3つのポリシー
ディプロマ・ポリシー
メディア・コミュニケーション学科のカリキュラムに沿った授業科目を履修し、以下を達成すべく所定の単位数を修得した学生に学位を授与します。
1. 学際的な知識の獲得
人文学の基礎的な学識を土台にして、メディア・コミュニケーション・デザインを横断的に学び、学際的な視座をもって思考できる。その上で、自身の興味関心を専攻した学問体系に位置づけられる。
2. アイディアを具体化する方法の習得と実践
ことばを論理的に用いて、文章や議論を組み立てられる。社会にあふれる情報を批判的に読み解ける。習得した複数の表現方法をもとに適切な手段を選択し、アイディアにかたちを与えられる。
3. 多様性への理解と好奇心
社会の多様な価値観のなかで、自身の軸がどこにあるのかを見定めた上で、他者への関心と寛容さをもって協働できる。未知との出会いに臆しない知的好奇心を積極的に維持できる。
カリキュラム・ポリシー
メディア・コミュニケーション学科は、人文学の基礎にもとづく学際的な知識の獲得、アイディアを具現化する方法の習得、多様性への理解と好奇心の涵養を目指します。
そのために、メディア・コミュニケーション・デザインに関する授業をバランス良く編成し、社会や他者とつながることの意味や重要性を実感できる講義・演習・総合演習を実施します。卒業年次には、指導教員のもとで学生が主体的に設定したテーマについての卒業研究を完成させます。
アドミッション・ポリシー
メディア・コミュニケーション学科は、多様なメディアに着目して世界の成り立ちを考える学科です。そのために、人文学の基礎にもとづく学際的な知識を獲得した上で、社会にあふれる情報を読み解く能力と、さまざまな方法で自身のアイディアを伝えるデザインの技法を習得し、他者とのコミュニケーションについての理解を深めます。よって、メディア・コミュニケーション学科は次のような資質のある人の入学を期待します。
- メディア・デザイン・コミュニケーションのかかわりを探求する好奇心がある。
- 文章・イラスト・映像・音楽など、さまざまな表現方法を身につける意欲がある。
- 社会の多様性に関心があり、他者とのつながりを大切に思っている。
学びの分野と特色ある授業
学びの分野
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メディア
「メディア」は情報を一方的に届けるだけでなく、私たちの社会を多様に結び合わせています。新聞やテレビ、SNSなどの媒体を読み解くだけでなく、情報を生み出すつくり手として新しい社会を実現するために、音・声・文字・映像などを伝えるさまざまな方法を講義とワークショップを通じて協働的に学びます。
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デザイン
「デザイン」とは社会に潜む可能性を可視化・具現化して、未来をつくりだす行為です。グラフィック、出版、広告、映像、ウェブ、プロダクト、環境などのメディアの特性をいかした多様なデザインに対する見識を高めるとともに、アイデアを実現するためのデザイン的思考と実践的な技法を身につけます。
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コミュニケーション
「コミュニケーション」は単なる伝達技術ではありません。ことば一つをとってもそこには歴史的・文化的背景があり、誰がどう使用するかによって、人を感動させたり怒らせたり、ときには人を縛る力として作用することもあります。グローバル化する現代社会と私たちの関係から、コミュニケーションの可能性について学びます。
学科の特徴
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学びのヒントは
すぐそばに街で目にとまる広告、テレビで見るニュース、音楽ライヴ、SNSでのやりとり、友だちとのおしゃべりなど、身近な経験を出発点にして考えを深めていきます。個人的な疑問や興味関心を大切に育てて、社会と広く共有するための知識と方法を身につけます。
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伝え方はひとつじゃない
論理的な思考力と文章力を基礎として、インタビューやディスカッションの技法、イラストレーションや映像を使ったビジュアル表現など、手を動かしながら多彩な技能を習得できます。情報の伝え方を状況に応じて自在に選択できる、しなやかなコミュニケーション力を育みます。
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テクノロジーを
使いこなす動画やグラフィックの編集、サウンド制作、大判プリントや3Dプリントなどができる本格的な機材が揃った「MDL(メディア・デザイン・ラボ)」と立体物の制作や版画、製本などの作業に対応した「造形実習室」を完備。授業時間外でも自主的な制作に活用できます。
