコレート工場』 by ころん

監督:ティム・バートン   キャスト:ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア

 『 チャーリーとチョコレート工場 』 は、ユニークな世界観で送られる、家族の絆に心温まる作品である。

 主人公のチャーリーは、貧乏だけど暖かい家庭で育った心優しい男の子。チャーリーの暮らす町には、世界一のチョコレートを作るウィーリー・ウォンカのチョコレート工場があった。ある日ウォンカは、5人の子どもたちを工場に招待し、そのうち1人には特別賞を与えると発表する。無事に工場への招待状であるゴールデンチケットを手に入れたチャーリーを含む 5 人の子どもたち。ついに訪れた工場見学の日、5人の子どもたちとその家族は町の人に見守られながら工場へ足を運ぶ。その中には、夢のような世界が広がっていた。

 この作品の魅力の1つは冒頭に述べたように、ユニークな世界観である。作中には様々 なお菓子が登場するがどれも普通ではない。例えば、卵から 生まれるチョコレートの鳥、 暑くても溶けないアイス顔よりも大きく膨らむガムなど…。面白いお菓子ばかりで、次はどんなお菓子が出てくるのだろうと、その世界観に惹き込まれた。工場の中にも、チョコレートの 滝や山、お菓子でできた野原など、心躍らせる世界が広がっていた。

 また、チャーリーの優しさによってウォンカの気持ちが変化していくのもとても良い。 2人はずっと疎遠になっていたウォンカの父親に会いに行き、ウォンカの父親が 、彼に関するたくさんの新聞の切り抜きを集めていたことを知る。不器用ながらも心配していた父親の気持ちが分かり、ほっとした。その後の、チャーリーと家族が一緒にチョコレート工場に移ることを許したことで、ウォンカの心も変わったことがわかる。ずっと一人だったウォンカに家族のような関係ができたことに、 嬉しい気持ちになった。

 この映画を見て、家族の力の強さを再確認した。ウォンカは1人で偉大な功績を残したが、行き詰まったときに助けてくれたのはチャーリーや父親との絆だった。家族の温かさ を感じられるこの作品は多くの人に響くのではないかと思う。

千と千尋の神隠し』  by みなみ

監督:宮崎駿   キャスト:柊瑠美、入野自由

 2001年に宮崎駿監督が手掛けた長編アニメーション作品で、スタジオジブリを代表する作品である。この作品は、第75回ベルリン国際映画祭で最優秀賞に当たる金熊賞を受賞した。ある日、ひょんなことから異世界に迷い込んだ主人公、千尋が豚となって捕まった両親を元に戻すため、銭湯で働く。

 なんでもない至って普通の少女である千尋は、両親とともに引っ越し先の新しい家に向かう。しかし千尋はこれから始まる新しい生活に不安を感じていた。やがて、千尋達は不思議な街へと足を踏み入れる。物珍しさに、どんどん街の中へと進んでいく両親。しかし両親は街の掟を破って豚にされてしまう。

 この作品は世界観が秀逸である。長編映画といえば、長くて、観るのに飽きてしまうことがあるかもしれない。しかしこの作品は千尋の視点で画面が動いたり、観ている者を映画の世界に引き込むような音楽が作中で流れたりする。だから、結末を知っていてもハラハラ、ドキドキしながら楽しむことができる。

 しかし、この作品には、一つ難しい点がある。それはこの作品が一体何を伝えたいのか、簡単にはわからない点である。何度も見て気が付いたことがある。この映画は、意思を持って行動することの大切さを私たちに教えてくれていたのではないかということだ。千尋は最初の場面で、母親に引っ付きながら歩いている。母親からは、「離れてよ、歩きにくいわ。」と言われる始末で、ひどく頼りない。しかし、終盤の、カオナシという怪物から金を差し出されるシーンで千尋は自分の意思を持って、はっきりその誘いを断る。自分の意思決定に基づく行動は大人でも難しいのではないか。そして、私たちが千尋から見習う姿勢でもある。ぜひ一度見てほしい。