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2026年 熊本支援方言プロジェクト
| 2026.08.06 | 熊本県の方言区画 に地図を追加しました。 |
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1. プロジェクト概要
このプロジェクトは、熊本の様々な救援活動を支援するために、方言研究の面から活動するものです。東日本大震災では、外部から救援にきた方と地元の方のやり取りの際、方言がコミュニケーションの障害になったとの経験を踏まえての活動です。主に現場での医療・カウンセリング・ボランティア活動が円滑に行くことを願って作りました。10年前の資料を改訂増補しています。
具体的にどんなことが想定されるのかは「この資料の価値」の欄で詳しく述べています。ぜひご覧ください。
2. 全体の構成
まず、活動の初期に必要とされる医療現場で役立つ資料を作成しました。熊本方言身体語彙図・熊本方言医療関係語彙集などです。今回は酷暑を考え、熱中症対策の資料も作りました。迅速性と重要事項を最優先にした速報版ですので、不備もありますがお許し下さい。再配布等に制限はありません。スマホでも見やすいように、資料を工夫しています。
熊本県は方言が大きく3区分されるため、北部・南部・東部に3区分して表記しています。それぞれの地域で少しずつ異なる方言があります。その点に注意して作成しました。
「熊本方言ガイド(一般向け)」では、カウンセリングやボランティア活動に役立つ資料も作成しています。
3. この資料の価値 ― なぜ、この資料が必要か、この資料の果たす役割 ―
3-1 コミュニケーションとしての方言
震災時における方言の問題が注目されてきたのは、東日本大震災の時でした。地元の医療機関が被害を受け、他地域から医療関係者が支援にきました。ところが地元の方の話す方言がうまく聞き取れず、治療に障害が発生することが起こりました。
この資料はそのような場面で役立つように作成された資料です。
今では多くの方が共通語を話すことができます。年配の方でも使いこなす方は多いでしょう。しかし、地元の方言の方が話しやすい方、もっぱら方言で話すことが多い年配の方もいると思います。ましてや、被災地という非日常の空間では、共通語がうまく出てこない、方言しか話せないということが起こりうると思います。そんな時にこの資料が役立てばと思います。
3-2 熊本方言
① エダ
医者「どこが痛いですか」患者「エダがいてーんじゃ」
熊本では腕のことを方言で「エダ」と言います。そのことを知らないと、どこを治療していいか、迷います。
② オロヨカ
医者「調子はどうですか」患者「オロヨカ」
「オロヨカ」は熊本でよく使われる表現で「あまりよくない」の意味です。それを知らないと、よくなっていると勘違いしてしまいます。
③ 「ここは痛くないですか」への返答
共通語では、「ここは痛くないですか」という問いに対し、「はい、痛くないです」「いいえ、痛いです」と答えるのが一般的です。南九州では「はい、痛いです」「いいえ、痛くないです」と答える地域があります。震災の非常時、治療の場面で患者は「はい」「いいえ」だけで済ますことが起こりそうです。この場合、お医者さんには全く反対の意味に取られてしまいます。
尋ねる言い方として否定疑問文の形は避ける方が望ましいと思います。
このように思わぬところで、方言が災害救助や医療の場面にかかわってくることが理解してもらえたのではないかと思います。
3-3 前回からの振り返り
10年前、熊本で地震が起こった際、今回の資料を作成し、公開しました。その時、資料を見てくださった方々から有益なお話を伺いました。それらについて、記しておきます。
3-3-1 方言使用者