特色ある授業
デザイン研究入門
コンピュータや周辺機器を自在に使いこなすために必要な知識と技術を習得し、コンピュータを利用したデザインや映像制作に対する理解を深めます。(写真:2020年度デザイン研究入門課題作品より)
映像表現演習
短編映像や公共広告などの制作を通して、一眼レフカメラやコンピュータを使った動画編集の基礎を学び、映像だからこそ伝えられるメッセージを考えます。(写真:2020年度映像表現演習課題作品より)
学びのステップ
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1年次未知と向き合う
動画の編集や写真の加工などの方法を学ぶ「デザイン基礎演習」や、学科の全教員とともに共通の課題に取り組む「ワークショップA」などの科目で、習得した技能を駆使して未知の問題を発見・解決する基礎的な力を身につけます。
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2年次関心を広げる
複数の分野の演習科目を選択し、学問領域を横断する柔軟な思考力を養います。
また、「メディアとことば」や「文化とコミュニケーション」などの講義科目や、学外で見聞を深めるフィールドワーク科目を通じて、興味関心の幅を広げます。 -
3年次探求する
ゼミを選択して、卒業研究に必要不可欠な専門性の高い知識と技能を磨きます。
文献講読や集団制作に挑戦して、調査と考察の成果を他者に伝える方法を、ゼミの同級生と試行錯誤しながら探求します。 -
4年次研究に挑む
「卒業研究」に取り組む1年間です。専門分野の教員のもと、ゼミ形式で学生独自の研究を進めます。
初年次から鍛えてきた論理的文章力やデザイン技術を土台にして、論文執筆や作品制作など、研究の性格にあわせた形式の成果を協同的に完成させます。
取得できる免許・資格
免許・資格
どの分野を選択しても取得可能です。
本学で取得できる資格 |
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学科が取得を 支援している資格 |
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日本語教員 本学が独自に認定する資格です。(平成28年 法務省「日本語教育機関の告示基準」及び、平成30年 文化審議会「日本語教育人材の育成・研修の在り方について(報告)」に基づく)
日本語以外を母語とする人を対象に日本語を教える「日本語教員」。本学では「新たな教育内容(文化庁平成12年3月)」に基づいて「日本語教員養成コース」を開設。所定の単位を修得した学生には「日本語教員養成コース修了証」が授与されます。現在、日本、中国、韓国、台湾、タイなどで修了生が日本語教師として活躍しています。
児童英語教育指導員 本学が独自に認定する資格です。
本学の「児童英語教育指導員養成コース」の特徴は、質の高い英語教育をいかして指導員としての即戦力を養える点です。小学校で実際に英語を教える「児童英語フィールドワーク」といった実践的な授業がカリキュラムに組み込まれ、さらにJazz Chantsで有名なCarolyn Graham先生のEnglish Workshopなど、高度な英語トレーニングも受けられます。
ITパスポート資格
単なるパソコン操作にとどまらず、
- IT(情報技術)を積極的に業務に活用して改善できる
- 課題や問題に対しITを有効に活用できる
- ITを法令に基づき安全に活用できる
といったIT知識レベルを測る国家試験です。時代のニーズに応えられる情報技術の理解を証明できます。
アドビ認定アソシエイト(ACA)
ACA(Adobe Certified Associate)は、アドビシステムズ社公式の資格認定制度です。PhotoshopやIllustratorなどのアドビのツールを使用したデジタルコミュニケーション・制作・デザインの基礎力、および初級レベルのスキルを証明します。学習目標に実務に必要な基本技能が反映されているため、企業で評価される知識と技能を確実に身に付けられます。
就職・進路
就職実績
(2022年度実績/2023年5月現在)
主な就職実績(順不同)
- BuySell Technologies
- CSリレーションズ
- INEST
- NCY
- NELV Japan
- Vogel
- アルファメイン
- イオン九州
- 一般財団法人船員保険会
- インテック
- ウイルプラスモトーレン
- ウッドオフィス
- エネット
- 九州マツダ
- 九州林産
- グランツ
- クリーク・アンド・リバー社
- クリナップ
- 佐賀県農業協同組合
- 佐世保タクシー
- サム
- スタッフサービス ミラエール
- ダイアナ
- 大電
- タイムズ24
- ディップ
- 独立行政法人 日本スポーツ振興センター
- ドラゴンエンタテインメント
- 日本郵便 九州支社
- ニライハート
- ネクステージ
- パーソルテンプスタッフ福岡オフィス
- ファブリカコミュニケーションズ
- 福岡ダイハツ販売
- 富士巧芸社
- 放送技術社
- マーキュリー
- マイナビワークス
- 明治安田生命保険
- メガネトップ
- ライクスタッフィング 他
- 企業名・団体名は内定当時のものとなります。
卒業生からのメッセージ
スケールの大きな仕事にチャレンジしたい。
A.Iさん パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社人文学部 メディア・コミュニケーション学科卒(福岡県立宗像高等学校出身)
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メディア・コミュニケーション学科を選んだ理由は?
高校時代にスマートフォンが普及し、生活の中心になったと言っても過言ではないほど私たちに影響を与えました。メディアの著しい進化が社会にどう影響するかに興味を持ち、進学を決めました。
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内定先を選んだ理由は何ですか?
いくつかの企業を受けましたが、その中でもスケールの大きな仕事ができ、人として成長できると思ったからです。選考と別に社員の方と話せる機会があり、温かい社風だと感じたのも決め手になりました。
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就職活動の成功の秘訣は何だと思いますか。
自己分析と企業情報の下調べをしっかりすることです。選ばれるために自分をアピールするだけでなく、自分も「この会社は私に合っているのか」をしっかり見定めることが大切だと思いました。
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就職活動に役に立った進路就職課のサポートは?
卒業生の体験記や求人票の閲覧など、就職活動や企業の情報を得る際に利用しました。春季面接対策講座では発声やお辞儀、集団面接の練習をしていただき、メイク講座もとても役立ちました。
教員紹介
教員紹介
学問分野について
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about you先生の研究分野について
「情報デザイン」、「メディアデザイン」、「デザイン基礎学」といわれる分野の研究と実践です。
デザインというと、いまだに一人でPC、タブレットなどのデバイスや、鉛筆、絵の具などの画材に向き合う内向的な行為だと思われることが多いですが、私が最近、共感しているのは「Design with(ともにデザインする)」というあり方です。
だからこそ、グラフィックデザインや映像デザインを起点にして、ワークショップの企画・実践などデザインの知見を生かして、さまざまな背景を持つ人とのコミュニケーションが生まれるきっかけをつくり、驚きや喜びを分かち合うことを目指しています。 -
about field研究分野の現代社会との関係又は現代社会での位置づけについて
いま、デザインは、これまでのグラフィック(図案)やプロダクト(製品)などの狭い意味を指す言葉から、情報、組織、仕組み、制度などの広い意味にまで押し広げられています。デザインとつく言葉をみなさんもどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。これまでの「見えるもの」から「見えないもの」へとデザインの概念は急速に広がり、この分野への現代社会の期待が伺えます。
一方では、デザインがバブル的な一過性の流行となるのか、冷静に見極めていくことも必要でしょう。
デザイン分野の専用のアプリケーションが比較的安価で購入可能になったことなどを背景として、デザインの「つくり手」は爆発的に増加し、低年齢化が進んでいると見ています。ある意味では、デザインが民主化、大衆化した時代ともいえると思います。
こうした時代にあって、デザインは単独で学ぶものではなくなってきており、さまざま分野を横断して、多くの人とともに育んでいくことへと変わってきています。 -
about field所属する学部学科教育のなかでの位置づけをお教えください
デザインの「つくりながら、考える」、「考えながら、つくる」この絶え間ない往復、そして循環が、人文学部やメディア・コミュニケーション学科のさまざまな学びの橋渡しとなり、いわば接着剤や串のような働きとなることを目指しています。
デザインは単独ではとても非力ですが、異なる分野同士をつなげる触媒としては、大きな力を発揮できます。このことは信じてやみません。
福岡女学院大学について
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about university本学の学生のイメージは?