前回の資料を見て、「うちの両親は熊本出身で、60代だが、資料の方言は聞いたことがないと言っていた」と心配してくださった方がいました。資料は文献資料を中心に作成したので、やや古い世代の資料になっていたかと思います。ただ、60代の熊本方言話者が使わない、より古い方言を使う年配の方がいれば、それこそ、この資料が重要になってきます。その方の話す方言が理解されることが、医療の場面でより役に立つからです。一人でも多くの方を助けたいとの考えからの資料です。
3-3-2 避難所での活用
10年前、この資料を作ったときは、救急や医療での場面の利用を想定していました。避難所は熊本の方が大勢いるので、活用する場面はほとんどないだろうと考えていました。しかし、それは間違いでした。それをボランティアで避難所に赴いた学生が教えてくれました。そのことに感謝します。避難所で大勢が活動している(食事の配膳など)とき、地元の方も、年配の方の言葉にゆっくり耳を傾けている余裕がない時があります。あるいは深夜寝静まったとき、年配の方が何かお願いしたいことがあっても、地元の方に話しかけることはできません。そんな時はボランティアの学生がサポートに入ったとのことですが、その場で年配の方の話の内容がよくわからなかったとのことでした。
この資料は避難所のこうした場面で役に立つのではないかと考えています。
4. 熊本支援方言プロジェクトによる熊本方言支援ツール
東日本大震災などの被災地の被災者と支援者(災害派遣医療者・福祉関係者・自衛隊・消防等)を対象とした調査を基に、災害支援者を方言で支援する「方言支援ツール」を作成しました。以下、各ツールの特徴と有効な使用法について示します。
※支援に向かわれる方で、使用できるものがあればご使用ください。再配布等に制限はありません。
4-1 熊本県の方言区画
熊本県は方言が3区分されています。それによって、東部・北部・南部に分けています。
| 東部方言 | 阿蘇市、南阿蘇村、産山村、小国町、南小国町、上益城郡山都町蘇陽 |
|---|---|
| 北部方言 | 熊本市、荒尾市、玉名市、山鹿市、玉名郡和水町、南関町、長洲町、玉東町 山鹿市、菊池市、合志市、菊池郡菊陽町、大津町 上益城郡益城町、嘉島町、御船町、甲佐町、山都町、阿蘇郡西原村、宇土市、宇城市 下益城郡美里町 |
| 南部方言 | 八代市、八代郡氷川町、 人吉市、球磨郡球磨村、相良村、 あさぎり町、多良木町、水上村、 湯前町、錦町、五木村、 水俣市、葦北郡芦北町、 天草市、上天草市、天草郡苓北 |
※この地図は、「白地図KenMap」の画像を編集したものです
https://www5b.biglobe.ne.jp/t-kamada/CBuilder/kenmap.htm
4-2 身体語彙図
身体部位に関する基本的な方言形を集めたものです。
避難所等、支援者が交代する場所では、大きなポスターにして掲示し、ここに記載のない方言形を書き込み、次の医療者や支援者への情報伝達の道具として活用できます。
プライバシーが確保できない環境では、これを手元に置いて、指差しで使用できます。
A4程度の大きさの紙に印刷したり、タブレット等の電子媒体で携帯して使えます。
4-3 方言医療関係語彙
各地から支援に入る医療関係者・福祉関係者・ボランティアを使い手と想定しています。
発災後、1週間から1か月くらいを目途に、直接、被災者とコミュニケーションする際の手助けとなる方言形を記載しています。主に、被災者の心情を表現する感覚や感情に関する語彙・動作に関する語彙・程度や頻度を表す語彙・病気や症状を表す語彙・人間関係の語彙・挨拶や声かけに関する語彙・特徴的な文法などです。
支援者がA4程度の大きさの紙に印刷して持参したり、タブレット等の電子媒体で携帯して使えます。(方言身体語彙図の裏面に印刷して携帯することができます)
掲載地図は、その地域の地名や気象情報の地域区分のための情報です。自分が支援に入っている地域の地名や地域区分を確認し、天気予報等の情報を得る場合の参考にお使い下さい。また、他地域からの自治体職員の派遣支援や訪問看護・介護などの場合、どこで・どのように被災したのかといった基本情報を聞き取る際に必要な情報です。
4-4 心情動作
「寂しい」や「行く」など、心情や動作を表す方言をまとめました。
4-5 熱中症関係リスト