この大学で2年間、非常勤講師を勤めていたときから感じていたのですが、人のことを思いやれる素晴らしい学生たちだと思います。
素直で、明るく、また何よりも物事をやり遂げようとする姿勢があります。プレゼンテーションにも果敢に挑戦する度胸には驚かされました。学際的で、理論と実践の両立を目指す本学科を希望してきただけに、幅広い思考と柔軟な発想があると思います。それから、美しいキャンパスで過ごしているからか、デザインのセンスがとてもいいです。
だからこそ、在学中も卒業後も自身の資質を信じ、飛躍の可能性を疑うことなく、いろいろな分野で活躍して欲しいと願っています。 -
about university本学での学びを通して、どんな人物に育って欲しい又はこんな人材に育てたい
というイメージがあれば教えてください「利他的な創造性」を発揮できる人物に育って欲しいと思います。
「大切なひとり」を掲げ、「つながり」を大切にする本学で育つ学生には、「利他」であることが自然に身についている人が多いのではないでしょうか。 「利他」をどこまでに設定するかは、身近な愛すべき一人のためかもしれませんし、卒業後に所属する組織、コミュニティ、あるいは地域、広くいうと社会でも、そのときどきで変わっていっていいと思います。 メディアやコミュニケーション、デザインを学際的に学んで培った「創造性」をぜひここぞという場面で、「利他的に」発揮して欲しいです。 -
about university本学の中で一番好きな場所があれば教えてください
朝の正門です。 警備員の方が「おはようございます!」と迎えてくださり、中高の生徒や大学の学生、職員、教員が同じ門をくぐっていきます。澄んだ空気のなか、そのときの希望を感じる雰囲気が好きです。目線を上げると瀟洒(しょうしゃ)な125周年記念館の煉瓦色の三角屋根が見えます。足元に目を向けると、正門から建物に向かうまで、絶妙にゆるやかな傾斜があり、意識せずに登っていくのですが、その勾配もすごくよくデザインされているなあと感じます。朝の正門を抜けるときに「今日も1日頑張ろう」、「この大学に来れてよかった」といつも思います。
先生ってどんな人?
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about you趣味は何ですか?
サッカーです。いま大学の教職員でつくるサッカー部に所属しています。2023年4月に本学に着任して以来、毎週木曜日の夕方に大学のミッションアリーナ(体育館)に学生のサッカー部と合同で15人前後が集まり、一緒に練習に励んでいます。年齢も性別も異なるさまざまな立場の人たちが一緒にゴールというひとつの目標に向かって連携していくことがすごく面白いです。
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about you今熱中していることはありますか?
授業(講義と演習)の準備です。それから、大学教員としては、ほぼ新人ですので、学務といわれる大学の運営に関わることをはじめ、大学の教員としての仕事を覚えることに懸命に取り組んでいます。
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about you一番リラックスできる時、それは何をしている時ですか?
カフェや廊下で学生や教員、職員の方々にふとしたときに話しかけてもらえて、たわいもない話をしているときが一番リラックスできます。
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about you(学問か仕事かプライベートを問わず)今一番関心のあることは何ですか?
世界情勢では、イスラエルとパレスチナの問題にすごく関心を持っています。
私自身は当事者でも、専門家でもないのですが、このことを敷衍(ふえん)して考えると、あらゆる複雑な社会問題に通底することとして、当事者が存命のときに、何らかの解決や和解を成立させたり、妥協点、あるいは筋道をつくったり、そして教訓を次の世代にしっかりと残していくことも非常に重要なのではないかと考えています。 -
about you今目標としていることは?
まずは、日々の授業(講義と演習)を充実させていくことが目標です。
これは、準備を入念にして、学生に素晴らしい内容の情報を提供したいというわけでなく、たくさんの学生がリアルに、対面で集ってくれるわけですので、その空間と時間でしか生まれない「ライブ感」、芸術でいうと「インプロビゼーション(即興感)」というのでしょうか。まるでサッカーの試合のように、全力で取り組んだ結果として、毎回違う何かが生まれる授業が理想です。 その意味で、授業は、教員だけでなく、実は学生がどういう動機や熱量で取り組もうとしているのかが最も重要だと思います。さらに授業をサポートしていただいている職員の方々、教室を掃除していただいている方々、設備をメンテナンスしてくれている方々の力など、たくさんの人によって成り立っているわけですので、せっかくの90分間を大切にしたいです。 -
about you先生(個人)の夢を教えてください
出会った人や一緒に過ごした人、ともに切磋琢磨した人と、お互い所属する組織や住む土地が離れたときに、「また会いたいな」と思ってもらえる人になりたいです。
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about you簡単に説明すると、ご自身はどんな人ですか?
温かい人たちに支えてもらってギリギリで生きている人間です。怠惰な性格とずさんな仕事ぶりは自覚しています。 学生時代から会社員時代に至るまで、「言われていないことをやってくる」、「頼まれてないことをやってくる」とよく言われていました。 一人だと外れてしまう軌道を、周りの方々の愉しや指導によって、人の役に立つように修正してもらい、生かしてもらってきました。
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about youお薦めする本を3冊教えてください(できれば専門書籍以外で)
- 夏目漱石「私の個人主義」
- 岡本かの子「老妓抄」
- 遠藤周作「沈黙」
- ※加えて、ジョージ・オーウェル「1984年」は、これからのAI時代、デジタル社会を生きるうえで、重要な視座を与えてくれます。
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about you好きな映画(ドラマ、演劇、ストーリー)を教えてください
「フォレスト・ガンプ」
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about you座右の銘や格言、高校生に送りたい言葉があればお教えください
「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より……日本より頭の中のほうが広いでしょう」(夏目漱石『三四郎』より)
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about you最も影響を受けた人物、尊敬している人物をお教えください
また、その理由又はその人物の魅力をお教えください尊敬している人物は、夏目漱石です。
文豪として知られる漱石は、もともとは英文学の研究者でした。彼は、明治時代に国費でイギリスに派遣されたほど、超がつくエリートでした。しかし、滞在先のロンドンで「神経衰弱」に陥り、帰国を余儀なくされます。英文学を深く理解したくて、イギリスまで行ったのに、漱石曰く、「英文学のことは、まるで何も分からなかった。むしろ、より分からなくなった」といいます。そのときの漱石の絶望は想像を絶するほど深かったはずです。そこで、「自ら文学を書かねば真実に、文学のことは理解できない。もう、この葛藤から逃げられない」と思ったそうです。
私自身、大学生時代に新しく何かを「つくること」にひどく迷っていたときに、「私の個人主義」という漱石の学習院での講演録を手に取りました。
私は漱石にまったく及びもしませんが、私自身の心のどこかに潜んでいたけれども、堂々と他者に切り出せずにいた「自分でつくることでしか乗り越えられないものは、たしかにある」ことを自らの苦悩の体験をもとに語る人物にはじめて「出会った」ことに、とても興奮したことを覚えています。
その意味で、学生のみなさんには「深く思い悩んで」欲しいと思っています。 何があなたにとって「自らつくるべきもの」なのか、逆にいうと「他者につくってもらう。あてがってもらうこと」では、どうしても受け入れ難いものは何なのか。いまいち決まりが悪いものは何なのか。実際に講義を受けたり、演習に取り組んだり、読書をしたり、サークル活動をしたり、アルバイトをしたり、旅行に行ったりしながら、つまり動きながら、これでもかと考え続けることだと思います。
そこで浮かび上がってきたことに、あなたの将来進むべき道がきっとあると思います。