酷暑の中の避難となるため、熱中症症状に関する方言での訴えをリスト化しました。県外から被災地に入られた方々は、この手引きの表現を聞いた場合、熱中症を疑い、適切な処置につないでください。
作成 高知大学岩城研究室 徳島大学村上研究室
5. 熊本方言ガイド(一般向け)
※支援に向かわれる方で、使用できるものがあればご使用ください。再配布等に制限はありません。
5-1 支援者のための知っておきたい熊本方言
このパンフレットは、東北大学方言研究センターの協力により、県外から来られる支援者やボランティアのために作成されました。みなさんは現地の方々との交流の中で、初めて聞く方言に戸惑うことがあるかもしれません。現地の方々とうまくコミュニケーションをとるために、このパンフレットを役立ててください。プリントアウトして折りたたみ、ポケットに入れておくと便利です。
5-2 「話してみよう!熊本弁プロジェクト」
以下のURLは「話してみよう!熊本弁プロジェクト」のHPのサイトです。許可をいただき、リンクを貼ります。
熊本県立大学の研究者を中心に、熊本在住の外国の方が熊本方言を理解するための支援として作られ、「熊本方言的言い回し」に配慮して構成されています。従って、県外から支援にくる方にも十分、役立つようになってます。ぜひご覧になって、お役立てください。
6. 資料について
6-1 参考資料など
資料の枠組み・原案は弘前学院大学の今村氏・高知大学の岩城氏の被災地の方言支援活動の研究成果に、その多くをよっています。その成果である「方言支援ツール」をもとにしています。熊本の方言については、主に徳島大学の村上氏の助言を受けました。記して、感謝申し上げます。それらをもとに医療・心理関係資料の熊本版を作成しました。
また、今回の資料は多くの方言研究の書籍・論文、方言関係のWebサイトから情報をえて、作成しました。さらに、研究者自身の調査資料、熊本出身の研究者からの情報や、研究者が熊本出身者に急ぎ尋ねて、回答を得たものも取り入れてます。速報性を優先し、それらの文献資料をあげることは控えましたが、多くの資料や多くの方々の協力に感謝します。
6-2 作成者
作成者名は基本的に「熊本支援方言プロジェクト」としています。作成には九州出身の方言研究者・九州在住の方言研究者はもちろん、全国の多くの方言研究者がかかわっています。今回は、すべての研究者の名を記すことはせず、統一して、作成を「熊本支援方言プロジェクト」としました。
6-3 収録語彙
方言の収録語彙の中には、人によっては不快と感じる言葉も記載されているかと思います。その土地の方言を正確に記載するという方針と、平時でなく、緊急時に役立つ資料をという趣旨から、そうした語彙も収録しています。
6-4 今後の更新について
こうした方言支援ツールは、これまでの方言研究によるデータの蓄積と医療・福祉等の関係者の連携によって作成されました。今後の被害状況や被災地からの要望等を受けて、順次改定作業を行って更新していきます。
お問い合わせ
<熊本支援方言プロジェクト>
窓口 福岡女学院大学 人文学部 メディア・コミュニケーション学科
二階堂 整
kumamotoshien@fukujo.ac.jp
(なるべくメールでの問い合わせをお願いします)
福岡女学院大学人文学部メディア・コミュニケーション学科事務室
092-575-6450
受付時間:9:30~12:00、13:30~17:00
協力団体
- 筑紫日本語研究会
- 九州方言研究会
- 福岡女学院大学 人文学部 メディア・コミュニケーション学科
謝辞
以下の3つの団体にお世話になりました。感謝する次第です。
- 弘前学院大学 今村研究室
- 高知大学 岩城研究室
- 徳島大学 村上研究室
10年前の言葉を再び、記すことにします。
我々は、熊本のこと、熊本にいる人のことを思い浮かべながら、作業を進めてきました。この資料は、現場になければ、役に立ちません。どうか、皆さんの力をかしてください。我々の思いとともに、この資料を、URLの情報を、必要な場に届けてください。よろしくお願いします。



